わんにゃの健康と病気

【獣医師執筆】飼い主さんなら知ってほしい「猫がかかりやすい病気」とは?

吉本翔

獣医師
吉本翔

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【獣医師執筆】飼い主さんなら知ってほしい「猫がかかりやすい病気」とは?

20201016日情報更新

近年、ねこちゃんの飼育頭数はどんどん増加しており、ねこちゃんブームが到来しています。ねこちゃんは、わんちゃんと比べて飼いやすいと考えられがちですが、意外にそうでもありません。

特に、病気については注意した方が良いでしょう。ねこちゃんは、病気の症状が分かりづらく、命を脅かす病気が隠れていることも多々あるからです。

そこで今回は、獣医師の筆者が良く見る、ねこちゃんの死因となる病気と、飼い主さんが気をつけるべき点についてご紹介します。

 

■がん

出典: https://www.shutterstock.com

ねこちゃんの命を脅かす病気に“がん”があります。がんは、時間が経つと進行して悪化するので、早期に見つけることが非常に重要です。日ごろから、身体全体を触ってあげて変なできものがないかをチェックするように心がけましょう。

また、口の中にがんができる場合もあるので、定期的に口の中も見ることを推奨します。
他にも、胃腸に発生するがんでは、体重が減る、嘔吐や下痢などの症状(※2)がみられることもあります。

中~高齢のねこちゃんでは、がんになる可能性が高まりますので、日ごろのチェックを欠かさないようにしましょう。

 

■泌尿器の病気

ねこちゃんは、泌尿器の病気が問題になることがしばしばあります。泌尿器には、腎臓、尿管、膀胱、尿道が含まれ、これらの臓器はおしっこの生成と排出に関わっています。

ねこちゃんがなりやすい泌尿器の病気には、慢性腎臓病、尿石症、膀胱炎などが挙げられます。これらの病気では、おしっこの異常がみられることがほとんどです。

おしっこが出ない、おしっこの量が多い、おしっこの色が濁っている、おしっこをするときの様子がおかしい、などといった症状が見られた場合、泌尿器に関わる病気の可能性が考えられます(※1)。放置すると命に関わる病気もあるので、おしっこを注意深く観察してあげることが重要です。

 

■心筋症(しんきんしょう)

心臓は、生まれてから死ぬまで拍動を続け、全身に血液を運ぶ重要な臓器です。心臓の筋肉のことを“心筋”といいますが、ねこちゃんは心筋症という病気になってしまうことがあります。

心筋症になると、心筋の機能が異常となり、血液を身体全体にしっかりと送り出すことができません。一部の研究によると、ペルシャ、ヒマラヤン、メインクーン、アメリカン・ショートヘアなどで発生が多いと言われています。(※1)

残念ながら、心筋症を完全に治す方法はなく、お薬で症状を和らげることしかできません。心筋症のねこちゃんは、呼吸が苦しくなることがあり、口を開けて苦しそうに呼吸しているときには注意が必要です。(※1)

また、後ろ足が麻痺することもあります。(※1)これらの症状をみた場合には、早急に獣医師さんに診てもらうことを推奨します。

 

■猫伝染性腹膜炎(ねこでんせんせいふくまくえん)

猫伝染性腹膜炎は、滲出(しんしゅつ)型と非滲出型という2つの病型に分かれています。滲出型と非滲出型のどちらにもみられる症状は、発熱、元気がなくなる、食欲がなくなる、体重が減るといったものです(※1)。筆者の経験上死亡原因となるケースを多く見かける病気です。

この病気は、猫伝染性腹膜炎ウイルスというウイルスによる感染症です。ウイルスの感染は、ねこちゃんの糞便や唾液を介するといわれています。

残念ながら、猫伝染性腹膜炎を発症したねこちゃんに対して、完全に治癒させる治療法はありません。効果的なワクチンも開発されていないのが現状です。

現在の獣医療では、この病気に対してできることは少なく、予防薬・治療薬の開発していかなければなりません

 

■最後に

出典: https://www.shutterstock.com

今回は、ねこちゃんの命を脅かす病気をご紹介しました。健康寿命を延ばすうえで、病気の早期発見・早期治療は重要です。

ねこちゃんは、症状が分かりづらく、病気の発見が遅れてしまいがちです。また、体調が悪くても、言葉で伝えてくれません。

飼い主さんが、日ごろからねこちゃんをしっかりと見てあげることがとても重要です。ちょっとでも怪しいなと思ったら、獣医師さんに診てもらうとよいでしょう。

 

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考・画像】

※1 日本獣医内科学アカデミー編「Textbook of VETERINARY INTERNAL MEDICINE 2nd edition(獣医内科学 第2版 小動物編)」(文永堂出版)

※ zossia, Sukpaiboonwat / Shutterstock

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