※2020年11月21日情報更新
柴犬は人気の犬種として、日本では常に一定の人気を保っている犬種です。日本古来の犬種であり国の天然記念物としても指定され、日本の歴史とは深く関係しています。日本人との歴史が深い柴犬について、現在は様々な研究も進んでいます。
しかしながら、行動診療科視点で見てみると、全国的にも“問題行動(特に攻撃行動)”の相談が多い犬種でもあります。筆者の病院では、常に1位、2位の診察件数の犬種です。
日頃から多くの柴犬の問題行動の診察を行っている筆者が、知っているようで知らない柴犬の飼い方をご紹介します。
■「柴犬」ってどんな性質?
そもそも柴犬とはどんな犬種なのでしょうか? 柴犬の性質を理解することで、必要なしつけが見えてきます。犬種としての特性について5つほどご説明します。
・かつての柴犬
昔は、小動物や鳥などの猟を手伝う猟犬や番犬として活躍していました。
・遺伝子レベルでの特徴
米国ナショナルジオグラフィック誌に発表された遺伝子レベルでの研究では、多くの犬種の中でも“オオカミ”に近い遺伝情報を持っていることが分かっています(※1)。また岐阜大学の研究によると、ゴールデンレトリバーとの比較では、新規探索行動が低いといわれています。つまり、柴犬は決まったことが好きで、変化を好まない傾向が高い犬種であるということになります(※2)。
・攻撃行動を起こしやすい
東京大学で調査された56犬種の行動特性のデータでは、全般的な攻撃行動のスコアは五つ星になっています。全ての攻撃行動がトップクラスになっています(※3)。
・警戒心の高さ
警戒心や縄張り防御のスコアもトップクラスになっています。非常に警戒心が高いことがわかります(※3)。
・「ひと懐っこさ」や「しつけのしやすさ」が低い
人と良好な関係を築く能力が低く、人へのひと懐っこさは最低レベルです(※3)。一般の愛玩犬とは対応方法が異なることを理解する必要があるでしょう。
■柴犬ではおさえておきたいしつけの基本
柴犬の性質が分かったところで、必要なしつけについてご紹介します。そもそもしつけは、“1つ1つルール”を作っていく作業です。柴犬は決まったことが好きな犬種ですから、自分から喜んで行動できるようなルールを教えていくことが重要です。必要なしつけについて、3つご紹介します。
ただし、すでに攻撃行動や問題行動が発現している場合は、専門家に相談しながら進めることが必要です。
・体罰は使わない
しつけるときは体罰を使わないことが重要です。体罰は、身体的にも精神的にも苦痛を与えてしまいます。他人に懐きにくい性質をさらに高めてしまい、人間不信になってしまうこともあります。体罰については、日本動物獣医行動研究会のHPにも声明文が発表されていますので、一読いただくとわかりやすいでしょう。
・子犬の頃は積極的に社会化を
元々警戒心が強く、新しい刺激を受け入れにくい性質があります。子犬の時代には、色々な刺激に対して楽しいイメージをつけながら経験させてあげることがとても重要です。
・安全グッズを教えておく
成長すると他人に対する攻撃性が発現することも予想されます。動物病院やトリミングサロンなどで触れない状況になってしまうと大変です。
このような攻撃行動が出現する前から、“口輪”、“エリザベスカラー”、“クレート(キャリーバッグやハウス)に入る”などの動作を楽しく教えていくと効果的です。
他人でも安全に対象の柴犬を扱うことが可能になり、犬の負担を軽減することもできます。フードやオヤツを使いながら、楽しく毎日少しずつ練習しておくことをおすすめします。
楽しく練習した毎日の日課、決まりごと、自分がよいと学習したことは、安心して受け入れてくれる傾向がある犬種です。柴犬と人が理解しやすいルールを、楽しく練習しながら作ってみてくださいね。
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【参考・画像】
※1 Heidi G. Parker.Genetic Structure of the Purebred Domestic Dog. Science, 2004,304:1160-1164
※3 武内ゆかり「はじめてでも失敗しない愛犬の選び方」(幻冬舎)
※ YAMATO / pixta
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