雨の日が多くなる梅雨の時期は湿度と気温が上昇し、不快に感じることが多くなる季節ですよね。それは犬も同じで、色々と問題の起こる季節でもあります。そこで今回は、そんな梅雨の季節になりやすい“皮膚疾患”について、獣医師の久保聡先生に解説いただきました!
■高温多湿は要注意!
梅雨の時期の高温多湿という環境は、皮脂や汗の分泌を増加させ細菌などの繁殖が活発化します。それにより、膿皮症、マラセチア皮膚炎、外耳道炎などの皮膚トラブルになるリスクが相対的に増加すると考えられます。また、アトピー性皮膚炎が悪化する季節でもあります。
(1)膿皮症
膿皮症とは、皮膚の常在菌であるブドウ球菌が主な原因となって起こる皮膚疾患です。この菌はもともと皮膚に常在する菌で、普段は病原性を示しません。しかし、高温多湿な環境や不適切なスキンケア、皮膚バリア機能の低下など様々な要因によって増殖し、皮膚病を引き起こすと言われています(※1)。
症状としては皮膚にブツブツ(丘疹)ができたり、膿の溜まったできもの(膿疱)ができたりしてかゆみを示します。
(2)マラセチア皮膚炎
マラセチアという皮膚に常在する酵母様真菌が原因となって起こる皮膚疾患です。主に皮脂を利用して増殖するため、遺伝的な要因、犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、内分泌疾患(ホルモンの病気)、高温多湿などの環境要因によって皮脂の分泌が過剰になると、マラセチアが増殖し皮膚病を引き起こします。
症状としては皮膚のベタつき、赤み、かゆみを示します。症状が長期にわたり慢性化してくると皮膚が象の様にゴワゴワになり、黒く色素沈着を起こします(※1・2)。
(3)外耳道炎
細菌やマラセチアの感染、耳ダニの寄生、食物アレルギーなどが原因となって耳に炎症を起こします。細菌やマラセチアが悪化因子となるので、高温多湿の環境は症状の悪化をまねく傾向にあることが想定されます。
症状は炎症のため耳介や耳道内が赤くなり、汚れが増え、臭い独特なニオイを伴いかゆみが出ます。かゆみを示す行動は耳をかくだけでなく、頭を振ったり、地面などに耳をこすりつけたりするような行動をとります。症状が長期にわたると、耳の穴が肥厚してふさがってしまうこともあります。
(4)犬アトピー性皮膚炎
ハウスダストや花粉などの環境アレルゲンに対して過敏反応を起こし、皮膚炎やかゆみを起こす皮膚疾患です。症状の悪化要因として細菌やマラセチアの増殖が関係するため、高温多湿の梅雨時期にはアトピー性皮膚炎の悪化も危惧されます。
■皮膚病にならない、悪化させないためにはどうしたらいいの?
梅雨時期の高温多湿という環境が細菌やマラセチアの増殖を招くため、雨の中散歩に出て、体の汚れや濡れた状態を放置しておくと皮膚病リスクが増えます。そのため、定期的なブラッシングや適切なスキンケアを行うことが大切です。
シャンプーなども適切に行わないと悪化してしまうことがあるので、シャンプーのすすぎ残しや、乾燥などには注意しましょう。万が一皮膚病になってしまった場合は、できるだけ早く病院へ行き適切な治療を受けましょう。
普段のブラッシングやシャンプーなどのスキンケアは愛犬とのスキンシップのひとつとしてだけでなく、皮膚病の予防や早期発見に重要です。普段の何気ないスキンシップから、簡単な家庭内診察へとステップアップしてみてくださいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
※1 伊從慶太(2018)『獣医皮膚科専門医が教える 犬のスキンケア パーフェクトガイド』インターズー.
※2 岩﨑利郎監修(2008)『犬と猫の皮膚疾患』文永堂出版.
【画像】
※ Irina Filkova, Valerie Nik, Ovchinnikova Stanislava / Shutterstock
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