愛犬が、いきいきとドッグランなどの広場を駆け回る姿を見ると、飼い主さんも嬉しくなりますよね。犬が走るとき、爪と肉球は大事な役割を果たします。今回は犬の爪と肉球に関して筆者がよく見るトラブルと、おすすめのお手入れの方法について説明いたします。
■犬の爪・肉球の役割

犬は元来群れをなして駆け回り、獲物を追い込んで狩りをする動物です。
爪は土の上でスパイクの役割を果たし、武器としても使われ、また穴を掘る道具にもなっています。肉球は衝撃をやわらげるクッションとなったり、柔軟に方向転換を行うための滑り止めにもなったりします。
■爪・肉球にまつわるよくあるトラブル

(1)爪
筆者の経験では、爪の伸びすぎによるトラブルが一番多く見られます。犬の爪は一日に0.1mm程度伸びると言われています。鉤状の爪は円をかくように伸び、伸びすぎると先が肉球に刺さってしまいます。
爪が伸びすぎた結果正常な歩行ができず、関節などを痛めたりすることもあります。また物に引っかかる可能性もあり危険です。
(2)肉球
散歩時に、ガラスの破片などで肉球や肉球間にけがをすることがあります。犬は違和感を覚え、足先を舐めたり歩行に異常が見られたりします。
乾燥により、肉球がかさかさになったりひび割れが生じたりすることもあります。肉球間には分泌腺があり、分泌が進みすぎると炎症を起こすこともあります。また散歩から帰ったとき、足を洗って乾燥が不十分な状態が続くと、肉球間はいつもじめじめしてしまい、真菌や細菌の感染症を起こすこともあります。
また、肉球にも腫瘍ができることがあります。
■家庭でできる日常のケア
(1)爪
定期的に爪切りをしましょう。散歩時間の長さなどで爪の減り具合はそれぞれですが、1ヶ月に1回程度を目安にしてはいかがでしょうか。
前肢後肢とも、親指にあたる部分の一番内側の爪(※図1)は接地しないため、爪が削れることなく伸びたままなので、特にチェックが必要です。なお、この爪は、生まれつきなかったり、生後まもなく切除されていることもあります。

爪切り道具にはギロチン式、ニッパー式、ハサミ式などがあります。それぞれの犬に合わせて選びましょう。ギロチン式はよく切れますが、慣れないと使いにくいかもしれません。仕上げにヤスリがけができれば、滑らかに仕上がるでしょう。
爪の内側のピンク色に透けて見える部位には、血管・神経が走行しています。直近で切ろうとすると出血したり犬が痛がったりして、次からは爪を切らせなくなるかもしれません。爪先とピンク色の部分までの中間地点を切れば安全でしょう(※図2)。黒っぽい爪で血管・神経の走行部位がわかりにくい場合、爪の下から懐中電灯で照らすと確認できます。

出血した場合は、清潔なガーゼなどで数分間押さえていれば、大抵は止血できるでしょう。止血剤も市販されていますので利用できます。爪が伸びると血管・神経も伸びてきて、適切な位置で爪が切りにくくなります。その場合は、動物病院で相談しましょう。
足先は敏感な部位であり、爪切りを嫌がる犬も多いと思いますので、子犬の頃から爪や肉球間に触る訓練をしておくことがおすすめです。しかし、成犬になってからでも遅くはないと思います。大好きなおやつを利用しながら、足先に触る練習から始めましょう。決して無理をせずに、1日に1本の爪切りから徐々に本数を増やしていきましょう。
爪を切るときは、犬を台に乗せると従順になることもあります。ただし、小型犬は転落しないように気をつけましょう。慣れるまでは爪を切る人と、犬を支えたりおやつを与える人とを分けて、2人体勢で行ったほうがいいと思います。
(2)肉球
乾燥しすぎているときは、ワセリンや犬の肉球用保湿剤を塗ってあげましょう。
肉球周辺の毛が伸びすぎると、フローリングの床などでは滑りやすくなりますので、肉球が見えるようにカットしましょう。足先用の小型バリカンやハサミを使用すればよいのですが、爪切り同様におやつなどを利用しながら無理をせずに行いましょう。
犬は、敏感な足先を人に触られるのを嫌がるのが普通です。急に足先を舐めるようになったり、爪や肉球の異常を発見したり、お家での手入れが上手くいかない場合は、早めに動物病院やペットの美容室にお連れ下さい。愛犬には、いつまでも元気に駆け回る姿を見せてほしいですよね。
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【参考】
※ 林谷 秀樹ほか(2009)『人が学ぶ イヌの知恵』東京農工大学出版会
【画像】
※ Elisabeth Abramova,celyi,Ilike / Shutterstock
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