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【獣医師執筆】犬だけじゃない!猫も気をつけたい「フィラリア症」について

ホリスティック獣医Sara

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【獣医師執筆】犬だけじゃない!猫も気をつけたい「フィラリア症」について

みなさんは“フィラリア症”という言葉を聞いたことはありますか? 動物病院の待合室で、壁に貼られているポスターを見かけたことのある方もいると思います。

そこで今回は、獣医師である濱田真由美先生に、フィラリア症について分かりやすく解説いただきました!

■フィラリア症ってなに?

犬だけじゃない!猫も気をつけたい「フィラリア症」について
出典:https://www.shutterstock.com/

フィラリアというのは、蚊によって媒介される寄生虫(Dirofilaria immitis:ディロフィラリア・イミティス)のことで、別名(Heartworm(ハートワーム):犬糸状虫)と呼ばれることもあります。

この寄生虫が身体に寄生することによって引き起こされる症状を“フィラリア症”と言います。フィラリア症にかかるのは犬だけと思っている方が多いかもしれませんが、実は犬だけではなく、猫や人間も罹ることがあると報告されています(※1)。

■犬と猫のフィラリア症はここが違う!

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(1)すでにフィラリアに感染している犬の血液を蚊が吸うときに、血液中に潜む幼虫が蚊の体内に一緒に吸引されます。

(2)蚊の体内で幼虫が成長していき、10~14日くらい経つと感染することができるようになります。

(3)同じ蚊が猫の血液を吸ったときに、成長した蚊が猫の体内に入り込みます。

(4)蚊の幼虫は猫の血管の中で成長します。ただし、猫の体内だと犬のようにはうまくいかず、多くは成虫になれずに死んでしまいます。

(5)7~8ヶ月経つと、生き残ったごくわずかな成虫が猫の心臓や肺の血管にたどり着きます。

(6)寄生している寄生虫の数は少なくても大きなダメージを与え、猫に突然死を引き起こすことがあります。

■どんな症状?猫のフィラリア症

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・苦しそうな呼吸

・咳

・嘔吐

・すぐに疲れる

・食欲がない

・体重が減ってくる

など……

咳が慢性的になかなか治らなくて同じような症状がある場合、一度きちんと調べてもらったほうがよいかもしれません。動物病院で診察を受けると、早い段階で心臓の雑音や不整脈が発見されることもあります。

■犬よりも難しい!猫のフィラリア症の診断

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犬の場合は血液検査(抗原検査)ですぐに診断できるのですが、猫の場合そうはいきません。なぜなら、犬の体内では寄生虫がたくさん増えることができるけれども、猫の体内では寄生虫は少ししか成虫になれずに多くの幼虫は死んでしまうからです。

体内の寄生虫の数が少ないと、検査してもきちんと感知されないことがあります。そのため、猫の場合は血液検査(抗原・抗体検査)のほか、レントゲン検査や超音波検査などが必要になり、また感染した時期によっても結果が変わるため、一度のみならず何度も検査しなければ見つからないこともあります。

■治療すれば治る?

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寄生する場所が心臓や肺の血管の中なので、一度寄生した寄生虫を取り出すことは非常に困難です。手術により取り出したとしても傷ついた心臓や肺を回復させることは非常に難しく、薬で寄生虫を殺しても、死んだ寄生虫が肺の奥に流れて症状が悪化することもあるため、どちらも危険を伴います。

幸いなことに、猫の体内では成虫になった寄生虫が長くは生きられないため、緩和治療を行いながらそのまま成虫が寿命を終えて自然に死ぬのを待つこともあります。ただし、その場合でも死んだ成虫が肺に残るため、咳などの症状は残ってしまいます。

■予防するためにはどうしたらよい?

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外に出ている猫は、ずっと室内で暮らす猫よりもフィラリア症に3倍も多くかかりやすいと言われています(※2)。米国フロリダの研究結果では、猫630頭中15%の猫でフィラリアの抗体が陽性だったとの報告もあります(※3)。

同じような抗体検査の結果では猫白血病ウイルスの場合が5%、猫エイズウイルスの場合が5%のため、比較すると猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスよりも非常に高い確率でフィラリアに感染している可能性があるということです。

カナダにおける調査では猫のフィラリア症はまだ発生していないとのことですので、蚊が生息する南の地域のほうがよりリスクが高いと言えます。そのため、予防策としては蚊に刺されないようにすることが大きなポイントと言えるでしょう。

その他、外に出る場合はどうしても蚊に刺される機会が増えてしまいますので、フィラリア症予防のための薬を投薬することが推奨されます。特に、南の地域に住んでいる飼い主さんは考慮してくださいね。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 Devin M, Akshay A, et al. (2016). Men’s best friend: How humans can develop Dirofilaria immitis infections. IDCases; 4:43-45.

※2  Levy JK, Burling AN, et al. (2017). Seroprevalence of heartworm infection, risk factors for seropositivity, and frequency of prescribing heartworm preventives for cats in the United States and Canada. J Am Vet Med Assoc; 250(8): 873-880.

※3 Levy JK, Snyder PS, et al. (2003). Prevalence and risk factors for heartworm infection in cats from northern Florida. J Am Anim Hosp Assoc; 39(6): 533-537.

【画像】

※ Chonlawut, Top Photo Engineer, bombermoon, Kucher Serhii, thodonal88, ANURAK PONGPATIMET, Kravtzov / Shutterstock

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