※2021年1月4日情報更新
猫は犬と並んで人と身近に暮らす動物の代表です。しかしその特徴は、人や犬と大きく異なっています。そのため、人や犬と同じような感覚で生活させていると、気づかないうちに健康を害してしまうことがあります。
そこで今回は、猫の“胃腸”に注目して説明したいと思います。猫と一緒に暮らしているみなさん、ぜひ参考にしてくださいね。
■人や犬と比べて胃が小さく腸が短い
猫は雑食の人や犬と異なり、完全な肉食動物です。胃腸の特徴もその肉食動物を反映しています。まず胃については、草食動物のように一度にたくさん食べることはせず、一日の中でこまめに食事をとるため、胃に食べ物を蓄える機能はありません。そのため、猫の胃は犬や人間よりも小さくなっています。
次に腸については、人や犬など、植物を食べる雑食や草食動物は、腸の中で十分に時間をかけて消化します。そのため、体の大きさに比べて腸が長くなっており、それだけじっくりと消化することができます。
一方、肉食動物の猫は、基本的に植物を食べることがないため、草食動物や雑食動物と比べると腸が短くなっています。実際に、腸の長さと体長の割合については、犬で6:1、猫で4:1と、やはり体の大きさに比べて腸が短いことがわかっています(※)。
つまり、胃も小さく腸も短い猫は、食べ物をじっくり消化するのが苦手な動物だということがわかります。
■猫は炭水化物の消化が苦手
炭水化物は主にデンプンなど、植物系の食材から摂取することができます。完全な肉食動物の猫は、本来植物を直接食べる機会がなかったため、炭水化物の消化機能が発達していません。
実際に、草食動物や人など一部の雑食動物では、デンプンを分解するアミラーゼという酵素が、唾液や膵液、あるいは小腸の消化液の中に含まれていますが、猫では唾液の中にアミラーゼが含まれていません。
さらには、膵液や小腸の消化液の中のアミラーゼなど、二糖類分解酵素と呼ばれている酵素は、デンプンを分解する能力があまり高くないことがわかっています。
さらには、スクラーゼやラクターゼという酵素は、デンプンが分解され、さらにそれをエネルギーに利用するために働く酵素なのですが、やはりそれらの酵素も猫では、犬の40%ほどしか分泌されないことがわかっています(※)。
このように、猫は植物性の食材から得られる炭水化物、すなわちデンプンの消化があまり得意ではありません。
■猫はタンパク質を上手に利用してエネルギーを作る
猫は炭水化物を上手に利用できない動物です。しかし食べ物の中では、炭水化物は動物にとって非常に効率の良いエネルギー源になるため、それを上手に利用できない猫にとっては、非常に不利な代謝機能と言えるかもしれません。
ただ、猫はそれに代わり、タンパク質の代謝が非常に優れていて、タンパク質をエネルギー源にすることができるため、実際には、エネルギー不足になるということはまずありません。
■猫には猫の専用フードを食べさせよう!
このように、猫の胃腸は解剖学的にも生理学的にも人や犬と大きく異なっています。そのため、人や犬と同じような生活をしていると、健康上に問題が生じることがあります。
特に食べ物については、人や犬よりも良質なタンパク質をたくさん摂取する必要がありますので、猫には猫専用の食事を用意することが重要です。実際には手作りで食べさせるには、かなりの専門知識が必要になりますので、手作りごはんが難しい場合は、“総合栄養食”と表示されたキャットフードを与えるようにしましょう。
ただしキャットフードの中には、植物性原材料を多く使用したものもあります。一般的には、猫はある程度の植物性原材料も消化はできますが、胃腸がデリケートな猫では、お腹を壊す原因になることもあります。総合栄養食の中でも、一頭一頭の猫にあったものを選んであげるようにしてください。
■高齢の猫の食事は要注意
このように、猫は高タンパクな食事が必要なのですが、高齢の猫の場合は、その高タンパク食に注意が必要です。高齢の猫で最も多く見られる病気として“慢性腎臓病”があります。
もし慢性腎臓病を患っている場合は、高タンパクな食事が腎臓により大きな負担をかけてしまい、結果として寿命を縮めてしまう見方もあります(※)。
慢性腎臓病の猫の食事については、必ず動物病院で相談をするようにしてください。また、慢性腎臓病は初期症状がほとんどわからないため、早期発見が難しい病気です。
知らないうちに食事で猫ちゃんに負担をかけていた、ということないよう、定期健診などで早期発見に努め、医師の指導のもと慢性腎臓病の食事管理に切り替えてあげられるようにしてください。
猫は雑食の人や犬と胃腸の構造や機能が大きく異なります。そのため、猫には猫の胃腸にあった食事を与えることが大切です。
総合栄養食のキャットフードは、猫の特徴に配慮した食べ物です。安易に犬や人と同じものを食べさせるのではなく、猫の栄養に配慮したものを食べさせてあげてくださいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
※ 本好茂一監修(2001)『小動物の臨床栄養学 第4版』本学窓社
【画像】
※ mashe, Khamidulin Sergey, Morozova Olga, Alexmia, Jaromir Chalabala, Kristi Blokhin / Shutterstock
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