“おしり歩き”と聞いて、どのようなイメージが湧きますか? 「まさかおしりで歩くの!?」と思うかもしれませんが、正しくはおしりを床に擦りながら、前足で歩行している2足歩行する状態を指します。
犬のおしり歩きは決して珍しくない行動ですが、どのような理由があるのでしょうか。獣医師の佐藤先生に詳しく伺いました。
■おしり歩きする理由は?
犬の肛門周囲に何らかの異常や違和感があると、おしり歩きをすることがあります。その中でも私の経験上頻度が高い理由として、“肛門嚢(腺)”の貯留があげられます。
肛門嚢とは、強烈なにおいがする分泌液を貯めておく器官で、人にはない器官です。動物ではスカンクやイタチが、外敵から身を守るための役割として持っています。犬も同様に外敵から身を守るためや、自分の縄張りを明確にするために利用すると言われています。
肛門嚢がある場所は、肛門を中心として4、5時方向と7、8時方向に一つずつの計2つです。肛門嚢からの分泌液は、通常は先ほどの外敵や縄張りなどを理由に排出する、もしくは排便時に排出して調節します。
しかし、何らかの問題が起こり分泌液が出ない状態が続くと、肛門周囲に違和感が生じ、おしり歩きをしてむず痒さを解消する行動をとるようです。
■考えられる疾患とは
それでは、肛門嚢のトラブルに関連して考えられる疾患としてどのようなものがあるのでしょうか。良く見られるいくつかのパターンをまとめました。
(1)肛門嚢の貯留・・・下痢などの症状が起こることで、肛門嚢からの分泌が悪くなります。
(2)肛門嚢の破裂・・・肛門嚢の分泌液が大量に溜まるなどの理由から、破裂することがあります。
(3)肛門周囲腺腫・・・腫瘍ができることで炎症を起こし、痒みを伴います。
(4)アレルギー・・・アレルギーにより肛門周囲が赤くただれることなので、炎症を起こし痒みを伴います。
(5)また、肛門嚢のトラブルではありませんが、椎間板ヘルニアで腰が抜けてしまうと、おしり歩きのように見えますが、数分でやめて通常通り歩けていれば問題ありません。
■定期ケアをしよう!
肛門嚢の排出は、慣れれば飼い主さんでも可能ですが、炎症などがある場合に無理やり行ってしまうと痛がってしまい、今後できなくなることが考えられます。まずは異常がないか、動物病院で判断してもらいましょう。
正常であれば絞り方を教えてもらい、定期的に行うといいでしょう。絞る感覚は個体差がありますが、通常は2週間に1度くらいと言われています。
どこか悪くなっていても、おしり歩きをする子としない子がいます。炎症がひどくてもやらない場合もあるため、注意が必要です。
定期的にトリミングしている場合はトリマーさんが確認してくれるケースが多いですが、家でシャンプーをする場合は、絞り方を覚えて定期的に行うと良いでしょう。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。【関連記事】
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