わんにゃの健康と病気

【獣医師執筆】犬が発症しやすい目の病気とは?原因や症状を解説

佐藤貴紀

The vet 南麻布動物病院 獣医師
佐藤貴紀

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【獣医師執筆】犬が発症しやすい目の病気とは?原因や症状を解説

犬は目の病気にかかりやすく、起こる原因はさまざまで、アレルギーや感染、遺伝的な理由などが挙げられます。不快感や痛み、かゆみなども異なるため、実際は見過ごされてしまうことが多い傾向にあります。この記事では、犬が発症しやすい目の病気について、原因や症状を解説します。

角膜炎

ラブラドール
出典:https://www.shutterstock.com/

角膜炎とは、目の黒目部分の表面をおおっている角膜が、何かしらの原因で炎症が起きている状態のことです。

主な発症原因としては、異物混入(ホコリ、砂、被毛など)や事故(喧嘩、交通事故)、眼瞼やまつ毛の異常による外傷が最も一般的ですが、涙液の減少や閉瞼不全(しっかりと目が閉じないこと)、細菌やウイルスなどの感染症などにより自身のバリア機能の低下が原因で生じるものに大別されます。

(1)症状

角膜炎の症状は、以下のようなものが挙げられます。

・目がしょぼしょぼする

・目を閉じる

・目を気にして、何度も掻く

・黒目が白くなる

・白目が充血している

・目やにが多い

症状を放置していると、重症化して治療が長引く場合があるため、犬の目に違和感を感じたら、獣医師に相談しましょう。

(2)治療方法

一般的な治療としては、まず眼をきれいに洗眼し、抗生剤や消炎剤等の目薬による治療を行います。角膜炎の原因にあわせて、治療を行うことが基本となります。

・乾燥を防ぐために、「ヒアレイン点眼」

・感染を防ぐために、「抗生剤点眼」

・角膜の修復を促すために、「血清点眼」

傷が治りにくい場合は、犬用のコンタクトレンズで目を保護したり、外科的処置が必要となります。

結膜炎

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出典:https://www.shutterstock.com/

まぶたの内側や眼球の前側をおおっている「結膜」という白い膜が、炎症を起こした状態を「結膜炎」といいます。

主な発症原因は、ゴミやほこり、寄生虫や細菌などの感染、アレルギーなどにより炎症が起こります。その他にも、目に毛が入ったり逆さまつげなど、被毛やまつげの生え方に異常があると、常に目の中に毛が入るため、結膜が刺激を受けて炎症を起こしやすくなります。

(1)症状

結膜炎の症状は、以下のようなものが挙げられます。

・白目が赤い

・目やにが増える

・涙が出る

・目を気にして、何度も掻く

(2)治療方法

原因によって治療はさまざまですが、アレルギーが原因の場合は、消炎剤やステロイドの内服薬、点眼薬を使用します。感染症の場合は抗生剤の治療を行い、ドライアイの場合は、人工涙液や免疫抑制剤が用いられます。異物が入って炎症が起きている場合には、洗浄などにより異物除去を行います。

ぶどう膜炎

目の構造
目の構造

水晶体周辺にある「虹彩」「毛様体」「脈絡膜」という3つの部位で構成される部分を「ぶどう膜」といい、そこに炎症が起こることを差します。ぶどう膜炎はその発生部位により、前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)と後部ぶどう膜炎(脈絡膜炎)、全体的な汎ぶどう膜炎に分類されます。

主な発症原因は、感染、外傷、免疫性、腫瘍、他の眼の病気からの波及などと多岐に渡り、治り難い目の病気です。

(1)症状

ぶどう膜炎の症状は、以下のようなものが挙げられます。

・目が赤い

・眩しそうに瞬きをする「羞明(しゅうめい)」

・目がけいれんする

・涙が出る

・角膜が白っぽい(角膜浮腫)

(2)治療方法

目の炎症を抑えるために、抗炎症作用の点眼薬を用いります。また、感染や腫瘍など原因が特定された場合は、基礎疾患を治癒し、引き起こされる可能性を除外してくことが大切です。

白内障

白内障のプードル
出典:https://www.shutterstock.com/

白内障は眼の中のレンズにあたる水晶体がにごり、白くなる病気です。水晶体が白くなることで光の透過性が悪くなり、眼が見えにくくなることもあります。軽度の場合は、水晶体の外側からにごりはじめるので、気づきにくいといわれています。白内障は混濁の程度によって「初発・未熟・成熟・過熟」に分類され、進行すると失明することもあるので注意が必要です。

白内障にはさまざまな原因があるとわれており、加齢、遺伝、先天性、糖尿病、中毒、外傷、紫外線などが挙げられます。

(1)症状

白内障の症状は、以下のようなものが挙げられます。

・目が白く見える

・瞳孔(どうこう)が常に開いている

・物にぶつかるなど見えにくそうにしている

(2)治療方法

軽度の場合や初期であれば進行をなるべく抑制する内科的治療(点眼や内服薬)を行います。しかし、治療というよりは維持するもしくは進行を遅らせる意味合いが強いです。目のにごりを元に戻すためには、外科的ににごった水晶体を吸引したり、摘出する手術が必要になります。

緑内障

ビーグル
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緑内障は、眼の中の眼房水が何かしらの原因で循環に異常が起こり、眼の中の圧力(眼圧)が一定に保たれず高くなる状態です。視覚機能が障害を受け、眼圧の上昇が長く続くと失明することもあります。緑内障は原発緑内障と続発緑内障に分類されます。

・原発緑内障:先天的な異常があることで起こる緑内障。

・続発緑内障:水晶体脱臼やぶどう膜炎、網膜剥離、腫瘍などが原因となり、眼の中で炎症が起こることで緑内障になります。

(1)症状

緑内障の症状は、以下のようなものが挙げられます。

・目をしょぼしょぼする

・強い充血がある

・涙が多い

・片方の目が大きい

・見えにくそう

(2)治療方法

速やかに眼圧を下げないと失明にも繋がるため、緊急的な対処が必要です。内科的治療では点眼や内服薬、注射薬などで眼圧を下げていきます。外科的治療では眼房水の新しい出口を形成したり、眼房水の生成を緩やかにする方法など、さまざまな手術があります。

犬の目の病気はとても起こりやすく、動物病院に来たときにはかなり進行している場合も少なくありません。早期発見のために、普段から異変がないか気にかけ、少しでもおかしいと感じる部分があったら獣医師に相談しましょう。毎日、愛犬の目のチェックを習慣化し、注意してしっかりと確認してあげてください。

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