これまで、犬は言語理解能力が高いことや、わんちゃんと人との共感性(オキシトシンループ)や共進化仮説など、人と犬との関係性の記事を書いてきました。
今回は人と猫との関係性について書き、犬とは違った意味で、人は猫の魅力にやられてしまう理由を考えます。
■1:猫の変化しなかった食性
犬は人との長い共同生活の歴史の中で(1億5千万年)、人と同じものが食べられるように、体の消化機能が人間に似てきました。犬はでんぷんの消化能力は狼の10倍(※1)で、肉食の狼から進化し、人と同様、雑食になったのです。
猫は犬のように人との関係も長いですが(1億年)、変わらず野生種と同様、純粋な肉食動物です。
■2:「ニャー」と「ゴロゴロ」
猫は飼い主に向かって「ニャー」と言いますが、実は自然界では母子間でしか発せられません。ゴロゴロは母猫から子猫が母乳をもらうとき、発せられる音声です。
■3:猫は人の言葉を理解する?
犬は30~100個の単語を理解します(※2)が、猫による人の言葉の理解能力は、実はまだよく分かっていません。しかし、犬に見られる言葉からモノを想像する能力(※3)は無いでしょう。
■4:人の指差し行動への理解
犬は人の指差し行動への理解がチンパンー以上に高いそうですが、どうやら猫にもあるようです(※4)。
■5:遊ぶ行動について
猫も犬の様にボールなどでよく遊びますが、成長した動物が遊ぶというのは、行動学では動物の家畜化(正式用語です)の一形態です(※4)。
■6:食事を得る行動
犬は食事が自力で取れないときに、飼い主に助けを求め飼い主を見るそうですが、猫は自力で解決しようとするそうです(※4)。
筆者は犬も猫大好きで、どちらとも一緒に生活しています。その中で日々感じることは、犬と猫に対する気持ちの違いです。世間でもよく、犬派・猫派などと言いますよね。
読書が趣味の筆者は、好きな作家が犬派か猫派かをよく調べます。犬派の作家は“犬と分かりあえる良さ”を、猫派の作家は“猫の気ままな良さ”を、それぞれの良さとしてあげているような気がします(※5)。
犬猫ともに、ペット化された動物です(見出し5)。犬は人と同じものを食べ(見出し1)、言葉を理解し(見出し3)、時に人を頼ります(見出し6)。まさに分かりあえる良さですね。
対して猫は、人を頼らず(見出し6)、それでいて時に赤ちゃんの様な態度をとり(見出し2)、言葉も分かっているのかどうか、よく分からない感じが我々を惹きつけるのですね。
作家の開高健は、猫の魅力を「のうのうと昼寝するが、絶対に妥協しない目をもつ」と言いましたが(※6)、猫は、ペットと野生の両方の性質を兼ね備えているのでしょう。そこが猫の魅力なのでしょうね。
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【参考】
※2 佐々木文彦(2008)『続ぼくとチョビの体の違い』学窓社.
※4 斎藤慈子(2018)『なぜネコは伴侶動物になりえたか 比較認知科学観点からのネコ家畜化の考察』The Japanese Jpurnal of Animal Psychology, 68, 177-88.
※5 『作家の犬(コロナブックス)』平凡社, 『作家の猫(コロナブックス)』平凡社, 『作家と犬(KAWADE夢ムック)』河出書房新社, 『作家と猫(KAWADE夢ムック)』河出書房新社.
※6 開高健『猫と小説家と人間』
【画像】
※ Anna Volgina, MarinaP, NatUlrich, Ulza, Liderina, Oleksandr Lytvynenko, Aaron Amat / Shutterstock
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