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【獣医師執筆】人間だけじゃない!? 犬の「反抗期」おもしろい生体&正しい付き合い方

菊池亜都子

獣医師
菊池亜都子

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【獣医師執筆】人間だけじゃない!? 犬の「反抗期」おもしろい生体&正しい付き合い方

202121日情報更新

人間の子どもの場合、成長していく上で重要な通過点とも言える“反抗期”ですが、実は、わんちゃんにも反抗期のような時期があるのをご存知ですか?

ただ、その中身は人間とはちょっと違ってきます。今回は、そんなわんちゃんの反抗期について考えてみましょう。

■犬の反抗期ってなに?

人間だけじゃない!? 犬の「反抗期」おもしろい生体&正しい付き合い方
出典:https://www.shutterstock.com/

子犬には社会性を身につけていく過程で、とても重要な“社会化期”と呼ばれる時期があります。社会化期が、いつからいつまでなのかを厳密に定義することは難しく、それぞれのわんちゃんによっても変わってきますが、大体生後3~12週間くらいまでと考えられています。

社会化期の時期は、自分以外の存在(他のわんちゃんや人、周囲の環境など)に対して、恐怖心や警戒心よりも、好奇心の方が強く、比較的柔軟に受け入れることができる時期と言われています。まさに“天真爛漫な時期”と言えます。

しかし、わんちゃんによっては、その社会化期が終わるころから成長していく過程で、怖がったり嫌がったりする態度をとるようになることがあります。

 このような反応を示す時期が、人間の子どもに見られるような反抗期に似ているのかもしれません。

■どんな態度をとるの?

社会化期に、見知らぬ人やわんちゃんと楽しい経験をたくさんしたわんちゃんは、将来外交的で友好的になる傾向があります。しかし、経験が少ないわんちゃんは、他のわんちゃんや人に対して臆病で、逃げたり攻撃的になったりしやすいと言われています。

家の中ではおとなしくて家族が大好きなわんちゃんでも、家族以外の人や家庭内にあるもの以外を知らないまま、社会とまったく接触せずに成長すると、他のわんちゃんや人、初めてみる自転車やバイク、トラックなどを怖がって震えたり、吠えたりすることがあります。

人間だけじゃない!? 犬の「反抗期」おもしろい生体&正しい付き合い方
出典:https://www.shutterstock.com/

室内しか知らないわんちゃん、つまり社会性がないわんちゃんは、家の中では安心して過ごすことができても、一歩外に出ると周囲は怖いものだらけ、ストレスだらけになってしまうのです。

楽しみにしていたお散歩デビューを迎えても、楽しむどころか、怖がってまったく歩いてくれなかったり、他の人が話しかけてきて撫でようと手を出した途端、唸ったり、咬もうとしてしまう……というような行動を示すこともあります。 

また、新しい対象に接する経験をたくさんさせたとしても、それが怖い体験や嫌な体験だった場合も、逆に怖がりのわんちゃんになってしまうことがあります。

例えば、爪切りや歯磨き、耳掃除などのお手入れは、わんちゃんにとってはあまりうれしいとは言えないものですが、子犬の時期はあまり抵抗することがありません。

しかし、たとえ嫌がったとしても、子犬だからと押さえつけて無理やりやってしまうと、次第に抵抗することが多くなり、ついにはお手入れしようと準備するだけで逃げてしまったり、攻撃的になったりしてしまうことがあります。

 

■外の世界を見せてあげよう!

ひと昔前のように、わんちゃんが庭で飼育されていたころには、外の環境に触れる機会が自然と存在していました。しかし、室内飼いではそのような機会がありません。飼い主さんが意識して、外界に触れさせる努力をするように心がけましょう。

例えば、家にお客さんを呼んで一緒に遊んでもらったり、本格的なお散歩デビューの前に、抱っこやカートに乗せるなどして、近所を歩いてみたりするのもいいですね。自転車やバイク、自動車などにも馴れさせる絶好の機会です。

いきなり交通量が激しい場所に連れて行くのではなく、まずは静かな環境に馴れさせるところから始めます。このとき、大好きなおやつを与えたりすると、いい経験につながるのでおすすめです。

ご家族の帰宅時間に合わせて、駅にお迎えに行くのもいいかもしれません。

人間だけじゃない!? 犬の「反抗期」おもしろい生体&正しい付き合い方
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動物病院などが主催している子犬教室などに参加してみるのもいいです。他のわんちゃんや飼い主さんに対して、楽しく接する機会を積極的に作ってあげましょう。

爪切りや歯磨き、耳掃除などのお手入れも、最初は爪に触る、口を触る、歯を触る、耳を触ることから始め、その時に必ず褒めておやつを与えるといった、いい経験を同時にさせるようにしましょう。完全に嫌がらなくなったら、次の段階に進むようにします。決して無理をさせてはいけません。

社会化期は、できるだけたくさん楽しい経験をさせてあげると同時に、怖い体験や嫌な体験をさせないようにすることが大切です。

「もう子犬の時期は過ぎてしまったし、手遅れかな……」と、あきらめる必要はありません。成長してからも、さまざまなものに馴らすことは決して不可能ではないのです。

子犬の時期に比べて時間はかかりますが、焦らず根気よく、決して無理せず馴らしていくことで、社会化はどの年齢でも可能です。

また、子犬の社会化期が終わったからといって、ついつい褒めることを省いてしまったり、いい経験や楽しい経験をさせずにいると、逆戻りしてしまうことがあるので、くれぐれも気をつけましょう!

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【参考】

※ 森裕司・武内ゆかり・内田佳子(2012)『動物行動学』インターズー.

【画像】

※ Immagy, Elena Sherengovskaya, Marina Ielma, Oleksiy Rezin / Shutterstock

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