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特徴を知って適切な行動を!猫の「がん」に対して飼い主ができること~第1弾~

吉本翔

獣医師
吉本翔

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特徴を知って適切な行動を!猫の「がん」に対して飼い主ができること~第1弾~

愛猫のいつもとは違う行動や仕草に気がついたことはありますか? 猫と暮らしている飼い主さんなら、愛猫の体調の変化に瞬時に対応したいですよね。猫風邪や嘔吐などの症状はもちろん、大きな疾患である“がん“もそのひとつです。

そこで今回は、猫の飼い主さんに基礎知識を身につけてもらうために、がんの定義や猫のがんの特徴、臨床徴候など、猫のがんに関する基本的な事項について、獣医師の吉本翔先生に解説いただきました!

■がんを知って適切な行動を!

定義を知って適切な行動を!猫の「がん」に対して飼い主ができること~第1弾~
出典:https://www.shutterstock.com/

国内における人や犬の死因の第1位は“がん”であると言われています。猫の死因については、野良猫や飼育猫の違いがあるため一概に説明することは難しいですが、中高齢の飼育猫の死因の上位ベスト3にはがんが入るのではないでしょうか。

みなさんがイメージするようにがんは恐ろしい病気です。人医療、獣医療ともに飛躍的に進歩しているものの、がんを完全にやっつけることはまだまだ難しいのが現状です。

もしかしたら将来、愛猫ががんになってしまうかもしれません。ただし、私たちはがんに対して何もできないわけではありません。がんを知り、適切な行動をとることで、がんに太刀打ちすることができることもあります。

■がんの定義について

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がんは“遺伝子変異により細胞が無秩序に増殖し、周囲の組織への浸潤や他の部位へ転移を起こす細胞集団(腫瘍)”のことを言います。悪性腫瘍とも呼びます(良性腫瘍はがんとは呼びません)。

噛み砕いて説明すると、がんは身体のどこかの細胞が異常に増殖し始め、増殖したがん細胞により正常な臓器が侵される病気です。がん細胞は発生した部位の近くだけではなく、血液やリンパ液の流れによって、全身に移行(転移)することもあります。

■猫のがんの特徴

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がんは動物種間で共通する点が多々あります。そのため、人医療で行われてきたがんの診断法や治療法が、獣医療で使われることがほとんどです。

がんそのものの性質については似ている点がたくさんあるのですが、臨床的な観点から飼い主さんに押さえておいてほしい猫のがんの特徴が2つあります。

(1)発見時に進行例が多い

1つ目は、発見時に進行例が多いということです。猫は体調が悪くてもあまり表に出しません。そのため、がんに罹患していたとしても、飼い主さんが愛猫の異変に気付くことはなかなか難しいでしょう。

がんが進行し明らかな徴候が表れ始めてから、飼い主さんが気付くというケースが多いです。また、人医療のがん検診のようなシステムは獣医療では普及していないので、早期発見することが難しいのが現状です。

(2)生存期間が短い

筆者の感覚として、猫のがんは生存期間が短いということを感じています。前述のように、猫のがんを早期発見することは難しく、進行してから見つかることが多いです。これまでの経験上、進行してから見つかったがんは、根治することが困難になります。これが、生存期間が短い理由のひとつではないでしょうか。

ほかにも、臨床研究があまり発達しておらず標準治療が定まっていないこと、がんそのものの進行が人よりも早いこと、そもそも寿命自体が人よりも短いことなどが理由として挙げられます。

■猫のがんの種類(※1)

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単にがんといっても、その種類はたくさんあります。がん細胞の由来となる元々の細胞の種類によって、それぞれ異なる名前がつけられます。リンパ腫はリンパ球という細胞由来のがんで、扁平上皮癌は扁平上皮細胞由来のがんです。

がんの種類によって悪性度は異なり、同じ種類のがんであったとしても発生部位によっても臨床的な挙動は異なります。治療によって根治がしやすいがんもあれば、すぐに転移して予後がとても悪いがんもあります。がんの種類によって、臨床的な挙動は千差万別であることを押さえておきましょう。

■猫のがんの徴候(※1)

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前述したように、猫はがんになったとしても、すぐに徴候を表に出しません。体調が悪くても、それを言葉にすることもありません。そのため、がんの徴候を発見することはとても難しいと言えます。

がんができた臓器の種類によって、猫は体重減少、発作、下痢、呼吸困難など様々な徴候を示します。がん以外の病気でも同様の徴候を示すことがあるので、ある徴候があったらがんであると判断することは大変です。

そのため、いかなる徴候があっても、がんの可能性があるということを頭の片隅に入れておく必要があります。若齢でがんが発生する可能性は低いですが、中高齢以降ではがんの発生数が増えますので、注意が必要です。

今回はがんの定義、猫のがんの特徴、猫のがんの種類や徴候など、がんの基本的な事項について取り上げました。猫のがんは、進行例で見つかることが多いのが現状です。中高齢以上になるとがんの発生率が上がりますので、愛猫の小さな異変に気づけるように、しっかりと愛猫のことを観察してあげてくださいね。

次回は猫のがんの診断法や治療法、飼い主が愛猫のためにできることについて解説したいと思います。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 Stephen Withrow, et al. (2012). Withrow and Mac Ewen’s, Small animal clinical oncology 5th edition. Saunders.

【画像】

※ David Herraez Calzada, fotomanX, Daniel Krason, Madi Sommer, Sabrina Marchi, sudarat voranimmanont / Shutterstock

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