猫には、私たちが暮らしているこの世界がどのように見えているのかご存知でしょうか? 実は同じ空間にいても、人と猫では視界に様々な違いがあります。
そこで今回は、猫の視界とその視界に影響する病気についてご紹介します。
■肉食動物である猫の視覚はハンティング向け

猫の視界の大きな特徴は、“動体視力”と“暗闇での視力”が優れている点です。これは、猫が本来肉食動物であるという点が大きく関係しています。
・動体視力
動体視力については、1秒間を60コマに分けて認識できると言われています。これは人よりも優れていて、獲物を探すとき、わずかな動きでも検知できるように、そして獲物が逃げようとしてもすぐに察知して、的確にハンティングできるようになっています。
一方で、人が暮らしている社会の中では不便な面もあります。例えば、蛍光灯は1秒間に50~60回点滅しているのですが、人はこの点滅が速すぎて認識できず、ずっと光っているように見えます。しかし猫はこの蛍光灯の点滅も認識できるので、蛍光灯が光っている場所では、視界が常にチカチカした状態になってしまいます。
・暗闇での視力
また、猫の暗闇での視力に関しては、3つポイントがあります。1つ目は人と比べて瞳孔が大きく開き、よりたくさんの光を取り入れられる点です。
2つ目は光や色を認識する視細胞のうち、明暗を認識する“桿体(かんたい)細胞”と呼ばれる細胞が人よりも優れていて、より少ない光でも認識できるようになっている点です。
そして3つ目の特徴が“タペタム(輝板)”の存在です。タペタムは猫の網膜の裏側にあり、目に入ってきた光を反射させることで、光の量を増幅させる役割があります。これによって、わずかな光もしっかりと認識できるようになります。ちなみに、猫の目がキラリと光ったりする時がありますが、これはタペタムが反射したことで起きている現象です。
猫はこれらの3つの特徴を駆使して、暗い場所でもしっかりと獲物を確認することができるようになっています。
■人には見えるけど、猫には見えないもの
猫の視界はハンティングに適した構造になっていますが、その一方で、苦手なものもあります。まず、動かないものに対する視力は弱く、その視力は人の10分の1程度と言われています。さらには、近くのものに対しては焦点を合わせることができず、ぼやっとしか見えません。
また、色の識別もあまり得意ではありません。人は赤、青、黄という色の三原色を認識できますが、猫はその中の青と黄のみしか判別できず、赤や緑はほとんどわかりません。
■猫の視界は五感を駆使して作られています
猫の視覚は人と比べると得意不得意があるのですが、猫の場合、さらに聴覚や嗅覚など、その他の感覚を駆使して、視界を作り上げていると考えられています。
例えば、近くのものは焦点が合わず、非常に見えづらいのですが、ひげを使って近くのものを認識し、視覚の欠点を補う役割をしています。また、聴覚や嗅覚も人間よりも優れていて、音や匂いの方向、距離を理解することができ、より立体的な空間を認識しています。
つまり猫は、視覚だけでなく、五感をフルに生かすことで、より精度の高い視界を作り出しています。
■気をつけたい猫の目の病気

猫も人と同じように様々な目に関する病気にかかります。結膜炎や角膜炎、緑内障といった病気がありますが、白内障に関しては、人や犬よりもかかりづらく、ヒマラヤンやシャムなど猫の特定の種類での発生が報告されています(※)。
これら眼の病気の多くは、目やにや白目部分の充血が見られたり、目をショボショボさせたり、気にして掻いたりする仕草を見せるようになります。眼の病気は治療が遅れると失明のリスクもありますので、異常に気がついたときは、なるべく早く動物病院を受診するようにしてください。
猫は人とは違って純粋な肉食動物で、ハンティングに適した視界が作られています。また、視覚だけでなく、五感を使って視界を作り上げています。つまり優れた聴覚や嗅覚、触覚を利用して、猫の見える世界を作っているのです。
とはいえ、やはり視界を作る中心は視覚です。猫には人と同じように様々な眼の病気が存在し、中には視覚に障害を与えるものもあるため、飼い主さん側で注意してあげましょう。
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【参考】
※ Alex Gough「Breed Predispositions to Disease in Dogs and Cats」(Blackwell Publishing)
【画像】
※ Smooth Wind, bee, 1981 Rustic Studio kan / pixta
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