道端で野良猫に出会うと、自宅で飼いたいと考える方も多いはず。しかし、これまでにねこちゃんを飼育した経験がないと、まずどんなことをしていけばよいのか悩んでしまいます。
そこで今回は、野良猫を発見した時にどんな対策法をとっていけばよいのかを、『公益財団法人どうぶつ基金』の理事長・佐上邦久さんに伺いました。
■保護後はまず動物病院へ連れていこう
―自身が飼育できる場合は、まず何をしていけばよいのでしょうか。
保護したら、まずはお近くの動物病院で診察を受けてください。受診する前にあらかじめ動物病院へ電話をし、「野良猫を飼育したいので受診したい」と説明されるとよいかと思います。その時は併せて、どのように病院へ連れて行ったらよいか、キャリーバッグなどが必要なのかもご相談してみてください。
また、ご自宅ですでに動物を飼われているかどうかによっても、病院受診後の対応は違ってくるので、受診時に獣医さんにご相談されてみてください。
ただし、子猫の場合は野良猫のように見えても、実は母猫がそばにいる可能性があるので注意が必要です。もし、授乳中の子猫のそばに母猫がいる場合は、離乳するまで見守ることも大事です。
なお、飼育時には最低限のものとして、猫のトイレ、餌、餌と水の入れ物が必要になるので、そうしたアイテムも揃えていきましょう。
―動物病院で特に受けたほうがよい検査や調べたほうがよいことなどを教えてください。
猫エイズウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症の検査は受けておきましょう。3種ワクチンやノミダニ駆除、早めの不妊手術、マイクロチップの装着と市役所などへ届け出を行うことも大切です。
そして、保護したのが子猫である場合は男の子か女の子かの判断も難しいので、獣医師さんに伺ってみてください。
■野良猫の年齢によって対処法は異なる場合も…
―子猫を見つけたときと成猫、老猫を見つけた時ではできる対処法や、行わなければならないことに違いはあるのでしょうか。
成猫と老猫の区別は難しいかと思いますが、発見場所に前からいた猫なら、いつ頃からいるのかを詳しくご存知な方が周囲にいるかもしれないので、可能であれば、聞取りを行うとよいでしょう。成猫や老猫へできる対処法は猫によって異なるため、獣医さんに相談することをおすすめします。
一方、授乳中の子猫の場合は数時間おきにミルクを与えたり、排泄をサポートしてあげたりすることが必要になるので、24時間一緒に過ごせる方でないと育てるのは困難だと思います。
離乳後の子猫の場合は生後2ヵ月齢くらいまでであれば、成猫よりも人間になつきやすいことが多いですが、適切な対処法は猫によって異なりますので、こちらも獣医さんに相談してみましょう。
―すでに先住猫を飼っていて、新たに野良猫を迎える場合はどのようなことに気を付けていけばよいのでしょうか。
もし、新たに迎える野良猫が他の猫に感染する病気を持っていたら大変ですので、動物病院で受診するまでは飼育部屋を隔離し、触れるたびに手洗いを徹底してください。動物病院で受診の際に先住猫がいることを相談し、アドバイスを貰ったほうがよいです。
また、一般的には急に先住猫と新入り猫を引き会わせるのではなく、柵越しに徐々に馴らしていくのがよいといわれているので、そうした配慮もしていきましょう。
■野良猫を捕獲するときの注意点
―野良猫を捕獲するときは、どのようなポイントに気を付けていけばよいのでしょうか。
人に馴れていない猫は特に、捕獲器で捕獲することになります。猫が入った捕獲器をそのまま置いておくことは非常に危険なので、捕獲器を使用する際は、捕獲器から目を離さないように気を付けてください。
―他にもなにかアドバイスや伝えたいことなどありましたら、教えてください。
野良猫を保護することは、悪いことではありません。よいことだと思います。しかし、可哀そうだからと野良猫を保護し、不妊手術をせずに飼い続けて、多頭飼育崩壊に陥ってしまうケースがたくさん起こっているのも事実です。
だからこそ、私たちは猫のためにも、人のためにも、できることを精一杯させていただき、「不妊手術をしてください」と何度でも訴え続けていくつもりです。
また、「餌やり禁止」という言葉をよく見聞きしますが、野良猫の問題は「餌やり禁止」だけでは解決できません。置き餌、投げ餌など、ご近所に迷惑をかける餌やりは“無責任な餌やり”と呼ばれ、餌やり自体が禁止されているようです。
しかし、人間から餌を貰えなくなると稀少動物の捕食者となってしまったり、ゴミをあさったりする可能性が高まります。そして、飼い猫ではない猫を人間の管理下につなぎとめているボランティア活動を妨害することにもなるので、実態把握が困難になる可能性もでてきます。
そのため、どうぶつ基金では “無責任な餌やり”を“マナーを守らない餌やり”と呼び、通常の餌やりと差別化を図ることにしました。マナーを守った餌やりからはじめる“TNR先行型地域猫活動”を続けることにより、飼い主のいない猫の数は減少し、野良猫トラブルも減っていくと考えています。これ以上不幸な猫を増やさないためにも、みなさまのご理解とご協力をお願いします。
■何十年先の未来も考えて飼育しよう
野良猫は厳しい外の環境を生き抜いてきているため、病気を抱えていたり、体調不良に陥っていたりするケースも多いものです。そのため、まずは動物病院で健康状態をしっかりと把握することが重要になります。
現在、ねこちゃんの平均寿命はおよそ15歳程度といわれています。だからこそ飼育するときは、この先何十年も命を守っていけるのかを良く考えていきましょう。
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【取材協力】
※ 公益財団法人どうぶつ基金 理事長 佐上邦久氏
【参考】
【画像】
※ 公益財団法人どうぶつ基金
※ AonP, DanyL, jue6577, PHOTOCREO Michal Bednarek / Shutterstock
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