※2021年3月13日情報更新
日本人は、“犬”という言葉を、時に、人に対する侮蔑語として使います(〇〇の犬など)。しかし、それは逆説的ですが、日本人がわんちゃんを自分たちと同じような思考(賢さ)を持つ、同胞のような意識で接しているからです。
思考が似ていると思っているからこその、複雑な感情表現です。実は、犬はラテン語でcanisですが、このcanisにも、日本語と同様の侮蔑の意味が一部含まれています。民族を問わず、わんちゃんに対する想いは、同じなのかもしれません。
■犬の思考(賢さ)
(1)言語理解
人の言葉を覚えることは、動物の賢さの指標のひとつになります。一説には、わんちゃんは一般的に、30~100の単語を覚えると言われています(※1)。
わんちゃんの賢さを伺わせる、非常に有名な実験があります。ボーダー・コリーのリコのお話です。リコは言葉を200語も覚えた、とても賢いわんちゃんだったそうです。言語学者は、リコの前に名前を覚えている物と、未知の物(名前を知らない物)を置きました。そして、未知の物(初めて聞く名前)を持ってくるように指示を出しました。
するとリコは、初めて聞く単語と、初めて見た物をリンクさせて(想像して)、見事に持ってきました(※2)。報告された当時、3歳児なみの能力ではないかと報道されたのを覚えています。
(2)数の理解
面白い実験があります。わんちゃんに食べもの2つを見せて、つい立を置きます。しばらくして、つい立をとり、食べものを見せます。この時、気づかれないように食べものを1つ、もしくは3つと変化させたケースと、そのままの2つのケースだった場合とを比較観察します。
するとわんちゃんは、明らかに数が変化した時の方が、食べ物を見つめる時間が長かったそうです。
わんちゃんが数を数えられるかは、議論のあるところです。しかし、数を理解する(多いか少ないか)ことは、可能かもしれません(※3)。
■犬の脳の構造
(1)大きさ
犬の脳の重さは70~150gで、体重の1/100~1/400。人は1,200-1,500gで、体重の1/48だそうです(※1)。
(2)特徴
基本的な構造は人に似ていますが、ニオイに反応する嗅脳(わんちゃんの場合は、嗅球と一般的に表記します)が非常に発達しています。※ 赤線で示している部分。
人は、直立歩行で地面から顔が離れた生活をするようになり、この部分が退化しました。
(3)左脳と右脳の働きの違いはあるか?
以前は、わんちゃんの大脳は人の様に左右に分かれてはいるが、人の様な明確な働きの差は無いと考えられていました。しかし、近年のfMRI(機能的MRI)検査技術の発達で、わんちゃんの大脳の機能処理がいろいろと確認されるようになってきました。
言語に関して言うと、わんちゃんは言葉の意味を左脳で、言葉のイントネーション(感情)を右脳で処理しています。これは、人の脳の機能にもよく似ています(※4)。
言葉を使わないのに、言葉を理解できること、言葉に関して、人の様な脳の処理機能があるということは、わんちゃんは私たち人と、本当につながっている動物であるといことが分かりますね。
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【参考】
※1 佐々木文彦(2008)『続・ぼくとチョビの体の違い』学窓社.
※2 Kaminski, J et al. (2004). Word Learning in a Domestic Dog: Evidence for “Fast Mapping”. Science. 304, 1682-1683, PMID15192233.
※3 West, R.E. et al. (2002). Do domestic dogs show any evidence of being able to count? Animal Congnition. 5 183-186, PMID12357291.
※4 Andics, A et al. (2016). Neural mechanisms for lexicalprocessing in dogs. Science. 353(6303), 1030-1032, PMID27576923.
【画像】
※ 北森ペット病院
※ xkunclova, Bachkova Natalia, Viorel Sima / Shutterstock
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