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【獣医師執筆】犬には「血液型」がたくさんある?基礎知識と輸血の現状・注意点について

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【獣医師執筆】犬には「血液型」がたくさんある?基礎知識と輸血の現状・注意点について

突然ですが、みなさんの血液型は何型ですか? A型は几帳面でO型は大雑把など、性格や相性などを占う血液型占いの好きな方もいると思います。

では、愛犬の血液型について気になったことはありませんか? わんちゃんの血液型は人よりも多く、複雑に成り立っています。

そこで今回は、獣医師である筆者が、複雑な血液型についてわかりやすく解説していきます。

■そもそも血液型ってなに?

犬には「血液型」がたくさんある?基礎知識と輸血の現状・注意点について
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血液型というのは、赤血球の膜に特定の抗原(こうげん)と言われるものがあるかないかで区別されています。抗原というのは、抗体と結合する物質のことです。

例えば、人の血液型では、A型の赤血球の表面にはA抗原と呼ばれるものがあり、B型の赤血球の表面にはB抗原と言われるものがあります。AB型の場合はA抗原とB抗原両方をもっていますが、O型の場合は両方とも持っていません。

輸血を行うときに一般的に重要とされているのは、同じ血液型の血液を身体に入れなければならないということです。もともと身体には、自分の体内にある物質とは違う別のものが身体のなかに入ってきたときに、それを攻撃して排除しようとするしくみがあります。

そのため、A型の人にB型の血液を輸血すると、その血液の中にB抗原というA型の血液の中にはない物質があるために、それを攻撃し始めてひどい副作用が起こります。

ただし例外があり、O型の血液にはA抗原もB抗原も含まれないため、A型、B型、AB型どの血液型からも攻撃されない特殊な型となります。

そのため、本来は同じ血液型の血液を輸血するのが基本ですが、血液が足りないなどやむを得ない状況の際に、O型の血液を利用することができます。

■犬にはどんな血液型があるの?

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それでは、わんちゃんの場合はどうでしょうか? 人の場合は、主に4つ血液型から判断されるABO式ですが、わんちゃんの血液型の基本は7種類(DEA1・3・4・5・6・7・8)となり、赤血球の膜についている抗原の種類によってさらに細かく分類される、DEA式と言われるシステムが採用されています。

DEAというのは、Dog Erythrocyte Antigen(犬赤血球抗原)の頭文字をとったものです。割合が多いのはDEA1型、4型と7型で、そのなかでも1型は更に3つ(1.1・1.2・1.3)に分かれていますが、輸血を行う上で最も重要とされているのは、DEA1.1型です(※1)。

血液検査を行うと、DEA1.1+(陽性)といった表記や、DEA1.1-(陰性)などといった結果が得られますが、これは血液中の赤血球の膜に抗原がある場合が陽性(+)、ない場合が陰性(-)という意味です。

例えば、2017年にイタリアで行われた調査によると、DEA1型(陽性)のわんちゃんは全体の61.2%で、さらに、ゴールデン・レトリバーの75.2%、ラブラドール・レトリバーの65.3%、ダックスフンドの74.2%、ヨークシャー・テリアの63.0%DEA1型(陽性)が見られたと報告されています(※2)。

大型犬の血液はたくさんとれるため、供血犬(ドナー)として輸血に協力してもらうことが可能ですが、輸血を受けるわんちゃん(受血犬:レシピエント)の血液がDEA1.1陰性である場合に、DEA1.1型陽性の血液を輸血してしまうと、ひどい副作用が起きてしまうため、要注意と言われています。

そのため、輸血を行う場合には必ず事前に血液型を確認する必要があります。

■じつは厳しい?輸血の現状

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私たち人の場合は、病気によって輸血が必要になったときに、献血システムによって必要な血液を受けられるようになっています。しかし、わんちゃんの場合は、そのような全国的な献血システムというのは整っていない状況です。

そのため、各動物病院で独自の献血システムをそれぞれ設けていますが、認知度も低く知らない方が多いために上手く運営されていない場合があります。

その他、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と中央大学理工学部との共同研究グループが、犬用人工血液の合成を成功させており、輸血のための血液不足の問題解決に向けた期待が高まっていますが、まだ実用化されていません(※4・5)。

■さまざまなメリットがある献血システム

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イギリスやアメリカなどの先進国では、ペット用の血液バンクシステムが日本よりも整っています。特にイギリスで供血犬(ドナー)となるのは、一般的に家庭で暮らしている大型犬です。一度採血された血液は、適切な処理を受ければ21~42日間の保存が可能で、血液バンクに常時置かれています(※3)。

動物福祉の観点から考えると、人の献血システムのように行われているイギリスの事例を参考にして、日本でもそのようなシステムが今後整ってくるといいですね。

献血すると、一般的な健康チェック、血液検査や獣医師からのアドバイスが無料で受けられて、おやつやおもちゃなどがもらえるため、メリット盛りだくさんです。

このあたりは、日本の各動物病院で立ち上げている献血システムでも同様に行っていることが多いため、興味のある方はかかりつけの動物病院に確認してみるとよいかもしれません。

わんちゃんの血液型についてお話しました。種類が多く、人とは違うことが理解いただけたかと思います。また、献血・輸血については、みなさんの愛犬が関わってくることもあるかもしれません。

ぜひ今回の記事を参考に、血液型について広い知識を身に着けてくださいね!

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【参考】

※1 Acierno MM, Raj K, et al. (2014). DEA 1 Expression on Dog Erythrocytes Analyzed by Immunochromatographic and Flow Cytometric Techniques. J Vet Intern Med. 28(2), 592-598.

※2 Anyela AMV, Alessandra G, et al. (2017). Prevalence of Dog Erythrocyte Antigen 1 in 7,414 Dogs in Italy. Vet Med Int. 2017: 5914629.

※3 Transfusion information and guidance: Blood product storage. Pet Blood Bank UK(A charity supported by Vets Now).

※4 中央大学国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(2016)『イヌ用人工血液の合成と構造解析に成功=輸血液不足の解消に期待、世界で需要=』宇宙航空研究開発機構.

※5 Kana Y, Kyoko Y, et al. (2016). Artificial Blood for Dogs. Sci Rep. 6: 36782.

【画像】

※ Osadchaya Olga, Alexsey Valentinovich, Shedara Weinsberg, Mary Swift, michaelheim / Shutterstock

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