近頃はねこちゃんの飼育環境が改善され、ねこちゃんの寿命が伸びてきたように感じます。ペットフード協会の平成30年調査結果(※1)によれば、室内飼いのねこちゃんの平均寿命は15.97歳、室外へ出るねこちゃんは13.63歳です。
では、実際に長生きしているねこちゃんは、ずっと健康体なのでしょうか? 今回は、気になるねこちゃんの“老化現象”についてお話したいと思います。
■ねこちゃんのシニア世代は何歳から?

ねこちゃんと人の年齢の目安は表の通りです。おおむね8歳から10歳以上のねこちゃんをシニア猫と呼んでいます。16歳で人の傘寿(80歳)に当り、18歳は米寿(88歳)というわけです。
個体差がありますが、15歳前後になると多くのねこちゃんたちに本格的な老化現象が認められるでしょう。
■シニアねこちゃんのあるある行動とは

(1)じゃれなくなる
好奇心が減り、おもちゃであまり遊ばなくなります。
(2)寝てばかりいる
動きが不活発になり、寝ている時間が増えてきます。
(3)高いところに登れなくなる
ジャンプして高い所に乗ることができなくなります。
(4)多頭飼いにおける順位の変化
年下のねこちゃんに負けるようになり、序列が入れ替わることがあります。
■気をつけたい病気と症状

(1)関節炎
歩き方に異常が出たり、触ると痛がったりすることもあります。肘、膝、股関節に多発します。
(2)腎不全
シニアねこちゃんの死亡原因として、多い病気です。飲水量の増加、痩せてくる、脱水により毛並みがボソボソになる、嘔吐するなどが見られます。
(3)内分泌異常(糖尿病、甲状腺機能亢進症)
飲水量の増加、痩せるなどのほか、甲状腺機能亢進症では急に性格が変わったようになり、攻撃的になったり神経質になったりすることがあります。
(4)便秘
あまり運動しなくなったり脱水を起こしたりすると、慢性的な便秘を起こすことがあります。
(5)悪性腫瘍
体表面だけでなく、体内など目には見えない場所に腫瘍ができることもあります。
(6)口内炎・歯周病
フードを食べにくそうにしていたり、頭を傾けて食事をしたりします。また口臭が強くなります。
(7)脳・神経系の異常
てんかん様の発作を起こすことがあります。認知症では、部屋の中を歩き回ったり、大声で鳴いたりします。
■暮らし方や接し方

(1)遊んであげる
遊びに関心が薄くなってしまったねこちゃんも、時々遊びに誘いましょう。エネルギッシュな遊びでなくてもよいと思います。脳への刺激と、何よりも飼い主さんとのコミュニケーションとなります。
(2)温度管理に注意
体温調節が苦手になりますので、冷・暖房をうまく使って、室内を適温に保ってください。冬は、湯たんぽやペットヒーターを活用することもできます。
(3)入りやすいトイレにする
トイレのフチが乗り越えにくくなることがあります。ねこちゃんが使いやすいトイレにしてあげましょう。
(4)食事に注意
シニア用フードを選びましょう。また、動物病院には病状に合わせた処方食もあります。獣医師の診断を受けるとよいでしょう。
(5)安心できる場所をつくる
特に多頭飼いの場合、シニアねこちゃんが落ち着いてひとりになれる場所をつくってあげましょう。安心できる場所は、重要です。
筆者の37年間の臨床経験を振り返ると、昔のねこちゃんの寿命は、10歳以下であったと思います。室内飼いが増え、栄養バランスのよいフードが普及し、獣医療の進歩によって、長生きできるようになったのではないでしょうか。
ねこちゃんがシニア世代となってから、何年も一緒に生活できるようになったのは嬉しいことですね。異常を感じたら早めに診察を受け、ねこちゃんが最期まで豊かな生活を楽しめるようにしましょう。素敵な思い出をたくさん与えてくれるはずですよ。
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【参考】
※1 平成30年 全国犬猫飼育実態調査|全国犬猫飼育実態調査|一般社団法人ペットフード協会
※2 環境省_パンフレット「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」 [動物の愛護と適切な管理]
【画像】
※ 環境省
※ Suphaksorn Thongwongboot, Kristi Blokhin, Dmitry Sobolev, Karpova / Shutterstock
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