動物を介在して行われるアニマルセラピーは、その効果の高さから徐々に注目度が上がっています。しかし、具体的な内容を知っている人は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、わんちゃんによる動物療法の活動を行っている『戸田ワン・ニャンサポートクラブ』代表の今村芳美さんに、“セラピードッグ活動”についてお話を聞きました。
■性格がやさしく穏やか「セラピードッグ」ってどんなわんちゃん
老人介護施設などを訪問するわんちゃん、“セラピードッグ”をご存知でしょうか? 施設の入居者やデイサービスの利用者さんと触れ合うことによって、生活の質の向上、心身の安定、癒しを届けることを目的とした活動を行っています。障害者施設、病院、学校、老人介護施設、刑務所へ訪問するなど、活動の場も広がってきています。
『戸田ワン・ニャンサポートクラブ』(通称・戸田ワン)は、埼玉県戸田市のボランティアセンターに登録していて、現在は、戸田市とその周辺地域8ヶ所の老人介護施設を、クラブメンバーがセラピードッグと共に訪問活動を行っています。
「飼い主さんとセラピードッグだけでは目が届かないこともあるので、必ずお手伝いのスタッフが数名同行しています。訪問する頭数はその都度違いますが、少なくとも5頭以上は訪問できるように調整しています。施設の入居者やデイサービス利用者のみなさんが心待ちにしているので、安全面も考えながら、楽しい時間が過ごせるように配慮しています」
■セラピードッグの条件
どのわんちゃんもセラピードッグになれる訳ではなく、いくつかの条件があるのだそう。
「団体によって条件は違うと思いますが、健康で吠えたり噛みついたりせず、基本のトレーニング(スワレ、マテ、フセ、コイ、アイコンタクト)が身についていること。また、活動しているサポートドッグたちとの相性が良いわんちゃんが、セラピードッグ向きです。その他の適正は、戸田ワンのホームページで公開しているので見てください」
わんちゃんがセラピードッグに向いていても、共に活動する飼い主さんが向いていない場合も……。
「戸田ワンでは、専属ドッグトレーナーによる適性チェックを実施しています。また、飼い主さんには愛犬と一緒に面談を受けてもらい、関係性を確認した上で、戸田ワンで活動してもらうか否かを伝えています。活動に向いている飼い主さんは、臨機応変に対応ができて柔軟性があり、コミュニケーション能力が高い人。協調性がない人は難しいですね」
■癒しの力が良い変化を引き出す
セラピードッグは人の心身を穏やかにしてくれるのだと今村さん。
「セラピードッグと触れ合おうとして不自由な手を動かそうとする、普段はほとんどしゃべらない人がわんちゃんに話しかける、表情が豊かになるなど、さまざまな良い変化が起こるのをこれまでたくさん見てきました。セラピードッグの存在が癒しの力になり、良い変化を引き出しているのだと思います」
戸田ワンへのセラピードッグの訪問活動依頼は、年々増加傾向にあるそうです。しかし、アニマルセラピーに対する理解の低さを感じることも少なくないのだとか。
「訪問依頼があったら施設に出向き、活動場所や条件を確認して、アニマルセラピーに対する考えなどを聞きます。アニマルセラピー活動について勉強されている施設もありますが、なかには単なるレクリエーションとしか考えていないところも……。
セラピードッグ活動は、施設側とセラピー団体とが協力し合わなければ安全に行うことができません。施設のスタッフさんには負担が掛かりますが、ご協力をお願いしています」
日本のアニマルセラピー活動は、これからもっと広がっていくはずです。今後ますます進んでいく高齢化社会に向けて、セラピードッグに参加するわんちゃんの育成が課題の一つになるのではないでしょうか。
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【取材協力】
※ 戸田ワン・ニャンサポートクラブ・・・愛犬と一緒に高齢者福祉施設を訪問し、わんちゃんとお年寄りの方とのふれあい活動(アニマルセラピー)を行っている。
【画像】
※ Sigma_S / Shutterstock
※ 戸田ワン・ニャンサポートクラブ
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