皆さんのなかで、猫とネズミの結びつきって強いのではないでしょうか? 『トムとジェリー』、『ドラえもん』、干支にまつわる言い伝えなど、猫とネズミが一緒に登場するお話って多々あると思います。猫がネズミを追いかけている状況もイメージしやすいですよね。
今回は、都会の猫とネズミに関する興味深い研究をご紹介します。この研究は、アメリカ・ニューヨークのフォーダム大学のパーソンズ博士らによって実施されていて、猫が都会のドブネズミを捕食するのかどうかについて調査しています。
■猫はハンティングをする動物

ライオン、トラ、チーター、ヒョウなどは、代表的なネコ科の動物です。ネコ科の動物は肉食動物であり、基本的に全て捕食動物とされます。狩りに適した身体的特徴を持ち、獲物を捕らえている様子をテレビ等で見たことがある人も多いでしょう。
これらの大型のネコ科動物はもちろんですが、一般的な飼育猫と同じサイズのネコ科動物も立派な捕食動物です。野生の猫はげっ歯類や小鳥などを捕食しており、多くの野生動物の脅威の対象となっています。
■都市のドブネズミ問題、ドブネズミの特徴

都市にはたくさんのドブネズミがいます。ニューヨークもその一つで、膨大な数のドブネズミの存在が大きな問題となっています。都市には人が集まるため、様々な感染症を媒介するドブネズミは衛生面での問題が大きいといえるでしょう。
都市に棲息しているドブネズミは、野生下にいるネズミと大きさがかなり異なります。野生下にいるネズミは、栄養が十分に摂れないこともあり、体重は20~35gとかなり小柄です。一方、都市にいるドブネズミは、体重200~300gと10倍近く重く巨大です。
■猫は都市のドブネズミ駆除に有効?

野生の猫が、自然界にて様々なげっ歯類や鳥類を捕食していることから、都市部のドブネズミ駆除に猫が利用できるのではないかと一説では考えられています。パーソンズ博士らは、猫が本当にドブネズミを捕食するのか、廃棄物管理施設にカメラを仕掛けて調査しました。
約半年間(2017月12月~2018年5月)の調査期間のうち、306本の動画が撮影されましたが、そのうち猫がドブネズミの捕食に成功した回数はたったの2回、捕食を試みたが失敗した回数が1回、追いかけた回数が20回だったそうです。パーソンズ博士らは、この捕食成功回数はとても少ないと述べています。
また、こちらの動画にあるように、ドブネズミを見かけても全く興味を示さない猫の様子も観察されたようです。
■猫はネズミに興味がない?

多少の捕食例があったため、猫が全くドブネズミに興味を示さないわけではありません。
しかし、実際に猫が捕食に成功した回数はあまりに少なく、ドブネズミがいても興味を示さない様子も観察されました。その理由として、パーソンズ博士らは、“都市のドブネズミは非常に体格が大きいこと”、“反抗されると猫も何らかの傷を負うリスクがあること”、“都市には十分な食料があるため捕食する必要性があまりないこと”を述べておりました。
■猫はドブネズミ駆除に使うのは推奨されない?

以上の結果からすると、猫の利用はドブネズミ駆除にはあまり有効ではないといえます。問題となっているドブネズミ以外の動物を捕食してしまう可能性もありますし、外に猫を放浪させることにより猫の感染症が拡がってしまう可能性もあります。そのため、猫を都市のドブネズミ駆除に使うことは推奨されないでしょう。
今回は、猫とドブネズミに関する興味深い研究をご紹介しました。野生下の猫は、様々な動物を捕食している例がありますが、どうやら都市のドブネズミに対しては捕食をあまりしないようです。
日本でも東京や大阪などの都市ではドブネズミは問題となっています。ドブネズミ問題を解決するためには一体どうしたらよいのでしょうか……。
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【参考】
※ Temporal and Space-Use Changes by Rats in Response to Predation by Feral Cats in an Urban Ecosystem
【画像】
※ Sergey Zaykov,Konstanttin,IrinaK,Xolodan,Janyaruk Pongpom,SusaZoom / Shutterstock
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