わんにゃの健康と病気

【獣医師執筆】わんちゃんも紫外線の影響は受ける!知っておきたい目の病気と家庭でできる対策

佐藤貴紀

The vet 南麻布動物病院 獣医師
佐藤貴紀

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【獣医師執筆】わんちゃんも紫外線の影響は受ける!知っておきたい目の病気と家庭でできる対策

※2024年07月24日情報更新

夏の暑い季節は、日差しも強くなり全身に紫外線を浴びる日々が続きます。人の場合は、日焼け止めやサングラスなど自分でケアすることができますが、犬の場合は日焼け止めを塗ることができないため、飼い主さんのケアが必要です。この記事では、紫外線が犬の目にどのような悪影響を及ぼすのか、また家庭でできる対策について記述します。

目の解剖学

レの構造.jpg
目の構造

まずは、目の解剖学を簡単にお話ししましょう。角膜は目の一番外側に位置する透明な膜であり、表面には細胞が密に配列されているため、外からの細菌やウィルスの侵入を防ぎます。また、涙で湿っているためレンズとしてものをはっきりと見せるための役割を果たしています。

角膜は眼球の約20%を占め、外側から上皮、実質、デスメ膜、内皮の4つの層で構成されています。上皮は7日、実質は2年で入れ替わることで透明性が維持されるとされています。血管のない透明な膜ではあるものの、知覚神経は無数に存在していますので、傷などができた場合は激しい痛みとなります。角膜の奥に虹彩という茶色や黒色の幕がありその中心部に水晶体が存在しています。

紫外線により影響を受ける場所

    白内障のパグ
    出典:https://www.shutterstock.com/

    人では、紫外線は「角膜」「水晶体」「網膜」に影響があるといわれており、角膜炎や白内障、黄斑変性(おうはんへんせい)症が報告されています。犬においても同じことがいえ、ある程度の紫外線には耐えることができるといわれている角膜ですが、強い日差しなどは角膜だけでなく目にとって悪影響でしかないことは事実です。

     ①疾患

    角膜炎(慢性表層性/慢性表在性)とは、紫外線により角膜が炎症を起こし、通常は透明な膜が白く濁り、血管新生などを起こす病態です。進行することで、広範囲に及ぶため視力への悪影響も出てきます。

     <症状>

    角膜の痛みが出ることで、起こる症状は下記の通りです。

    ・前手で目を触ろうとしたり、掻こうとする

    ・目がしょぼしょぼする

    ・目をつぶってしまう

    ・目を絨毯や壁などに擦ろうとする

    ・眼球が白い

     <治療方法>

    4層の角膜のうち、どこまで炎症が至っているかによっても変わりますが、炎症を抑える必要があるため、保湿効果の高いヒアルロン酸点眼や角膜の修復を促す血清点眼などを行う場合もあります。

     ②白内障

    白内障とは目の中の水晶体が混濁した状態をいい、進行すると視覚障害に陥ります。飼い主からは目が白いという主訴で来院されることが多いです。しかし、大事なことは「目が白い=白内障」ではないため、必ず診断する必要があります。加齢に伴い、核硬化症という老化現象も同じように見えるからです。

    白内障の原因は紫外線もありますが、他には遺伝、加齢、糖尿病とされています。分類には分け方がいくつかありますが、まず先天性と後天性に分かれます。年齢的には1歳以下を先天白内障、1~6歳を若年白内障、6歳以上を加齢白内障といいます。

    後天性の中には、原因別に

    ・加齢性

    ・代謝性(糖尿病や低カルシウム血症など)

    ・外傷性(水晶体嚢の断裂)

    ・炎症性(ぶどう膜炎などや全身性疾患から)

    ・放射線治療の合併症

    があります。さらに、発生後の進行度をもとにした分類として

    ・初発白内障(水晶体の白濁が始まる)

    ・未熟白内障(混濁が進行し、水晶体の膨化が始まる)

    ・成熟白内障(水晶体全体が混濁し、硬くなり、資格を喪失する)

    ・過熟白内障(水晶体の融解が始まる)

    症状としては、水晶体が混濁することであるが、その原因によって水晶体の混濁以外の症状を伴う場合があるため注意が必要です。白く濁った水晶体内容物が目の中へもれ、ぶどう膜に炎症を起こします。ぶどう膜炎を起こすと、緑内障へ続発し激しい痛みが起こります。

    <症状>

    ・散歩や室内で何かしらにぶつかる

    ・ボールなどを投げても気づかない

    ・寝ていることが多くなる

    ・急に噛み付くなど性格が変わることもある

    ・目が白く見える

    <治療法>

    根本的に治すには外科手術に限られます。しかし、緑内障や網膜剥離など合併症によっては手術ができない場合があるため、専門医を受診する必要があります。手術内容としては、濁った水晶体内容物を除去し、人口水晶体を挿入します。

    また、人のように日帰り手術とはいきません。なぜなら、全身麻酔にて行う体へのダメージや、術後目を触らないようにするケアなどが必要だからです。

    手術のタイミングとしては、進行が進めば進むほど合併症や手術の成功率が悪くなるため、早期に手術を検討することが望ましいといえます。白内障は内科的に治癒させることは不可能といわれています。

    ただ、合併症など原因によっては点眼薬などを使用するケースも考えられます。また、加齢の場合は麻酔のリスクなども考え、また進行を遅らせる意味でもサプリメントを処方することもあります。

    紫外線により起こる疾患の家庭でできる予防

    shutterstock_720324298.jpg
    出典:https://www.shutterstock.com/

    紫外線防止対策としてサングラスは効果的といえます。しかし、犬の場合は気にしてしまうことが多いため、散歩の時間などを工夫することも大事です。角膜炎は、早期発見・早期治療は必須ですが、二次的な悪化を招かないようエリザベスカラーをつけることをおすすめします。

    白内障はまめな定期検診を行うことで発見し、進行を防ぐことができます。また、酸化を防ぐ抗酸化サプリメントなどを併用し、早期にケアをしましょう。

    最後に、紫外線は目に見えるものではなく、また愛犬が自分で防げるものでもありません。正しい情報を理解していただき、ケアを行うことが最も大事といえます。また、早期発見早期治療で重症化しないことや二次的な影響も防げますので、定期的に健診を受け犬の目の健康を守りましょう。

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