※2023年8月14日情報更新
梅雨の時期から秋にかけて、今では西日本だけでなく北海道でも、気温や湿度が高くなる日が多くなります。暑さや湿気は、わんちゃんの健康に影響を与えることを知っていますか?
そこで今回は、暑さや湿気が犬に与える影響とその対策について、獣医師の西原克明先生に解説いただきました!
■犬は暑さや湿気が大の苦手
気温や湿度が高いとき、わんちゃんはよく舌を出して「ハッハッハッ」と呼吸をします。実はこのとき、犬は呼吸を通じて体温調整を行い、暑さで体温が上がらないようにしているのです。
人間は汗をかくことによって体温を下げることができます。しかし、わんちゃんの場合はほとんど汗をかきません。汗による体温調節ができないため、呼吸によって対応しているのです。
しかし、呼吸による体温調整は汗ほど効率よく体温を下げることができません。そのため、暑さによって一度でも体温が上がってしまうとなかなか下がらず、その結果、熱中症を発症しやすくなります。
また、暑さだけでなく湿気が高いときも空気中の水分が多くなり、熱交換がうまくできなくなってしまいます。そのため、わんちゃんは気温だけでなく、湿度が高い環境でも体調を崩しやすくなります。
その一方で、わんちゃんは汗をかきづらい代わりに、体温を維持するための被毛がたくさん生えています。それによって寒さを凌ぐことができます。
つまり体温調節の観点からは、わんちゃんは人間よりも寒さに強く、暑さや湿気には弱い動物と言えます。
■特に気をつけたい犬種や病気とは
前述のように、わんちゃんは主に呼吸によって体温を下げる仕組みを持っています。そのため、体温が上がると呼吸が速くなるのですが、気管や肺などの呼吸器、あるいは心臓といった循環器に病気を抱えているわんちゃんの場合、呼吸が速くなるとそれらの病気を悪化させてしまうことがあります。
つまり、呼吸器や循環器の病気を持っているわんちゃんは、健康な犬に比べてより暑さや湿気に弱く、簡単に持病が悪化したり、熱中症を発症したりしてしまうため、梅雨から秋にかけての気温、湿度が上がりやすい時期の生活には、十分な注意が必要です。
また、パグやフレンチブルドッグ、シーズーといった鼻が潰れたようなわんちゃんを“短頭種”と呼びますが、短頭種も暑さや湿気に弱いと言われている犬種です。
短頭種は、鼻が短くなっているのですが、その分、鼻の中の空気の通り道も非常に狭くなっています。そのため、呼吸の効率が悪くなっていて、その分、熱交換も他の犬種に比べるとうまくできません。
その結果、簡単に熱中症を発症してしまう傾向があるため、短頭種は暑さや湿気に対して、特に気をつけなければならないと言えます。
■熱中症は飼い主の油断がほとんど!?
わんちゃんの暑さや湿気対策で、最も注意が必要なのが“熱中症”です。熱中症は気温や湿度の影響で体温が上がってしまい、その結果、全身状態が悪化してしまうものですが、中にはショックを起こしたり、場合によっては命を落としてしまったりすることもある、非常に厄介な症状です。
筆者の経験では、熱中症にかかってしまうわんちゃんのほとんどが、暑い部屋にいたり、閉め切った車内で留守番をしていたり、地面の温度がまだまだ高い時間にお散歩をしたりと、飼い主さんの不注意によって引き起こされています。
そして、熱中症を起こしてしまった飼い主さんのほぼ全員が「これくらいで熱中症になるとは思わなかった」とおっしゃいます。
しかし、熱中症は「油断してた」だけでは済まされません。くれぐれも大切な家族を守るためにも、温度と湿度の管理にはくれぐれもご注意ください。
■エアコンを積極的に活用しよう!
(1)飼い主さんが「涼しい」と感じる温度
わんちゃんを暑さや湿気から守るために、積極的に活用していただきたいのがエアコンです。エアコンとなると、電気代などコストパフォーマンス的に使用をためらう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「今日は比較的涼しかったから、エアコンをつけないで風通しだけ良くしてたのに……」ということで、熱中症を起こしてしまうケースもあります。
エアコンの設定ですが、“飼い主さんが少し涼しいと感じるくらい”の設定をおすすめします。近年は省エネでやや高めの温度設定で過ごすケースも増えているのですが、特に短頭種や呼吸器、循環器の持病のあるわんちゃんでは、その設定でも体調を崩してしまう可能性もあります。
わんちゃんの温度、湿度対策としては、しっかりと快適な設定をお願いします。もちろん、エアコンをしっかり使用していても、車内に閉じ込めてのお留守番は厳禁です。
(2)愛犬の様子をみて調節しよう!
具体的な温度や湿度の設定ですが、犬種や持病の有無、性格、活動性などにもよりますし、また、日当たりや風通しのよさといった環境の影響もあります。さらには、エアコンの場合、温度のみ設定できるものがまだまだ多く、快適温度は湿度の影響を強く受けるため、湿度が不明な状態での温度設定は危険です。
そのため、具体的な数値ではなく、あくまで飼い主さんの感覚やわんちゃんの様子を見ながら調整することをおすすめします。
また、エアコン以外にも、首元に保冷剤を巻き付けたり、ひんやりとしたマットで休ませたりするといった対策もありますが、筆者の経験上、これらだけで熱中症を抑えられることは稀ですので、あくまでも補助的なものとして活用するようにしてください。
わんちゃんは暑さや湿気が苦手です。気温や湿気が高い日は、熱中症を予防するためにも、エアコンを積極的に活用し、温度&湿度管理を徹底してあげてください。
特に、短頭種や呼吸器・循環器に持病があるわんちゃんは、より暑さや湿気の影響を受けやすいため、よりしっかりとした管理が重要になります。
温度や湿度の管理は、飼い主さんしかできません。逆に考えると、それらの管理が問題なくできれば、わんちゃんはとても快適に過ごせるようになります。ぜひ、日頃からの暑さや湿気にも注意して、わんちゃんの熱中症を予防してあげてくださいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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