近年は全国各地に“保護猫カフェ”が誕生していますが、愛知県名古屋市西区香呑町にある『ひだまり号』は、なんと2階建てのバスを改装し、里親さんとの素敵な縁を紡いでいる新しい形の保護猫カフェです。
今回は、そんなひだまり号のオーナーご夫婦・吉修さんと昌子さんにお話を伺いました。
■息子さんが開店のキッカケに
―今回は宜しくお願いします。はじめに、お店を開こうと思われたキッカケを教えてください。
昌子さん:実は5年前に、まだ23歳の息子を亡くしました。部屋から出られない時期が3年半続きました。そんなとき、かかりつけの獣医師さんから、赤ちゃん猫を育ててもらえないかというお話をいただき、その子を夢中で育てました。
そのあと、愛護センターのミルクボランティアとしても、たくさんの赤ちゃんを育てたことがキッカケです。自分が必要とされることで、部屋から出られるようになりました。
―ミルクボランティアをするうちにお店を開きたいという想いが芽生えたのでしょうか。
昌子さん:名古屋市愛護センターでのミルクボランティアは、離乳したらセンターに返し、里親さんを探すシステムになっているのですが、より殺処分ゼロの力になりたいと思いました。
―店舗ではなく、なぜバスで猫カフェを開こうと思われたのでしょうか。
吉修さん:妻は駐車場に建屋を建てようとハウスメーカーに見積もりまで頼んでいましたが、金銭的な不安がありました。そんなとき、2階建てのバスが中古で販売されていることを知りました。
―それで2階建てバスをお店にしようと思われたのですね。
吉修さん:驚くことに、2階建てのバスは駐車場にピッタリ入るサイズでした。まるで息子が導いてくれているように感じましたね。私も、妻が少しでも元気になってくれるのなら夢を叶えて一緒に歩いていこうと思い、そのとき勤めていた仕事をやめる決心をしました。
―ちなみに、バスの絵は誰が描かれたのでしょうか。
吉修さん:娘が描いてくれたものを、専門の業者さんにラッピングしてもらいました。
そして、店名はボカロPだった息子の活動名“sunny spot”が由来となっています。ですから、この猫カフェは家族みんなで作り上げたものです。
■2階建てバスを自分たちで大改造
―中古のバスはどのように改装されたのでしょうか。
吉修さん:まず、知り合いの現役トラックドライバーに運転してもらって家まで運び、内装は友人のリフォーム屋さん、設備屋さん、大工さんが手伝ってくれ、3ヶ月かけて大改造しました。
1階はブザーなどをあえて残し、バスらしさが楽しめるようにしました。
断熱材もしっかり入れてあります。
―1階には飲み放題のドリンクバーが設けられているのですね。
吉修さん:お客さんにはまずここでドリンクを選んでもらい、そのあと猫たちがいる2階のふれあいルームに進んでもらいます。ドリンクバーにはアルコールも置いてあります。
アルコールは賛否両論でしたが、みなさん節度を持って2杯くらいを嗜む程度です。会社帰りなどに猫を眺めながら癒されていらっしゃいます。
ちなみに、2階のふれあいコーナーに置かれているテーブルは、バスのドリンクホルダーを再利用しました。猫がいたずらしてこぼしてしまう心配もありません。
■親子で楽しめる保護猫カフェ
―現在は、何匹くらいの猫がお店にいるのでしょうか。
昌子さん:現在は25匹ですが、過去には最高で33匹の猫が在籍していたことがあります。
―お店にいる猫たちは、どのようにしてこちらにやってくるのでしょうか。
昌子さん:名古屋市愛護センターと譲渡ボランティア契約をしているので、収容の連絡が入ったら引き取りに行きます。当店は2018年8月1日にオープンしたばかりですが、現在の時点でこれまでに67匹を受け入れ、その内の34匹を譲渡しました。
―こちらがお店の譲渡条件ですね。
昌子さん:様々な意見があるかとは思いますが、保護猫たちの幸せはどこにあるのだろうと考えています。あまりに条件を厳しくしすぎて譲渡のチャンスを逃すと、より里親さんとの出会いが少なくなってしまうのではないかとも感じています。ここは、譲渡の難しい課題だと思います。
―入店ルールも、他店より子どもが入りやすいようにしているそうですね。
昌子さん:他の猫カフェでは中学生以下の子どもの入店が禁止されていることが多いのですが、当店では5歳以上で親御さんが監視できるのであれば入店を許可しています。
―それはなぜですか。
昌子さん:里親さんになられる方には、お子さんがみえる家庭もあります。親御さんが気に入った猫でもお子さんとの相性が良いとはかぎりませんし、猫の扱いを知らないお子さんもいると思います。
しかし、実際にお店で猫と接していただき、猫の触り方や扱い方をしっかり教えられれば、子どもが自宅でも正しくかわいがれるようになり、家族みんなで大切に育てていけるのではないかと思ったからです。
私自身が動物看護士や動物介護士の資格を持っているので、そちらも活かしながら接し方を教えています。
■猫たちの健康を守るには?
―猫たちの健康を維持するため、お店ではどんなことに気をつけていますか。
昌子さん:愛護センターから譲り受けた子猫たちは、スタッフのみが入れる育児ルームで慣れさせながら育てています。
ふれあいコーナーにはトイレは置かず、猫たちはトンネルで繋がった育児ルームのトイレで用を足します。排泄物はすぐに片づけるようにしており、毎日のトイレ洗浄はもちろん、ケージの消毒も行い、ふれあいコーナーは椅子やキャットタワーなどを退けて掃除をしています。
―ふれあいコーナーの猫は、みんなワクチン接種済みなのでしょうか。
昌子さん:はい。ワクチン接種が済んでいない猫は、ふれあいコーナーに出していません。ただ、1階から2階へ登る階段から、どんな子猫が育児ルームにいるか、お客さんに見てもらえるようにしました。
―お店の仕様にも工夫されたのですね。掃除以外ではどんな面に気を付けていますか。
昌子さん:最近はウイルス除去で話題の、次亜塩素酸が出るスチーム器を活用しています。
また、猫たちの腸内環境を整えて健康を維持するため、サプリメントも与えています。私自身もさらに知識をつけるため、獣医師会のセミナーに参加しようと思っています。
―ちなみに、お店で今後企画されているイベントなどはありますか。
昌子さん:まだ構想中ですが、今までにない猫の譲渡会を開催したいと考えています。
―他になにか伝えたいことはありますか。
昌子さん:現在お店ではボランティアさんの募集を行っているので、興味がある方はぜひお話をさせていただきます。また、猫たちを救うためにはどうしても病院代がかかってしまいますし難病の子もいるので、HP上で支援を募っております。ご協力お願いいたします。
―ひだまり号の猫たちは、みんなイキイキしています。愛されているのがとても伝わってきました。本日は貴重なお話、ありがとうございました!
家族みんなで作り上げた『ひだまり号』は、まるで猫の幼稚園です。お客さんがやってくると、猫も自然と笑顔になるような温かさがありました。
2階建てバスという不思議な空間で、ねこちゃんとのふれあいをぜひ楽しんでみてくださいね!
<店舗情報>
ひだまり号
住所:愛知県名古屋市西区香呑町3-74
電話番号:052-522-6295
営業時間:11:30~20:00(最終入店19:00)
定休日:水曜日、第1・3木曜日
HP:https://www.hidamari-cat.com/
Instagram:https://www.instagram.com/yoshinobu_sobue/
Twitter:https://twitter.com/sunnyspot315
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