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【獣医師執筆】犬に起こる子宮内膜炎及び子宮蓄膿症

佐藤貴紀

The vet 南麻布動物病院 獣医師
佐藤貴紀

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【獣医師執筆】犬に起こる子宮内膜炎及び子宮蓄膿症

子宮内膜炎は、子宮の内部などに大腸菌、ブドウ球菌などの細菌が侵入してしまい、子宮の内部を覆っている子宮内膜に炎症が生じてしまう病気です。さらに、炎症が続き細菌による膿が蓄積されると子宮蓄膿症となるわけなのです。

子宮内膜症はおおよそ6歳以上の不妊手術を受けていない雌犬に4頭に1頭程度の高い確率で生じる病気です。

今まで出産したことがない犬または長く繁殖を停止している犬に多いとも言われています。私の経験上ですが、2歳の犬でも子宮蓄膿症になっているケースもあります。

子宮内膜炎及び子宮蓄膿症の原因

犬に起こる子宮内膜炎及び子宮蓄膿症
出典:https://www.shutterstock.com/

不妊手術をしていないメスの子は、年1−2回定期的に発情が起こります。通常、発情期でない時期には子宮口を開いておらず、子宮頸管を閉ざしているので細菌の侵入は起こりにくいです。

発情前期から発情期にかけては、精子を通りやすくするため子宮頸管を部分的に開き、膣内に存在する病原菌が子宮内膜に辿り着き、炎症を生じさせてしまうということが子宮内膜炎の発症のメカニズムとなっています。

また、エストロゲンとよばれる女性ホルモンの影響により、子宮内膜が厚くなることなども考えられます。

子宮内膜炎及び子宮蓄膿症の症状

犬に起こる子宮内膜炎及び子宮蓄膿症
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開放型と閉塞型で共通する症状としては、発熱、元気消失、食欲減退などがあります。
開放型は陰部より排膿があることで気づくことができるため、症状が軽いケースが多いです。


閉塞型は、陰部からの排膿がないため、とても厄介で気づきづらい特徴があります。個体差もありますが、重症化しているケースをよく見かけます。上記の症状に加え、他に腹部膨満や飲水量の増加なども見られます。

 

(1)開放型「膿が陰部から出てくるタイプ」


陰部より出血とは違う液体(緑色、暗赤色など)が出ている開放型ということで発見されます。通常の発情では出血のみ見られます。この場合は、飼い主が早期発見できることや膿が外に排出され体への影響が少ないことからも、症状が出にくいタイプでもあります。

(2)閉塞型「膿が陰部から出ない閉塞型のタイプ」


このタイプは早期発見が難しいため、全身状態が悪化してから来院されるケースが多いです。この病気は進行すると元気、食欲が無くなり、飲水量がとても増えたり、熱が出たりといろいろな症状が出てきます。

検査方法

犬に起こる子宮内膜炎及び子宮蓄膿症
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開放型は超音波検査を行うことで子宮の異常を迅速に捉えることができますが、子宮水腫などの感染前の状態の可能性もあるため、血液検査を加え、白血球の上昇や炎症の数値が高くないかどうかを調べます。

閉塞型の場合は、血液検査、レントゲン検査、超音波検査を行い、診断を行います。
共通して言えることは、細菌の毒素などが腎臓などへ悪影響を起こしていないかどうかなどの判断も重要と言えます。

治療方法

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基本的には根治療法として、子宮と卵巣の摘出を行うオペが必要となります。抗生剤により治るケースもありますが、また再発を起こすこともあります。

腎臓などに障害が出ている場合は、腎臓のケアを先に行う場合もありますが、子宮蓄膿症が悪化している場合は命の危険性もあります。

予防方法

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免疫力を落とさない、いわゆるストレスを与えないことは大事ですが、何がストレスとなるかは分かりません。
確実な予防としては、不妊手術をお勧めします。

最後に、子宮内膜症及び子宮蓄膿症は、気づきが遅ければ命の危険性もあるため、不妊手術を受けてない場合は、定期的な健康診断を受けることをお勧めします。

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