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【獣医師執筆】犬の「ドライアイ」!気をつけたい2つのパターンとは?

西原克明

獣医師
西原克明

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【獣医師執筆】犬の「ドライアイ」!気をつけたい2つのパターンとは?

※2021817日情報更新

人の場合は、「目が乾く」「コンタクトレンズをしていると目がゴロゴロしてくる」など、

ドライアイによる問題を耳にしますよね。実は、犬にもドライアイがあることを知っていますか?

しかも犬の場合は、生涯治療が必要なケースもあるそう……。そこで、今回は犬のドライアイについて解説します。

■犬のドライアイで気をつけたい2つのパターン

犬が目を掻いている写真

出典:https://www.shutterstock.com/

犬のドライアイは“乾燥性角結膜炎”とも呼ばれ、涙の成分が変化したり、あるいは涙の量が減ったりしてしまうことで、角膜や結膜に炎症が起きている状態のことを指します。

犬のドライアイには、軽度~重度のものまであり、さらには短時間で病状が進行する急性の乾燥性角結膜炎もあります。

(1)軽度のドライアイ

軽度のドライアイでは、目をショボショボしたり、結膜(まぶたの裏側、いわゆる赤目と呼ばれる眼瞼結膜と、目の白い部分、いわゆる白目と呼ばれる眼球結膜)が赤く腫れて充血していたりします。その際、犬が手で顔周りを掻く仕草や、顔を地面に擦り付ける仕草が見られることもあります。

また、ドロっとした目やにが見られ、経過が長いものでは、涙やけが見られることもあります。目やにについては、白っぽいものから茶色っぽいものまで、様々なものが見られますが、緑や黄色の目やにが見られる場合は、細菌感染を併発している可能性があります。重度のドライアイに移行してしまうため、早急な治療が必要になります。

特に涙やけに関しては、一見するとドライアイではなく、逆に涙の量が増えているように見えることがあるため、後述するような検査をしっかりと行い、ドライアイなのかどうかを正しく確かめることが重要です。

(2)重度のドライアイ

重度のドライアイでは、軽度から進行することで、前述のとおり細菌感染を併発し、緑や黄色の膿性の目やにが見られるようになります。さらに角膜炎が進行すると、眼球の表面にある角膜が白く濁ったり、あるいは血管が伸びてきたり(血管新生)、本来透明であるはずの角膜に黒いシミのようなもの(色素沈着)ができたりするようになります。

角膜炎は、重症化すると角膜びらんや角膜潰瘍など、痛みを伴う非常に厄介な状態に陥ることがあるため注意が必要です。急性のドライアイでは、軽度から重度への進行が早く、筆者の個人的な経験では、中には数日で角膜潰瘍を引き起こすケースもあるため、様子を見ることなく、早急な受診と治療が必要になります。

■犬のドライアイは意外に多い?よく見られる犬種について

パグが走っている写真
出典:https://www.shutterstock.com/

犬のドライアイでは、ウエストハイランド・ホワイトテリア(ウェスティ)、アメリカン・コッカースパニエル、キャバリア・キングチャールズ・スパニエル、シーズー、パグなどが好発犬種疾患が発生しやすい犬種)として知られています。ウェスティ以外は、顔の大きさに比べて目が大きい犬種によく見られるように思います。

もちろん、これらの犬種以外でもドライアイを認めることがありますし、年齢とともにドライアイが見られるようになることもあります。

■犬のドライアイの診断は、しっかりした検査が重要

気をつけたい2つのパターンとは?犬の「ドライアイ」について徹底解説
出典:https://www.shutterstock.com/

犬のドライアイは、他の病気と似たような症状が見られますので、しっかりとした眼科検査を行い、正しい診断を受けることが重要です。

特にシルマー試験(STT)は、涙の量をチェックするための重要な検査となります。さらには、角膜の傷の状況を確認するためのフローレス試験、細菌感染の有無や細菌の形状を確認するためのスワブ検査など、角結膜炎の進行程度や併発している病気の有無を知るために、総合的な眼科検査が必要になります。

犬のドライアイは、比較的多く見られる病気のため、中には検査をせずに、治療を開始するケースもあります。しかし、犬のドライアイの多くは免疫異常が見られ、特殊な薬剤が必要になります。

もちろん、神経やホルモンの異常、あるいは薬の副作用など、免疫異常以外の原因でも犬のドライアイは発生しますので、そういった場合は治療方法が変わります。

その際、間違って免疫異常で使う薬を使い続けると、かえって病状を悪化させてしまうものもあります。少しでも治療のリスクを低くするためにも、きちんとした眼科検査が重要になります。

■治療は目薬が中心!日頃のお手入れも重要

チワワが目薬を指している写真
出典:https://www.shutterstock.com/

犬のドライアイの治療は、多くが目薬を使います。中には複数の目薬が必要になることがあります。犬のドライアイのほとんどは、免疫の異常が関係していると考えられており(免疫介在性疾患)、シクロスポリンと呼ばれる薬剤をはじめとした“免疫抑制剤”が使用されます。

また、細菌感染に対して抗生物質を使用したり、治療効果が現れるまでの間、人工涙液やヒアルロン酸ナトリウム、眼軟膏といった目を保護するための薬を使用したりすることもあります。

ドライアイの原因が、ホルモン異常や薬剤の副作用によるものであれば、原因を改善することで、ドライアイも良くなる可能性があります。しかし、免疫介在性のドライアイでは完治が難しいタイプも多く、その場合は、免疫抑制剤の他に、人工涙液などの目を保護するための点眼治療を長期的に続けます。

犬のドライアイは、進行すると感染や角膜を傷つける可能性があります。目やにや目の充血など、ドライアイを疑う症状が見られた場合には、動物病院を受診するようにしましょう。

またドライアイの治療では、長期間の点眼が必要になることも多々あります。大切な犬の目を守るためにも、治療をしっかりと続けるようにしてくださいね。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※ 余戸拓也監修(2014年)『よくみる眼科疾患58』インターズー.

【画像】

※ Csanad Kiss, Anna Hoychuk, Lari Cavalier, Ermolaev Alexander, 135pixels, / Shutterstock

   

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