わんにゃとの暮らし

【獣医師執筆】成犬からでも遅くない!歯磨きの正しい方法「6ステップ」にチャレンジしよう

小林真也

獣医師
小林真也

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【獣医師執筆】成犬からでも遅くない!歯磨きの正しい方法「6ステップ」にチャレンジしよう

※2020年6月17日情報更新

3歳以上のわんちゃんの80%が歯周病あるいは歯周病予備軍といわれ、歯周病を放置すると心臓病や腎臓病などの全身性の病気にかかりやすくなります。歯は日常的にケアすることが重要ですので、歯ブラシが楽しい時間になるように無理をせずに行っていきましょう。

今回は獣医師である筆者が、歯磨きのポイントをまとめたので参考にしてみてくださいね。

 

■犬の歯の特徴を知ろう

・歯は全部で42本

わんちゃんの歯は上の歯が20本(切歯6本・犬歯2本・前臼歯8本・後臼歯4本)、下の歯が22本(切歯6本・犬歯2本・前臼歯8本・後臼歯6本)あります。

・歯はエナメル質、象牙質、歯髄の3つで構成

わんちゃんのエナメル質は、一般的には人間と比べて半分以下程度の薄さと言われています。歯磨きを強くしてしまうと傷つきやすいので注意が必要です。

・虫歯にはなりにくい

わんちゃんの口の中のpHがアルカリ性であること、唾液中にアミラーゼという酵素がなく糖が口の中に溜まりにくいこと、歯の形状がハサミのように尖っていることから、虫歯菌が繁殖しづらいといわれています。

・歯垢が歯石になるスピードが早く、歯周病になりやすい

歯垢が歯石になるまでの時間は3〜5日といわれています。一度歯石になってしまうと除去することは困難なので、歯垢のうちに歯磨きすることがポイントです。

 

■歯磨きに必要なもの

成犬からでも遅くない!歯磨きの正しい方法「6ステップ」にチャレンジしよう
出典:https://www.shutterstock.com/

・歯ブラシ

ヘッドの幅は切歯2、3本分が目安です。ブラシはやわらかいものを使用しましょう。

・歯磨き粉

歯磨きジェル、歯磨きペースト、歯磨きスプレーなど種類があるので使いやすいものを選びましょう。わんちゃんの歯磨き粉には発泡剤が入っていませんので、うがいの必要はありません。

・水

器に水を用意し、歯ブラシに付いた歯垢をすすぎながら行いましょう。

 

■無理は禁物!歯磨きの正しい6つのステップとは

ある日突然歯ブラシを持って、歯磨きしてしまうとわんちゃんはびっくりして歯磨きが嫌いになってしまう可能性があります。そうならないために、筆者は通常6つのステップを守って、ゆっくりと歯磨きを練習していく事をおすすめしています。

(1)まずはマズルを触る練習から始めよう。

正面から触ろうとすると警戒することもあるので、はじめは横や後ろからそっと優しく触ってみましょう。

(2)口唇をめくってみましょう。

犬歯などの手前の歯は口唇を上下にめくり、臼歯などの奥の歯は後ろ側に口唇をめくってみると、歯磨きが上手にできます。

(3)口の中に指を入れて歯を触ってみましょう。

触ることができたら、指を動かして歯をマッサージするように擦ってみましょう。口唇をめくって歯を触ることができれば、上出来ですね。

(4)人差し指にガーゼを巻いて、歯を擦ってみましょう。

ガーゼを水で濡らして、1本ずつ歯を擦ってみましょう。この時にデンタルグローブ(軍手でも代用は可能)を使用することもできます。

(5)いよいよ歯ブラシの出番!歯の表側を磨いてみましょう。

歯ブラシはペングリップで持ち、優しく横に振動させて磨いていきましょう。歯ブラシを噛まないように、口を閉じさせて磨くことがコツです。

(6)歯の裏側を磨いてみましょう。

犬歯の後ろに人差し指を噛ませながら、歯の裏側を磨いてみましょう。

みなさん実行できそうですか? 以上のステップを2〜3週間ずつかけて徐々に慣らしていきましょう。

 

■6つのステップを成功するためのポイント

成犬からでも遅くない!歯磨きの正しい方法「6ステップ」にチャレンジしよう
出典:https://www.shutterstock.com/

・長時間は歯磨きをしない!

わんちゃんが飽きてしまって、歯磨きが嫌いになってしまいます。目安として、1回の歯ブラシで20〜30秒程度行いましょう。

・上手にできたらとにかく褒める!

これがすごく重要! 「よくできたね!」「おりこう!」など、たくさん言葉をかけて褒めてあげましょう。また、おやつなどのご褒美を用意しておくといいでしょう。

・無理やりはダメ!

もし上手にできなかったら、すぐに中断しましょう。その場合は怒ったりせずに、わんちゃんをそっとしておきましょう。ありがちな間違えは、わんちゃんが嫌がった時になだめようとおやつをあげてしまうことです。嫌がるとおやつを貰えるとわんちゃんは勘違いするので気をつけましょう。わんちゃんが落ち着いたら再チャレンジしてみましょう。

 

歯の健康を保つためには日常的なデンタルケアが重要です。幼少期からトレーニングしておくと良いですが、成犬でもゆっくり時間をかけてあげれば上手に歯磨きができるようになります。もし歯石や口臭が気になる場合は歯周病になっていることもあるので、獣医師とよく相談し歯磨きをはじめるタイミングを決めましょう。

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【参考】

※ 渡邊一弘著『はじめよう犬と猫の臨床歯科』インターズー

※ 藤田桂一著『臨床のための小動物歯科』インターズー

※ SA Medicine Vol13 No2 2011 72 インターズー

※ Vet Information No.20 2017 DSファーマアニマルヘルス

※ CAP No.302 August 2014 緑書房

【画像】

※ Kseniia Mitus, Ekaterina Brusnika, Anna Hoychuk / Shutterstock

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