猫から人にうつる感染症の一つである、「トキソプラズマ症」。名前を聞いたことがある人は少ないと思いますが、猫の飼い主さんには頭の片隅に入れておいてほしい病気の一つです。特に、妊婦さんや免疫不全疾患の患者さんにとっては注意が必要な病気です。
今回は、トキソプラズマ症の概要、飼い主さんができる対策についてお話します。
■トキソプラズマ症って何?
トキソプラズマ症は、トキソプラズマという原虫による感染症で、人や猫を含む多くの動物に感染します。健常な人に感染しても身体の免疫がしっかりと働くため、重篤な症状を示すことは基本的にありません。しかし、妊婦さんに感染した場合には、胎児に重篤な影響を及ぼす可能性があります。また、免疫不全疾患の患者さんに対しても、重篤な症状を引き起こす危険性がある病気です。
■人への感染経路は?
人がトキソプラズマに感染するパターンとしては、トキソプラズマが含有したお肉を加熱不十分で食べた場合、もしくは猫の糞便に含まれるトキソプラズマが口から侵入した場合などが挙げられます。
■トキソプラズマ症の症状
・猫の場合
猫にトキソプラズマが感染しても、基本的には症状を示さないとされています。ただし、猫白血病など免疫力を弱める要因がある場合には、発熱や呼吸器症状などを示すことがあります。
・人の場合
健常であれば人に感染しても症状はほとんど見られないとされます。注意が必要な方は、妊婦さんと免疫不全者の方です。妊娠中の女性がトキソプラズマに初めて感染した場合、トキソプラズマが胎児にも感染する可能性があるとされています。トキソプラズマが胎児に感染した場合には、流産や死産もしくは何かしらの障害をもった子が生まれる可能性があります。また、免疫不全者の方が感染した場合には、脳炎や肺炎など命を脅かす症状を引き起こすことがあるそうです。
■トキソプラズマ症の対策2つ
(1)生肉、加熱不十分なお肉を食べない
お肉を食べて感染してしまうケースでは、豚肉が一番多いとされていますが、その他の肉でも感染のリスクがあるとされます。生や加熱不十分のお肉はリスクがありますので、妊婦さん(またはその可能性がある方)と免疫不全者の方は、十分に加熱されたお肉を食べるようにしましょう。
(2)猫のうんちに気をつける
猫ちゃんのうんちから人に感染するケースには、いくつかの条件がそろった場合であるとされます。その条件は、(1)猫がトキソプラズマ症に感染していること、(2)猫がトキソプラズマに初めて感染してから数日からおよそ2週間の間であること、(3)うんちをしてから24時間以上経過していること、が挙げられます。
(1)に対しては、室内飼育を徹底する、生肉や加熱不十分な肉を与えることを避けるといった対策ができるでしょう。(2)に関しては、健常な猫は症状を示さないため、対策は難しいと言えます。(3)に関しては、うんちをしてから24時間以内に片づけるために、毎日うんちの掃除をすること。また、妊婦さんが猫のうんちの処理をすることは極力避け、それ以外の方がトイレ掃除を行うことが望ましいとされます。
今回は、あまり皆さんにとって馴染みのないトキソプラズマ症について解説しました。この病気は、妊婦さんや妊娠の可能性のある方に知っておいてほしい病気です。妊娠を理由に猫を手放す必要性は全くありませんが、猫のうんちの処理や猫の室内飼育の徹底などを心がけるようにしましょう。
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