猫と暮していらっしゃる方は、“スタッドテイル=尾腺炎”という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? 英語では“stud tail”と書きます。studとは鋲(びょう)のこと。つまり、鋲のようなしっぽという意味です。
猫の尾の付け根近くには、たくさんの皮脂の分泌腺があります。この腺がなんらかの理由で炎症したり、皮脂の分泌が増加したりすると、べたべたとしたりにおいが出たりします。
二次感染になり炎症が悪化すると皮膚の滑らかさが失われ、ぼこぼことした手触りになり、その様子が鋲に似ていることからこのような名前がつけられたそうです。
スタットテイルについて正しい知識を知り、大切な愛猫の健康な皮膚と被毛を保たせてあげたいですよね。そこで今回は、猫に見られるスタッドテイルについて、獣医師の牧口先生に考えをお伺いしました。
■なぜ尾の付け根に分泌腺があるの?
猫は様々なマーキング方法を持っている動物です。そのうちの一つ、フェイシャルマーキングとは、猫の額、顎にある特有の分泌腺を、物や家族にスリスリとこすりつけるマーキングです。ハッピーマーキングとも言われ、猫がハッピーなときに行うマーキングの一種です。
においをこすりつけて「これは私のものなの」ということを伝えていると考えれば良いかと思います。同じ役割として尾の付け根にも分泌腺があります。猫の大切なコミュニケーションツールだと言ってもいいでしょう。
■なりやすい猫種は?
スタッドテイルは雄性ホルモンに関わりがあるのではと推測されており、未去勢の男の子、かつ純血種の長毛猫に多いと言われています。ただ、普通の日本猫や女の子の猫でも見られることがあるので、一概には言えない可能性があります。
症状の把握の仕方としては、尾の付け根を見て毛がべとついていたり、黒ずんでいたり、また炎症し不快を感じると患部をなめるようになるので、そのような症状が出ているときには、スタッドテイルになっているかどうかをお医者さんに確認してみるといいと思います。
長毛の猫は短毛の猫と比較すると皮膚疾患が見つけづらいため、日頃から被毛と皮膚のお手入れをしてあげることで、早期に症状を発見してあげましょう。
■原因と予防法は?
残念ながらスタッドテイルの原因は、はっきりと解明されていません。しっぽの部分がべとついている程度ならまだよいですが、皮膚の炎症が悪化してしまうと猫も不快感を覚え、患部をなめるようになります。私の経験ではその結果、かえって炎症が進み、不快感からストレスを感じてしまう猫も多いのではないかと思います。
日頃からよくブラッシングをして、皮膚と被毛を常に清潔に保つようにしてあげてください。また、雄性ホルモンが影響しているのではと推察されている症状でもあり、男の子の場合は去勢手術をすることで、スタッドテイルの発症を改善することが期待できるのではないでしょうか。
■具体的な対処法について
対処法は皮膚の炎症の状況によって異なりますが、一般的な話として皮膚や被毛に関わる問題はまず患部を清潔に保つことが大切です。患部が清潔に保たれていない状態で薬を塗布しても、薬の効果が限定的となる可能性があります。
私がおすすめしている方法としては、バリカンやはさみなどで患部の毛を短くし、動物用のシャンプー、またはトリマーが愛用している動物用のクレンジングオイルを使用すると、綺麗に余分な皮脂が取り除かれべとつきやにおいがなくなります。
患部をよく乾かし薬を塗布することもあります。細菌の二次感染があり炎症がひどい場合は、内服薬が必要な場合もあります。ひどくなる前にお医者さんと相談して対処をしてあげましょう。
猫は毛づくろいをするため、犬のように定期的にシャンプーをする必要はあまりありませんが、スタッドテイルの再発を防ぐために、患部を清潔に保つことが大切です。ねこちゃんが暴れてしまい、上手に洗浄や薬の塗布が難しい場合は、動物病院にお願いしてみましょう。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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