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【獣医師執筆】犬と人はいつから仲良しなの?歴史から学ぶ「愛犬との絆」をもっと深める秘訣

白井春佳

獣医師
白井春佳

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【獣医師執筆】犬と人はいつから仲良しなの?歴史から学ぶ「愛犬との絆」をもっと深める秘訣

202131日情報更新

犬は人との共生を始めた動物の中でも、最も歴史が古いといわれています。そして、地球上にいる動物の中で、人の生活に自然に溶け込んでいる動物だといえるでしょう。「Dogs are man's best friends(犬は人の最良の友)」ともいわれています。

ワクワクするような魅力あふれる犬と人の歴史や絆について、過去から現在をさかのぼりながら行動診療科認定医の筆者がご紹介します。

 

■歴史をさかのぼって考える「犬と人との出会い」

“犬と人との出会い”、犬はいつ“犬”になったのか、犬と人の関係性は? 犬の歴史から分かってきていることを、最新の研究報告を含めながら解説します。

犬と人との出会い

National Geographicの記事で紹介された研究報告(※1)によると、2010年にロシアのシベリア南部、アルタイ山脈に位置するラズボイニクヤ洞穴で保存状態の良いイヌ科動物の化石が見つかりました。およそ3万年前の化石であると分かり、最古の飼い犬でないかといわれています。

また、この洞穴からは、人間の焚き火や食事などの生活の痕跡も見つかっており、犬と生活を共にしていた可能性が高まっています。大多数の研究者は、おそらくそれよりも何万年も前から関係を持ち始めたと考えているようです。

犬はいつ“犬”になったのか

著書『犬から見た世界―その目で耳で鼻で感じていること』で記述されている遺伝的研究によると、14万5,000年前の時代に、本流のオオカミと犬に進化するオオカミとの間で、微妙な分裂があったといわれています。

人を容認したオオカミの種類達は狩りをするより腐肉をあさって食べる方が多く、オオカミ度が少ない種類だったようです。肉食動物寄りの雑食動物である彼らは、人の食生活に上手くなじむことができたのでしょう。

 

■見つめ合いで愛情ホルモンが出る!? 犬が人の最良の友である理由

犬と人間の絆
出典:https://pixta.jp/

犬は家畜化された最初の動物であると考えられており、現在までに400を超える犬種が作り出されてきました(※2)。色々な役割や仕事を目的に改良されましたが、働き手としてだけではなく、友、親友として現在まで共存しています。

人と犬との絆を科学的に研究して解明する動きが広がっていますが、犬は、なぜ信頼関係が築ける動物なのでしょうか? その2つの要因について解説します。

人間の気持ちを理解できる

人間をはじめ他種の気持ちを理解する能力は、非常に高い認知レベルになります。犬は “人や犬が何を見ているか”を知ることができます。この能力は、自分の視点だけでなく他種の視点がどこにあるか理解しますので、相手の気持ちを理解する手助けになります。

実は、この他種の視線を読むことは、認知能力の高いチンパンジーよりも能力が高いことが研究報告(※1)されています。人のしぐさを読み取る能力の高さは、遺伝的なものと発達環境の両者が必要とされています。

日常的に、視線を用いたコミュニケーションを行いながら、人の動きや気持ちを読み取っているのです。あなたの目線で大好きなオヤツやオモチャを隠している場所が分かる犬も多いのではないでしょうか。

見つめ合いで愛情ホルモンがでる

2015年に麻布大学の菊水健史先生・永澤美保先生による『オキシトシンと視線との正のループによるヒトとイヌとの絆の形成』の研究論文(※3)が発表されました。

人と犬が見つめ合うことで、“オキシトシン”という母子の絆を形成するホルモンが人も犬も上昇することが分かりました。親子のような絆の形成により、愛着関係が生まれていると考えられています。

これは、幼少期から飼いならされたオオカミで同じ実験をしても、オキシトシンの上昇は認められませんでした。犬に特異的なことであり、人との絆を深めてきた要因の1つと考えられています。

あなたの犬はよく見つめてきますか? にこやかに見つめ返すことで、お互いにオキシトシンが増えて愛情がさらに深まるでしょう。

 

■犬と人の絆を深めるためにできること

犬と人の絆
出典:にいがたペット行動クリニック

さらに、あなたと愛犬が仲良くなるために、科学的な視点から遊びと絆の関係を1つご紹介します。

犬はネオテニー(幼形成熟)といって、成長しても子どものような行動が残る動物です。この中に“遊び行動”があります。実はこの遊びを通じて、絆が深められることが分かっています(※2)。

犬と飼い主との自由な触れ合いの後に、オピオイドといわれる快楽に関わる神経伝達物質が犬の脳内で分泌されます。飼い主との遊びを通じて「楽しい!」という物質が脳内にたくさん満たされることになります。その結果、遊びを通じて飼い主が大好きになり、さらに絆が深まるでしょう(※2)。

 

人とこんなにも深い絆を科学的にも築ける犬という動物は、本当に魅力がいっぱいです。そんな素晴らしいパートナーである愛犬と毎日楽しく遊べていますか? 楽しくいっぱい遊びながら、愛犬との絆をさらに高めてくださいね。

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【参考】

※1 Christine Dell'Amore「化石からイヌの家畜化の歴史が判明?」(National Geographic)

※2 菊水健史・永澤美保. 「犬のココロをよむ――伴侶動物学からわかること」(岩波書店)

※3 Miho Nagasawa, et al. Oxytocin-gaze positive loop and the coevolution of human-dog bonds. Science. 2015 Apr 17;348(6232):333-6

【画像】

※ プラナ, yuji / pixta

※ にいがたペット行動クリニック

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