あなたの猫は普段どこで生活していますか? 最近では猫の完全室内飼いが徹底されてきているため、外で猫を飼っている飼い主さんは少なくなったかもしれません。
しかし、暖かい時期には室内飼いであっても、ノミやダニを代表とする寄生虫に感染するリスクがあります。草むらなどに行かなくてもいつの間にか侵入し、アレルギーなどの症状を引き起こすノミやダニ。猫を室内で飼っていても注意が必要なのです。
そこで今回は、獣医師の筆者がノミやダニの原因や対処方法をご紹介します。
■ノミやダニってどうやって猫に寄生するの?
はじめに、ノミやダニがどうやって猫に寄生するのか、生態について理解しましょう。外部寄生虫のなかでも厄介な点とされているのは“吸血”すること”です。
ノミは高く飛び上がることができるため、動物の体温や呼吸による二酸化炭素を察知すると、待ち構えていたように飛びつき身体に付着します。
ダニはジャンプするイメージは無いかもしれませんが、草むらなどに潜み、動物の存在を察知すると草の先端に上って待ち構えます。動物が近づくとタイミングよく飛びついて身体に付着します。
どちらも無駄な力を使わずに、簡単に動物の体に付着することができるような能力を備えています。人間も半ズボンや裸足にサンダルなどの軽装では、簡単に吸血される可能性があります。
いったん身体についてしまえば、毛のなかに潜り込み吸血するのは簡単です。ノミは身体に付着してから8分以内に吸血を開始し、48時間以内に産卵します。ノミの成虫の寿命は約1か月ほどですが、その間吸血、産卵を繰り返します。
猫の身体の表面にいるノミは成虫だけで、卵や幼虫、さなぎは室内などの他の場所に潜んでいます。ノミは一日あたり数十個以上産卵することもあり、もし成虫を見つけたら、猫の周辺には何万匹もの成虫予備軍が潜んでいると言っても、過言ではありません(※)。
■初夏から秋にかけては「マダニ」に気をつけて!
ダニの場合は種類によって生態に差がありますが、初夏から秋にかけて気をつけなくてはならないのが“マダニ類”です。
以前は猫にはマダニは寄生しづらいと考えられていましたが、飼猫についたマダニにより飼い主さんが重傷熱性血小板減少症候群(SFTS)を発症して死亡したケースから、猫のマダニ対策の重要性が叫ばれるようになりました。
いずれの寄生虫も猫が痒みを訴えることで発見されますが、刺された時ではなくその後のアレルギー症状による皮膚炎などが重傷化してから動物病院を受診するケースも多く見られます。寄生虫そのものを発見できなくても、皮膚に異常を見つけたらできるだけ早くに治療を受けましょう。
マダニは吸血することで大きくなるため、ブラッシング中や撫でている時に発見できる可能性があります。ノミの場合は、背中からお尻にかけて毛をかき分けると、毛の根元付近に砂のような黒い粒々を見つけることで発見できます。この粒々が実はノミのフンなのです。吸血すると必ずフンをしますから、寄生していればフンを探すことができるはずです。
寄生虫に吸血されると、全身にかゆみや湿疹が出ることもあれば、耳介や鼻の頭にだけボツボツができることもあります。蚊に刺された場合もこの様な症状が出ます。いずれの場合も皮膚炎を見つけたら治療が必要になります。また、寄生虫を発見しても決して指で潰したりしないでください。虫の体内から卵が拡散してしまう恐れがあるからです。
■感染に気づいたら獣医師の診断を受けよう!
寄生虫の感染が疑われたら、まずは駆除が必要です。市販のノミ駆除薬は成分量が不足したり、マダニには効かなかったりするので、獣医師の診察を受けてから処方してもらいましょう。皮膚炎がある場合には、アレルギーや感染に対しての治療も必要になります。
寄生虫疾患はかゆいだけでなく、ウイルス感染や消化管寄生虫の感染を引き起こす可能性があります。治療後も感染を防ぐために、定期的に予防薬を投与することが大切です。毎月飲ませたり身体に付けたりするタイプや、3ヶ月効果が持続するタイプなど、猫の性格などに合わせて処方してもらいましょう。
犬と比べて外に出ない猫は感染しないと思われがちですが、注意が必要なことに変わりはありません。人間と接触する機会が多い猫の方が、人間への病気を伝達してしまうリスクがあると考えた方が良いかもしれません。
また、人間が寄生虫を衣服などに付けて家の中に持ち込む可能性もあります。流行するシーズン中はしっかり予防し、辛い思いをさせないようにしてあげましょうね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考・画像】
※ 犬猫に寄生するノミ-その生態と環境対策を伴った駆除法-(動薬研究)
※ Svetlana Popov, kaminov74, Nitikorn Poonsiri, ANURAK PONGPATIMET / Shutterstock
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