わんにゃの健康と病気

【獣医師執筆】7〜9月は熱中症が本格化危険!「熱中症」について

佐藤貴紀

The vet 南麻布動物病院 獣医師
佐藤貴紀

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【獣医師執筆】7〜9月は熱中症が本格化危険!「熱中症」について

熱中症とは高温環境下で、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れ、体内の調整機能が破綻するなどして、発症する障害の総称です。7〜9月に室内で熱中症になるケースが多く注意が必要です。

■犬は熱中症になりやすい?

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犬の体温調節は人間と違い、熱を発散しにくい構造にあります。人間はたくさんの汗をかき、熱を放出しやすいと言えるのですが、犬は汗をかく汗腺が足の裏の肉球にしかないため、皮膚から熱を放出することができません。

また、被毛に覆われているため体内に熱がこもりやすいことがわかります。では、犬の温度調節はどのように行われているかというと、主に、舌を出してハァハァと速く浅い呼吸(パンティング呼吸)を行い、唾液を蒸散させ、気化熱で体温を下げようとします。

体温調節のほとんどを呼吸に頼らざるを得ないため、その分、人間よりも高温多湿の環境に弱いということがわかります。

■熱中症の症状とは

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■症状①軽度

犬の体が熱くなり始めます。呼吸が少しづつ早くなり、温度調節を開始している状況です。動物病院では直腸温39.5℃以上と呼吸促迫(呼吸数は正常では30回/分を超えてくる状態)などから判断し、熱中症と診断します。

個体差はありますが、よだれを出す、元気がない、舌が乾燥している状態なども見られます。
また、進行し始めるとよだれを大量に流し、嘔吐、ふらつきなどを起こす子もいます。

熱中症になりやすい犬種とは

● 短頭種犬
フレンチ・ブルドック、シーズー、ペキニーズ、パグ、ブルドッグ、ボストン・テリア、ボクサーなど マズルが短い犬種。
呼吸器に障害があることや機能が弱いなどの原因により、呼吸での熱放出がうまくできないため。

● 北方が原産の犬
シベリアン・ハスキーやサモエドなどの北方が原産の犬
ダブルコートなど厚い被毛を持つため、体に熱がこもりやすいと言われています

● 太っている犬
肥満気味の犬は、皮下脂肪によって体内に熱がこもりやすいことや、首のまわりの脂肪によって気管が圧迫されて呼吸機能が低下すると言われています

● 子犬
体の呼吸機能が未発達のため、呼吸管理がしにくいことやそもそも体が弱いことが考えられます

● 老犬
呼吸機能が衰えていることが多いため、熱の放出がうまくいかないことや自分で移動がうまくできない場合などもあり熱中症になりやすい傾向があります。

● 心臓疾患犬
心臓病を患っている場合、血液循環などがうまくできず肺での呼吸に悪影響を及ぼす事があります。

● 呼吸器が弱い犬
気管虚脱という気管の病気を患う犬や肺高血圧など何かしらの問題がある場合、呼吸機能がうまくできず体温調節が難しくなり、熱中症になりやすい傾向があります。

● あまり水分を摂取しない犬
日ごろから水分をあまり摂取しない犬は要注意です。

● 興奮しやすく、激しい運動を好む犬
常に興奮し、落ち着きが無いような犬は要注意です。


■症状②中等度~重度

軽度との境目は難しいですが、進行してくると倒れてしまい、ぐったりしています。そのほか、筋肉が震えたり、呼吸が浅く早くなってしまうこともあります。

さらには、完全に意識がなくなり、全身性のけいれん発作を起こしたりすることもあります。症状がかなり進行すると、吐血や下血(血便)、血尿といった出血症状が見られたり、酸素をうまく取り込めずチアノーゼが見られたり、最悪の場合はショック症状を起こし、命に関わることもあります。

症状①から症状②に移行する時間は個体差があるため、かならずしも気づいた時にはよだれを出したり、呼吸がハァハァしているとは限りません。
ただ、体を触ると熱いことは間違いないため、症状を知り、早急に応急処置を施す必要があります。

■熱中症の予防

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■愛犬の管理の徹底

お留守番をする際などはには、なるべく一人にしないことや室温などの管理を行えるように見守りカメラなどを使用する。エアコンをつけっぱなしにして、停電などで消えた場合にも気付けるような仕組みが重要です。

■水分は1日の必要カロリー数の摂取を心がける

3kgで255mlの水分が必要と言われています。水分摂取量が少ないほど、熱中症にはなりやすいといえます。また、飲ませる工夫も重要で、ご飯に混ぜることや数箇所の水飲み場などを設置するなどが必要です。

■いつも寝ている場所などが暑くならないようにする

直接日光が当たらないようにカーテンを閉めることや、ケージの置く場所を風通しの良い場所などに設置する、熱がこもらないようにクールマットを置くなど体を熱くしないことを心がける必要があります。

■屋外に連れ出す場合

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キャリーバックなどは熱がこもりやすいので、こまめに観察を行うこと。車内で愛犬だけにしない、運転中もなるべく涼しい環境を作ること。水分をまめに取らせる、そして散歩時は直射日光をさける、日中の散歩は控え、早朝か夜にしましょう。


最後に、重要なことは愛犬をなるべく涼しい場所にいさせてあげることです。命の危険性もある熱中症ですので、しっかりと管理をしましょう。

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