わんにゃの健康と病気

家にわんちゃんだけは危険!? 夏に注意したい「熱中症」と対策

佐藤貴紀

獣医師
佐藤貴紀

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家にわんちゃんだけは危険!? 夏に注意したい「熱中症」と対策

夏になると心配なのが“熱中症”です。人はもちろん、わんちゃんも熱中症にかかります。

「なんだか元気がない」「息苦しそうにしている」そんな姿を見ると、飼い主としては心配になってしまいますよね。

そこで今回は、わんちゃんの基本的な体温調節の構造や、熱中症になってしまったときの応急処置についてご説明します。

 

■命の危険性も…わんちゃんの「熱中症」とは?

熱中症とは、高温環境下で体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れ、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害のこと(※1)をいいます。

重症化した場合には“命の危険性”もある怖い病気です。実際に当院でも、毎年熱中症で来院するわんちゃんがおり、中には命を落としてしまうケースもあります。

また熱中症という呼び名のほかに、日射病(暑い日ざしが原因)や、熱射病(高温多湿の環境が原因)といわれることもあります。

人の場合は『東京都福祉保健局』(※2)、わんちゃんでも『アニコム損保』(※3)で、毎年情報を公開しています。
動物病院への受診も4月から始まり、7月をピークに10月くらいまで継続的に続きます。ただ、冬場に起きないわけでもないので、年間を通して注意が必要です。

 

■わんちゃんが熱中症になりやすい原因3つ

(1)わんちゃんの体温調節に問題

人は汗をかくことで熱を放出しますが、わんちゃんは汗をかく“汗腺”が足の裏の肉球にしかないため、皮膚から熱を放出することができません。また、被毛に覆われているため体内に熱がこもりやすくなります。そしてわんちゃんの温度調節は、主に舌を出して「ハアハア」と速く浅い呼吸(パンティング呼吸)を行うことで、唾液を蒸散させ気化熱で体温を下げます。体温調節のほとんどを呼吸に頼らざるを得ないため、人よりも高温多湿の環境に弱いのです。

(2)生活環境に問題

日ごろの散歩を想像してみてください。人が歩く高さとわんちゃんが歩く高さでは、大きな差があります。地面から120cmの高さと10cmの高さの温度の実験では、120cmの高さより10cmの高さの方が、温度が17度近くも高かったという実験(※4)があります。つまり、生活環境の場も高温だということがわかります。

(3)人の管理が必要不可欠である

例えば、家でのお留守番時は部屋の温度が重要になります。最近では遠隔カメラで家の様子が確認できるので、とても便利になりました。しかし、万が一そのようなシステムがなくエアコンが止まってしまったら、部屋の温度はどうなるでしょうか? 他にも、置いてある水の容器をわんちゃんがひっくり返してしまい、飲むはずの水がなくなってしまうなど、熱中症になりやすい環境は室内でも起こります。

 

■熱中症になりやすい主な犬種

(1)短頭種犬

出典: https://www.shutterstock.com

フレンチ・ブルドック、シーズー、ペキニーズ、パグ、ブルドッグ、ボストン・テリア、ボクサーなど、 マズル(鼻口部)が短い犬種。

理由:体の構造的に呼吸での熱放出がうまくできないため。

(2)北方が原産のわんちゃん

出典: https://www.shutterstock.com

シベリアン・ハスキーやサモエドなどの北方が原産のわんちゃん。

理由:厚い被毛を持つため、体に熱がこもりやすい。

ほかにも、肥満気味のわんちゃん(皮下脂肪によって体内に熱がこもりやすいため)、子犬(体の生理機能が未発達のため、呼吸管理がしにくいため)、老犬(生理機能が衰えていることが多いため)、あまり水分を摂取しないわんちゃん、興奮しやすくて激しい運動を好むわんちゃんにも要注意です。

 

■熱中症の初期症状に気づいて!

暑くなると口を開け「ハアハア」と呼吸をし始めます。しかし、この限界を超えると下記の症状が現れます

(1)軽度

わんちゃんの体を触ると熱く感じます(病院では直腸温が39.5℃以上、また呼吸の状態などから判断)。また、よだれを出し「ハアハア」と息苦しそうにしたり、活発さがなくなったりします。

さらに進行するとよだれを大量に流し、嘔吐やふらつきなどを起こします。

(2)中等度〜重度

倒れてしまい意識がなくなります。また筋肉が震えたり、呼吸が浅く早くなったりしてしまうこともあります。さらに進行すると完全に意識がなくなり、全身性のけいれん発作を起こします。

症状重度になると、吐血や下血(血便)、血尿といった出血症状が見られたり、酸素をうまく取り込めずチアノーゼの症状が現れたりします。最悪の場合はショック症状を起こし、命に関わることもあります。

 

■応急処置の方法

(1)意識がある場合

できるだけ早く体を冷やし、体温を下げることが大事です。通気性の良い場所や涼しい場所に移動させ、水分をたくさん飲ませてあげましょう。濡れたタオルを体に巻いたり、体全体に水をかけたりするのも有効です。

ただし、39℃近くまで熱が下がったら冷やすのをやめてください。冷やしすぎると逆に熱を溜め込もうとするので、熱が下がりにくくなります。

その後、少し落ち着いてきたら必ず動物病院へ行きましょう。そのままにしておくと食欲不振などを訴え、他の病気を引き起こしてしまう場合があります。

(2)意識がない場合

体を冷やしながら一刻も早く動物病院へ行きましょう。この時、動物病院へは事前に連絡をしておきましょう。時間の短縮になるはずです。
また、途中でわんちゃんの意識が戻っても動物病院での処置が必要です。体内で障害が起きている可能性があるので、適切な対処を受けてください。

 

■気をつけたい!今からできる熱中症対策5つ

わんちゃんを熱中症から守るために、今からできることはたくさんあります。以下の5つに注意しましょう。

出典: https://www.shutterstock.com

(1)なるべくわんちゃんだけの環境をつくらないようにしましょう。

(2)留守番させるときは下記に気をつけましょう。

・室内温度が上昇しないようにしましょう(通気性の良い場所やエアコンのある部屋など)。

・ お水は部屋の数カ所に置くなど、絶対になくならないように工夫しましょう。

・ いつも寝ている場所が暑くならないようにしましょう(カーテンを閉める、ケージの置く場所に気をつける、クールマットを置くなど)。

(3)車内にわんちゃんを取り残さないようにしましょう。

・ 運転中も窓を開けたりエアコンをつけたりするなど、涼しい環境づくりを心がけましょう。

(4)屋外に連れ出す場合は下記に気をつけましょう。

・ キャリーバックは熱がこもりやすいので、こまめに観察をしましょう。

・ 水分をこまめにとりましょう。

・ 直射日光を避けましょう。

(5)日中の散歩は控え、早朝か夜に行いましょう。

・日中やむを得ず外を歩く場合は、なるべく日陰を歩くように意識しましょう。お水をたくさん飲ませてあげることも大切です。

 

この夏、わんちゃんと健康に楽しく暮らすためにも“熱中症対策”は大切です。今回説明した注意事項を守って、わんちゃんとの生活を満喫してくださいね!

 

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考・画像】

※1 「熱中症予防情報サイト」(環境省

※2 「平成28年夏の熱中症死亡者の状況」(総務省)

※3 「犬の身体の特徴に合わせた天気予報!22日」(アニコム損保保険株式会社)

※4 「STOP熱中症プロジェクト」(アニコム損保保険株式会社)

※ Javier Brosch, Angyalosi Beata, Alexey Savchuk, Happyel777 / Shutterstock

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