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これだけは知っておきたい!犬の「免疫」の基本と免疫系の疾患について

吉本翔

獣医師
吉本翔

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これだけは知っておきたい!犬の「免疫」の基本と免疫系の疾患について

誰もが知る“免疫”という言葉。「免疫力を高めよう!」「免疫力が低下すると風邪をひくよ」といったフレーズはよく耳にしますよね。もちろん免疫は生命維持に不可欠ですが、ときに免疫が身体に悪さをすることもあるそう……。

そこで今回は、犬の免疫の基本と、代表的な犬の免疫系の病気について、獣医師の吉本翔先生に解説していただきました!

■犬の免疫について

これだけは知っておきたい!犬の「免疫」の基本と免疫系の疾患について
出典:https://www.shutterstock.com/

免疫は、体内に侵入した“異物”を排除する、身体の防御反応です。免疫という言葉が、「疫病(伝染病)から免れる」ことを意味することから、異物の代表例として微生物(細菌やウイルスなど)が挙げられます。

環境中には膨大な種類の微生物が存在していますが、健常な犬であればほとんどに問題になりません。それは、犬の免疫機構が、体内に侵入した微生物の感染や増殖を防いでいるからです。

■犬の免疫系の病気について

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免疫は身体にとって大切な機能なのですが、免疫がときに身体に悪さをすることがあります。免疫に関連した犬の病気で、有名なものをいくつか取り上げて紹介します。

(1)アレルギー

人だけでなく、犬もアレルギーになります。アレルギーは、本来病原性を示さない環境中の物質に対して、過剰に免疫反応を示してしまう状態のことを言います。アレルギーを引き起こす物質は様々。環境中に存在するものとしては、ハウスダスト、ノミ・ダニ、花粉などが挙げられます。また、犬にも食物アレルギーはありますし、薬やワクチンにアレルギーを示す犬もいます。

犬で見られる主なアレルギー性疾患には、蕁麻疹(じんましん)、血管浮腫、アナフィラキシー、ノミアレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などが挙げられます。 

(2)免疫介在性溶血性貧血、免疫介在性血小板減少症

本来、免疫は“異物”に特異的に働くものですが、時に免疫細胞が自分自身の細胞を攻撃してしまうことがあります。免疫介在性溶血性貧血は、免疫細胞が赤血球を攻撃して貧血を引き起こす病気です。赤血球(血液中で酸素を運ぶ重要な細胞)が壊されることによって、身体に十分な酸素を運ぶことができなくなってしまいます。

重度の貧血は命の危険があります。粘膜が白くなっている場合には、貧血が疑われます。口の粘膜は比較的確認しやすいので、日ごろからチェックしてみてくださいね。

免疫介在性血小板減少症は、免疫細胞が血小板を攻撃・破壊する病気です。血小板は、血を止める働きを持っているため、一度出血すると血が止まりづらくなります。出血するとなかなか止まらない場合、紫斑(あざ)がみられる場合には、この病気が鑑別の一つに挙がります。 

(3)甲状腺機能低下症(リンパ球性甲状腺炎)

甲状腺機能低下症は、犬でよく見られる内分泌性疾患のひとつです。この病気に罹患した犬では、元気がない、活動性が低下する、食欲があまりないのに体重が増加する、毛が抜けるなどといった徴候を示します。

この病気の発生メカニズムは、まだ詳しくは分かっていないようですが、様々な免疫細胞が甲状腺に集まって、甲状腺の組織を破壊することも原因の一つではないかと考えられています。

■対処法や未然に防ぐ方法

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アレルギーへの対処法は、原因となるアレルギー物質に接触させないことが基本です。ハウスダストや花粉などの環境中物質が原因の場合には、定期的に部屋をキレイにすること、空気清浄機などを置くことで多少の改善が期待できます。

また、薬やワクチンを打ったあとは、アレルギー反応が起こらないかどうかをしっかり観察しておくことが重要です。

残念ながら、アレルギー以外の免疫系疾患については、事前に対策することは難しいといえます。何か異常な徴候を示している場合には、近くの動物病院で診てもらうようにしてくださいね。 

犬の免疫の基本と免疫系の病気をいくつか紹介しました。今回取り上げた病気は、免疫系の病気のほんの一部にすぎません。この記事をきっかけに、ぜひ犬の免疫系の病気を知ってもらえればと思います。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※ Michael J. DAY. (2010). Veterinary immunology principles and practice 2nd edition. CRC Press.

※ Richard W. Nelson, et al. (2008). Small animal internal medicine 4th edition. Mosby.

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※ kobkik, Kappri, BIGANDT.COM, Nina Buday / Shutterstock

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