※2020年12月16日情報更新
わんちゃんの“ストレス”について気になったことはありませんか? 季節の変わり目は、わんちゃんの身体だけではなく心の状態も不安定になり、様々な変化が見られることがあります。
例えば、愛犬が嘔吐や下痢をしたとき、排泄の失敗やずっと吠えて鳴き続けるときなど、何かあると「ストレスのせい?」と感じたことがある飼い主さんもいるかもしれません。
何か病気を抱えているわけではなく、身体に問題がないのであれば、たしかにストレスが原因である場合もあります。そこで今回は、わんちゃんが抱えるストレスについて、獣医師である筆者が解説します。
■犬も「ストレス」を感じるの?
ストレスというのは、元々欧米で利用されていた単語“Stress”を日本語に訳した言葉で、対処しなければならない難しい状況による心配事や不安な感情、もしくはそのような状況を作り出している要因を意味します。
ストレス社会という言葉もあるように、私たち人間と一緒に生活するわんちゃんも飼い主さんの生活パターンや行動による影響を強く受けていて、実際にオーストラリアでは、家庭で飼われているわんちゃんの40%が、何かしらの不安やストレスに関連した行動を起こしていると言われています(※1)。
■ストレスを引き起こす「ストレッサー」
ストレスの要因になるものを“ストレッサー”といいます。ストレスというとイライラや不安などの感情的な変化をイメージするかもしれませんが、実は他にも様々な要因があります。では実際に、どんなことがストレスになるのでしょうか?
<ストレスの要因>
・気温(寒暖)や気圧など天候の変化
・騒音(他の犬が遠くて鳴いているなど)
・地震などの振動
・タバコの副流煙
・極端に強い光
・引っ越しなどの環境の変化
・ドライブなどによる疲れ
・病気や怪我
・睡眠不足
・競技会などの緊張
・同居犬との仲が悪い
・家族との死別
・退屈(留守番が長い)など
あくまで一例ですが、上記のような要因がストレスに繋がっていることがあります。そして、これらの要因が引き金になり引き起こされる反応が、以下のようなものになります。
<ストレスにより引き起こされる反応>
・体温が上がる(※2)
・呼吸が速くなり、心臓がドキドキする
・食欲がなくなる
・嘔吐や下痢をする
・トイレの失敗やおもらし
・ずっと吠え続ける
・イライラしやすくなって飼い主さんを咬む
・肢などの身体の一部をずっと舐めつづける
・食べられないもの(石、砂、布など)を食べる
・ソファなどの家具を壊す
・同じところを意味もなくウロウロするなど
ストレスが要因でこのような症状が現れることがあります。
■ストレスが身体に与える影響とは
ストレスを抱えると、自動的に視床下部ー下垂体ー副腎が影響を受けて、ストレスに対抗するためにステロイドなどのいわゆる“ストレスホルモン”を放出させることが知られています(※3)。
この状態が長く続くと、今度は副腎が疲れてしまい免疫機能のバランスが維持できなくなってきます。また常に緊張が続くため、精神的にもイライラしやすくなって我慢ができなくなったり、吠えたり唸ったり咬んだりするような行動が見られる場合もあります。そのため、ストレス対策はとても重要です。
■「ストレスマネジメント」で良い影響を与えよう
ストレスが身体や心に悪い影響を与えないように対策していくことを“ストレスマネジメント”といいます。ストレスを引き起こしている要因はさまざまですので、原因によって対処していく必要があります。
例えば、飼い主さんの留守の間に吠えたり家具を壊したりする場合、お留守番がストレスになっているため、トレーニングを行ってお留守番に慣らす、お留守番の時間はペットシッターさんに面倒を見てもらい、退屈しないような生活スタイルに切り変えていくなど、対策が必要です。
また筆者は、2009年3月11日に起きた東日本大震災の後に、嘔吐や下痢などの症状を示すわんちゃんを診察する機会が急激に増えた経験をしています。わんちゃんに振動を与えるような予行演習はできませんが、再び大きな災害がいつ起きるかは予測できないため、事前にシミュレーションして災害対策しておくことも大切です。
飼い主さんとわんちゃんの気持ちは同調していることが多いため、飼い主さんが冷静に対処すると、わんちゃんも安心するという話も伺っています。
大きな問題に発展する前に、早めに発見してストレスマネジメントをしていくことがとても大切です。是非参考にしてみてください!
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