病気の再発予防やシニア犬の体力作りのために、茨城県つくば市にある『アイ動物医療センターつくば アニマルリハビリ&フィットネスセンター』(以下、アイ動物医療センター)では、積極的に理学療法を行っています。
理学療法士の野口詠未さんに、ペットのリハビリテーション(以下、リハビリ)についてお話を伺いました。
■リハビリの力でペットを元気に!
ペットの理学療法は海外では30年以上前から行われていて、日本でも20年ほど前から徐々に取り入れられ始めています。
獣医学的な治療で疾患が完治しても、元気だったころの生活にすぐに戻れるわけではありません。アイ動物医療センターでは、神経や整形外科疾患が原因で困難になった歩行や体のクセを治し、低下した機能を回復させて適正な状態に戻すためのリハビリを積極的に取り入れています。また、当院の治療方針やリハビリ設備、カリキュラムが充実していることもあり、遠方から来院されるわんちゃんと飼い主さんもいるそうです。
「私たち人間が病気にかかったり事故に遭ったりすると、リハビリが行われますよね。それは、できるだけ可能な限り元の生活が送れるようになるためには、回復力を高めるトレーニングをする必要があるからです。その考えは、わんちゃんやねこちゃんなどの動物でも同じです。
手術などを行なったわんちゃんやねこちゃんの体の機能の回復と、疾患の再発予防の体づくりのために、飼い主さんにはリハビリの必要性をお話ししています。リハビリに難色を示す飼い主さんには、まずは1ヶ月のリハビリを提案。リハビリの成果がペットの身体に現れたのを見ると、ほとんどの飼い主さんが長期間継続してくれます。
また、茨城県にある当院を頼って、都内、千葉、長野からもリハビリに来院するわんちゃんと飼い主さんもいます。通うのが大変な場合はリハビリ入院もあるので、お問い合わせください」(野口さん)
■チーム医療で高い効果を目指す
アイ動物医療センターでは、徒手療法、運動療法、水治療法、物理療法という4種類の理学療法で、ペットの健康をバックアップしています。
リハビリを行う際には、獣医師・動物看護師・トリマー・理学療法士・飼い主さんによるチームを作り、それぞれのわんちゃんやねこちゃんに合わせたリハビリメニューで取り組んでいるのも特徴です。
(1)徒手療法
わんちゃんの身体の関節の動きがスムーズかをチェックし、血流を良くするマッサージなどを行います。筋肉の薄いところがあれば、その部位に筋肉をつけるようにリハビリ。飼い主さんにもマッサージ指導を行い、家で実践してもらっています。
(2)運動療法
バランスボール(ピーナッツボール)を使うことで、わんちゃんが身体のどこがうまく使えていないのかを確認。体幹を鍛えるのに有効で、ヘルニア予防などにも良いそう。筋力強化、バランス練習などにも使用しています。
(3)水治療法
プールや水中トレッドミルによる、水中リハビリ。水中は関節への負荷が少ないので、歩く練習がしやすいのが特徴です。筋力強化だけでなく、心肺機能の強化などにも有効です。
(4)物理療法
レーザーを当てることで、神経の回復促進、血行や細胞の活性化などに有効。また、手術した傷口の塞がりを促進できます。
(5)その他
屋外にあるアジリティで、身体の動きや可動域チェックのための動画を撮影。スロー再生して、状態を評価します。
「わんちゃんはシニアになると筋力が落ちてきたり、太りやすくなったりするので、プールやバランスボールなどを使って無理なく体を動かすのを習慣にするのが良いと思います。
もし、先天性の疾患があっても、理学療法なら疾患を悪化させないための体づくりが可能です」(野口さん)
■家庭でできる「健康寿命を延ばす体づくり」
動物医療の進歩と共に、わんちゃんは長生きになっています。シニアになっても寝たきりになることなく、健康で元気に過ごして欲しいというのが飼い主さんの願いではないでしょうか。
わんちゃんがシニアになっても元気で暮らせるために家庭でできることを、野口さんに伺いました。以下の対策を実践してみてくださいね。
<シニア犬のための健康寿命対策>
・若いうちから体を動かしてバランスの良い体づくりをする
・年齢に合わせたフードを与える
・フローリングの床にはペットが滑らないための敷物を敷く
・段差に注意し、ソファに台やスロープをつける
・爪を切り、足裏の毛はカットする
・知育玩具などで遊ばせて、脳の働きを活発にする
「当院で体づくりをしており、15〜16歳まで生きたラブラドールレトリバーの子は、亡くなる当日までふらつきながらも自分の脚で歩くことができました。シニアになってからも体力づくりを欠かさなかったからこそ、寝たきりになることなく生活できたのではないかと思います。
元気なシニアになるためにも、1歳を過ぎて成長が止まったころを目安に、体力作りをスタートさせましょう。理学療法は病気の治療後に体を回復させる目的だけでなく、老化の進行を遅らせるのにとても役立つものです。愛犬の健康寿命を延ばすためにも、取り入れることをオススメします」(野口さん)
<取材協力>
野口詠未(のぐちえみ)
理学療法士国家資格取得後、人の病院や訪問リハビリステーションなどに勤務。ご縁があり、学生の頃から興味があった動物リハビリテーション領域に携わることに。現在、アイ動物医療センターつくば勤務。
<施設概要>
アイ動物医療センターつくば アニマルリハビリ&フィットネスセンター
住所:茨城県つくば市学園の森2-20-5
TEL:029-858-8877
営業時間:年中無休8:00〜20:00(予約優先)
HP:http://www.aitom.jp/index.html
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【画像】
※ アイ動物医療センターつくば
※ marcinm111 / Shutterstock
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