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【獣医師執筆】当たり前だけど実は知らない!? 犬がペロペロする「舐める」行動の心理について

白井春佳

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【獣医師執筆】当たり前だけど実は知らない!? 犬がペロペロする「舐める」行動の心理について

みなさんは愛犬からペロペロ舐められたことはありますか? 愛犬家のみなさんなら、一度は(または数え切れないほど!)経験があることでしょう。

そこで今回は、人とはまったく違うコミュニケーションツールである“舐める”という行動について、行動診療科認定医の白井春佳先生にお聞きしました!

■舐める行動の起源

当たり前だけど実は知らない!? 犬がペロペロする「舐める」行動の心理について
出典:https://www.shutterstock.com/

わんちゃんの祖先であるオオカミは、子オオカミが親に食べ物をねだる時に口のまわりを舐めます。そうすると、親オオカミは子オオカミに食べ物を吐き戻して与えます。わんちゃんの舐める行動は、これらの名残だと考えられています。

■犬が舐めるときの気持ち

当たり前だけど実は知らない!? 犬がペロペロする「舐める」行動の心理について
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舐めるという行動一つをとっても、様々な気持ちや感情が含まれています。舐める行動について、今回は5つご紹介します。

(1)甘える

信頼できる人や大好きな人に出会ったときの興奮、気持ちの高揚から、口元を舐める行動が出現する場合があります。大好きな親に会ったときの、子犬の気持ちに近いと言えます。大好きな人に会えた喜びを表現する行動でしょう。

ただし、スーツや綺麗な洋服を着ていたり、外出するためにメイクをしていたりする場合は、とても困った行動になることが予想されます。おでかけ前と帰宅時で、それぞれのルールを愛犬と決めておく必要があるでしょう。

(2)情報収集

わんちゃんは主に嗅覚を使って情報収集する動物です。舐めながら相手の情報を得ようとしているときもあるのでしょう。健康状態や性別など、あらゆる情報をキャッチしようとしていると考えれています。

(3)学習

舐めることで「苦手なことから逃れられた」と学習している場合、「ちょっとこれ以上はもういやだな」と感じたときに舐め始めることがあるようです。筆者が飼っていたわんちゃんは、非常に優しい性格だったのですが、しつこい相手に対して“舐め舐め攻撃”をして回避していました。

(4)葛藤

どうしたいいのか分からないときなど、葛藤などが生じた場合にも舐める行動を示すことがあります。自分自身を舐めるときや、相手を舐めることもあります。例えば、おやつは欲しいけどお風呂場には入りたくない……というような葛藤状態のときに、自分の鼻をペロペロ舐めたり、体を舐めたりすることがあります。

(5)病気

問題行動の一つに、“常同障害”という病気があります。人の強迫障害に似ている症状で、強いストレスや不安、あるいは環境の変化が起こった際などに同じ行動を繰り返し続けてしまう障害です。自分自身を舐め続けて脱毛や皮膚疾患を起こす場合もありますし、異常な頻度で物や布などを舐めつづける場合もあります。また、身体的疾患である皮膚疾患やホルモン異常である可能性も否定できないでしょう。いずれも病気と紐付くケースが多いので、適切な診察と治療を受けさせるべきでしょう。

■舐める行動で注意すべき点

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いろいろな場面で舐める行動を示すことがありますが、注意すべき点を3つお伝えします。

(1)感染症には注意

わんちゃんの口腔内には、常在細菌が必ず存在しています。健康で元気な人であれば問題ないことも多いのですが、免疫が下がっている場合や乳幼児、高齢者などは注意が必要です。口と口でペロペロ舐め合う触れ合い方は、感染症にかかってしまうこともあるので、避けさせた方がよいでしょう。

(2)病気の可能性

前述の通り、病気の可能性もあります。常同障害をはじめ気になる症状があれば、早めに獣医師へ相談してください。

(3)ストレスの可能性

常同障害が出ていなくとも、葛藤やストレスの可能性も考えられます。どうして舐めているのか、行動を観察してみることも必要です。ストレス負荷を、知らず知らずにかけている場合もあるからです。判断が難しい場合は、行動学の専門家にわんちゃんの動画などを持参して相談する方法もよいでしょう。

ペロペロ舐めて大歓迎してくれている愛犬との接触は、とてもうれしい気持ちにさせてくれるスキンシップになることが多いです。しかし、感染症や公衆でのマナーの問題なども考えて対応する必要もあると思います。

わんちゃんは色々な場面で“舐める”行動を示すので、常日頃から注意しましょう。気になる行動があれば、獣医師に相談してくださいね。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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