猫の祖先は、一般的には砂漠地帯で暮らすリビアヤマネコだと考えられています。よって、猫は比較的乾燥した環境に慣れていると思われますが、その一方で、筆者は日本の冬のように、乾燥に加えて寒さも感じる環境では、それら環境が原因となって体調を崩す猫を診察することがあります。
そのため、猫の健康を維持するためには、温度だけでなく乾燥対策も役立つと思います。そこで今回は、冬場の猫の乾燥対策についてお伝えします。
■鼻炎や口内炎を持つ猫や高齢猫は要注意!?
現在のところ、乾燥と呼吸器や口腔内の病気、あるいは皮膚の病気との直接的な因果関係は知られていません。しかし、慢性的な鼻づまりや口内炎、歯周病など、呼吸器や口腔内の持病、あるいは慢性的な皮膚病を持っている猫では、症状が悪化する可能性があります。
鼻づまり、つまり慢性鼻炎は、過去に伝染性鼻気管炎ウイルス感染症にかかったことがある猫に多く見られ、感染症自体は治ったものの、鼻づまり症状がずっと後遺症として残ってしまうことがあります。
また口内炎は、成猫のほとんどが歯周病に罹っているため発生リスクが高く、また治療してもなかなかよくならない難治性口内炎や、猫後天性免疫不全症候群(猫エイズ、FIV)よる口内炎など、非常にやっかいな病気もあります。
これらなかなか改善しない症状を持つ猫の場合、空気の乾燥が症状を悪化させる可能性があります。また、これは筆者の経験ですが、高齢の猫では免疫力の低下からか、より乾燥に対して敏感に反応しているように感じています。
さらには、慢性鼻炎と口内炎を併発している猫では、鼻づまりで口呼吸になり、それが口腔内を乾燥させ、より口内炎を悪化させている要因になっているのではと考えています。
■猫を冬の乾燥から守るための3つの対策
猫を乾燥から守るためには、
・加湿
・持病の治療
・免疫力の向上
上記のような対策が有効である可能性があります。
加湿については、加湿器を使用する、洗濯物を室内に干す、濡れたバスタオルなどを吊るしておくなどの対策があります。加湿する際の注意点としては、室内で結露が生じやすくなります。結露はカビの原因となり、今度はカビが猫の健康に悪影響を与えるリスクになりますので、加湿する際には、結露対策も行うようにしてください。
また、最近ではアロマオイルを使った加湿器もありますが、アロマオイルの中には猫にとって中毒を引き起こすものもありますので、注意が必要です。
また、慢性鼻炎や口内炎は、なかなか完治が難しいため、治療を諦めている飼い主さんもいるかもしれません。しかし、様々な治療によって、今よりも症状を軽減できる可能性もあります。特に口内炎に関しては、歯周病の治療や抜歯などの処置で改善することも多々あります。持病を持つ猫では、一度、動物病院に相談してみることをおすすめします。
最近では、猫のサプリメントも高品質なものが扱われるようになり、免疫ケアに役立つサプリメントを使うことで、乾燥による悪影響を軽減できる可能性があります。筆者の経験では、オメガ3やオメガ6など不飽和脂肪酸を含むサプリメントや、アガリクス製剤で毛艶や活発さが向上したり、口内炎が軽減したりするケースがあります。
他には、ファンヒーターのように、温風に直接当たると皮膚のカサカサが目立つようなケースもあります。なるべく猫に直接温風を当てないようにすることが大切ですが、猫用の保湿剤を用いたスキンケアも乾燥対策に役立ちます。
筆者の経験上、寒さと乾燥が目立つ冬は、猫にとっても鼻炎や口内炎などで受診する猫が増えるように感じています。なるべく普段からの加湿や持病の対策を行い、健康を増進させるためのサプリメントなどを上手に使って、猫の健康維持に努めてあげてくださいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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