いろいろなものをおもちゃにして遊んでいる猫の姿は、とてもかわいいですよね。しかし、何かで遊んでいるうちに、誤って飲み込んでしまうことも少なくありません。
誤飲・誤食は、人の赤ちゃんでも注意しなければなりませんが、猫を飼う上でもちゃんと対策しておく必要があります。
今回は、注意しておきたい猫の誤飲・誤食とその対策についてご説明します。
■命を落とすケースもある猫の誤飲・誤食
猫はごはんを食べると、口、食道、胃、小腸、大腸の順で流れ、最終的にうんちとなります。
しかし、ごはん以外のものを飲み込んでしまった場合、どこかで詰まってしまったり、消化器官を傷つけてしまったり、中毒を引き起こしたりすることがあります。
命を落とすケースもあるので、異物の誤飲・誤食には十分に注意しなければなりません。
■注意しておきたい誤飲・誤食の例
猫の口の中に入るものであれば、なんでも誤食してしまう恐れがあります。異物の例を挙げるときりがないですが、頻度や危険度を基準として、獣医師の筆者が飼い主さんに特に覚えておいてほしいものについて紹介します。
・ひも状、糸状のもの
ひも状や糸状のものは、危険度の高い異物といわれています。なぜなら、ひも状や糸状のものは腸を裂く可能性があり、腸が裂けた場合には腸内の細菌がお腹の中に漏れ、腹膜炎を引き起こすからです(※1)。
命を落とすケースも多いので、ひも状や糸状のもので遊ばせる場合は細心の注意を払うようにしましょう。また、誤って飲み込んでしまった場合には、すぐに動物病院に連れて行くのが良いでしょう。
・猫用おもちゃ
猫用のおもちゃは、猫の興味を引き、遊んでいる時間が長くなることから、誤って全部飲み込んでしまったり、破片を飲み込んでしまったりすることが懸念されます。
大きさや形状によりますが、体内のどこかで詰まってしまうことも少なくありません。特にぼろぼろになってしまったおもちゃは、壊れて一部を飲み込んでしまう可能性があるので、定期的におもちゃは取り換えるようにしましょう。
・人用の医薬品
医薬品は用量を超えて飲んでしまった場合、副作用が出てしまう可能性があります。体重や体格の大きさが用量の基準となるので、人よりもはるかに小さい猫が人用の医薬品を飲んでしまった場合、中毒を起こしかねません。
また、動物種によって薬の代謝の仕方が異なるため、薬の種類によっては少しの量でも猫に中毒を引き起こす可能性があります。医薬品を猫の目の届く範囲には置かないように注意しましょう。
・観葉植物
観葉植物の中には、危険なものがたくさんあります。
意外に知らない飼い主さんも多いのですが、ユリは猫にとって非常に危険です。猫がユリの葉などを食べると、腎臓に致命的なダメージを与えるため、致死的であるといわれています(※2)。
獣医師の立場からすると、猫を飼っているのであれば、ユリを家に置くことは禁物です。ユリ以外にも中毒を引き起こす観葉植物はたくさんありますので、十分に注意してくださいね。
■予防と対策
誤飲・誤食を予防するために、猫が口に入れそうなものを、猫の手の届く範囲に置かないことが重要です。猫は高いところにも登れてしまうので、机の上に置くこともオススメできません。
もしも、異物を誤って飲み込んでしまった場合には、早急に動物病院で診てもらいましょう。動物病院に行けば、催吐剤で吐かせるか内視鏡や手術で誤食したものを摘出することができます。
また、何かの一部を飲み込んだ場合には残りの部分を、同じものがある場合には同じものを持っていくと、獣医師さんの診断に役立ちますので、参考にしてくださいね。
■無理に吐かせるのは危険!自分では対処せず動物病院へ
ネット上には、食塩を用いれば自宅で吐かせることができると記載してあるものもありますが、非常に危険なので決してやらないようにしてください。食塩を用いると吐き気を催すことができますが、吐けなかった場合に食塩中毒になり、命を落とすケースがあります。
ほかにも猫に吐き気を催すものもいくつか紹介されていますが、異物はただ吐かせれば良いものではありません。鋭利なものなどは臓器を傷つけてしまう恐れがあります。
吐かせるべきなのか、摘出すべきなのかは、猫の状態、異物の種類、異物が存在する場所などをふまえて、総合的に判断するものなので、動物病院で診てもらうことが一番でしょう。
最も重要なことは猫の誤飲・誤食をしないように部屋の中を整理して、猫が飲み込む可能性があるものは片づけておくことです。
普段から飼い主さんが注意してあげていれば、不慮の事故を防ぐことに繋がります。ぜひこの記事を参考に普段の生活から猫の健康に気をつけてあげてくださいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考・画像】
※1 「獣医内科学 第二版」(文永堂出版)
※2 J Am Anim Hosp Assoc, 2011 ;47(6):386-90
※ mik ulyannikov, kosmos111, Ingus Kruklitis, Deyan Georgiev / Shutterstock
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