※2021年3月20日情報更新
日常の物音や話し声や吠え。わんちゃんと人、あるいはわんちゃん同士の重要なコミューニケーション手段のひとつです。
「わんちゃんはどうやって音や声を聞いているの?」「あれ、ひょっとして聞こえていない?」と思ったときの対処法についてお伝えします。
■犬はどうやって音や声を聞いているの?
音は、わんちゃんの耳介(耳たぶの部分)で音波の形で集められ、耳道を通ります。耳道に入ってくる音波は鼓膜で振動に変わり、その振動は中耳の耳小骨により、内耳の前庭に伝達されます。
振動は最終的に内耳で神経を興奮させ、この刺激が脳に届くことで音が脳に伝わります。
わんちゃんの聴力は人間より優れており、−5デシベル(dB)の音も聴くことができると言われています。※ 0dBは人が聞き取れる限界の極めて小さな音。
また、聞くことができる音域も人の64ヘルツ(Hz)から23キロヘルツ(kHz)に対し、わんちゃんでは67Hzから45kHzと高音域を聞くことに長けています。
まだ研究データは少ないのですが、犬種による聴力の差はあまりないのではないかと言われています。
■聴力低下のサインとそんな時に考えられる原因と対策
聴力の低下は、原因により聴覚系の障害(遺伝性の難聴、騒音外傷、老齢性の難聴)と耳炎によるものに分けられます。しかし、その診断には、耳鏡検査や場合によっては、ごく少数の動物病院でのみ実施可能な聴力検査が必要となる場合もあります。
遠くで名前を呼んでも反応しなくなった、インターホンに反応しなくなった、などの聴力低下のサインを認めた場合は、まずはかかりつけのホームドクターで耳鏡検査を受け、耳炎(外耳炎、中耳炎)や鼓膜の異常がないかのチェックを受けることをおすすめします。
■こんなことでもなるの!? 実際にあった聴力低下の意外な原因
聴力低下の原因は、内耳の聴覚系のトラブルだけでなく、以下のような外耳や鼓膜、中耳のトラブルによって起こることもあります。
耳道を塞ぐようなものがある場合、音波が鼓膜まで正常に届かず、鼓膜の振動が起こりません。その結果、音が聞こえづらい状態となります。
(1)耳道のポリープ
耳炎の慢性化などにより、耳道内に発生するポリープ。時にはサイズが増大し、耳道を完全に塞いだり、二次的な感染により液体がたまったりします。
(2)耳の中の液体貯留
中耳炎や慢性化した外耳炎による細菌感染などで、耳の中に分泌液が溜まることがあります。
(3)耳垢の塊
慢性化した外耳炎などにより、堆積した耳垢が塊状になり、耳道を塞ぐことも少なくありません。塊となった耳垢は、自ら排出することができなくなります。
(4)点耳薬によるもの
点耳薬、特にドロッとした粘度の高いものは吸収されるまで耳道に残るため、一時的に耳が聞こえづらくなります。
いかがですか?
今回述べたように、外耳炎が大元の原因で聴力の低下を起こすことも少なくありません。その予防として、おうちでの日々の耳のケア、わんちゃんの物音や声などへの反応性の確認が大事になってきます。
また、困ったときには、まずはかかりつけ医や耳を専門にしている動物病院への相談が必要となるので、なるべく早く受診するようにしましょうね。
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【参考】
※ Strain GM. Physiology of the auditory system. (2011). In: Deafness in dogs and cats. Wallingford (UK): CAB International.
※ ルイス・N.ゴットヘルフ(2005)『犬と猫の耳の疾患』(小方宗次監訳)文英堂出版.
※ Muller and Kirk's Small Animal Dermatlogy 7th Ed. ELSEVIER.
【画像】
※ Natee K Jindakum, Richard Peterson, Ermolaev Alexander, Angyalosi Beata / Shutterstock
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