わんちゃんを迎えたら絶対必要になるのがお散歩に行くときの道具。そのときに首輪かそれともハーネスか、どちらを選ぶのが良いのか気になったことはありませんか?
今回は獣医師である筆者が自身の経験やデータを元に、わんちゃんのしつけや健康面を考慮した選び方について解説します!
■首輪はつけておいた方が安心?
首輪をつけておくメリットの一つとして、わんちゃんが迷子になったときに、迷子札付きの首輪がつけられていると、身元がわかりやすいという点があります。日本ではとくに地震や津波などの災害が多く見られており、東日本大震災のときは、迷子になったわんちゃんがたくさんいました。
このような状況ではマイクロチップも役に立ちますが、個体識別のためには特殊な機械が必要で、設備が整っていない場合があります。そんなときに首輪もついていると、一般の飼い主さんが保護した場合でも、インターネット上で写真が掲載されて発見されやすくなる場合があります。
そのほか目的に応じて様々なタイプがあり、しつけを行う目的で首輪が使われることもあります。
■首輪にはどんなタイプがあるの?
(1)普段用
ずっとつけたままでも問題を起こすことがないタイプの首輪です。
・ブレイクアウェイカラー(Break Away Collar)
セイフティカラー(Safety Collar)と呼ばれることもあり、首輪が引っかかったときにケガをしないように、簡単に外れる工夫がしてあります。飼い主さんと一緒にいるときは、飼い主さんが手で外せます。
脱走したり災害などで行方不明になったりしたときなどに、フェンスや木の枝に首輪が引っかかってしまうと、わんちゃんは自分で首輪を外すことができず、何日も動けない状態になってしまいます。
実際に一般の首輪をつけていたわんちゃんで、首輪を外そうとして暴れたときに前肢が首輪に入ったり、口の中に首輪が入ったりするなどして、ケガをした例も報告されています。
人目につく場所であれば助けてもらえますが、人通りの少ない場所でそのようになってしまった場合には、食べ物や水も得られず命の危険にさらされることにもなりかねません。
ブレイクアウェイカラーは、非常事態が起きた際に力がかかることで、首輪が外れるような仕組みになっています。普段お家でお留守番させるときにも、安心してつけたままにしてあげられます。
装着するときは、指が首輪のなかに2~3本入るかどうか確認しましょう。きつすぎることもなく、なおかつ緩すぎて外れやすいなどの問題がないように気をつける必要があります。万が一のときに備えて、首輪に迷子札をつけることも忘れないようにしましょう。
(2)しつけ用
しつけを行うときに利用されるタイプの首輪です。少し専門的なお話になります。
・チョークカラー(Choke collar)
名前は聞いたことがあるという飼い主さんもいるかもしれません。“Choke”とは“窒息”という意味の英語で、Collarは首輪を意味します。鎖(Chain)のつながったタイプが典型的なので、チョークチェーン(Choke chain)と呼ばれることもあります。
間違ったことをしたときに引っ張ることで首に刺激が伝わり、行って良いことと行ってはいけないことを理解させる目的で、しつけに利用されることがあります。
ただし、正しい向きでつけないと首輪が極端に締まり、そのあとリードを緩めても首が締められたままで咳き込むことがあるため、使い方には注意が必要です。
締まる部分が半分になっているハーフチョークも含め、APDT(Association of Pet Dog Trainers:英国ペットドッグトレーナーズ協会)では、眼圧(眼の圧力)を上げるなどの健康上の問題を起こすことから、一般の飼い主さんが利用することは推奨していません(※1・2)。
(2)ヘッドカラー(Head Collar)
特に、大型犬の引っ張りグセを直すためによく利用されている首輪で、ジェントルリーダー(Gentle Leader)と呼ばれることもあります。※ 画像はこちらをご参照ください。
見た目は口輪のように見えますが実際は口輪ではなく、鼻すじの奥の方を紐で抑えているので、口は自由に開くことができます。ただし長時間の利用は負担になるため、日常的につけっぱなしにすることはせず、お散歩やトレーニング中のみに利用します。
チョークカラーとは異なり痛みを加える危険性がないため、ヘッドカラーはAPDTのほか、RSPCA(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals:英国動物虐待防止協会)でも推奨されています(※3)。
■どんなときにハーネス(胴輪)が必要?
首を圧迫することがなく、前肢から脇の部分に通して着せるようなH型のタイプが一般的なハーネスです。お散歩のほか、欧米では車でお出かけする際の、シートベルトへの装着にも利用されています。
立っているときよりも座っている状態のときに装着してサイズを調整したほうが、適度な余裕ができてわんちゃんにとってはちょうど良い締まり具合になります。
とくにパグ、ペキニーズなど、一部の犬種は元々気管が狭いため、気管がつぶれて呼吸が苦しくなってしまう“気管虚脱”いう気管の病気にかかるリスクが高いことが報告されています(※4)。
また、首輪をつけたわんちゃんがお散歩のときにリードを強く引っ張ると、首が締まって咳をするようになったり、気管がつぶれて気管虚脱になるリスクが高まると、獣医師の間では言われています。
そのため、すでに咳をしていたり、気管虚脱になりやすく引っ張りグセのあるわんちゃんの場合は、首輪よりもハーネスを選ぶことをおすすめします。
■アレルギーになりにくい素材や硬さも確認しよう!
首輪やハーネスどちらでも、本皮やナイロン・布などのタイプがあります。
アレルギーのわんちゃんの場合は、病気を悪化させないようにアレルゲンになりにくい素材を選びましょう。例えば、牛肉アレルギーの場合は、牛皮以外の素材の方が安心です。
また、素材があまり固すぎると、首や脇など当たっている部分が擦れて皮膚が赤くなったり、毛が抜けたりしてかゆみの原因になることがあるので、ある程度柔らかい素材を選びましょう。
汚れが溜まると雑菌が繁殖して皮膚病の原因になりやすいため、最低でも1週間に1回は外して洗濯機で洗ったり、濡らしたタオルで拭いたりして、清潔に保つことをおすすめします。洗ったあとは、よく乾かしてくださいね。
首輪やハーネスを選ぶときは、使う目的やデザイン、素材などがわんちゃんに合っているか考慮すると決めやすくなります。わんちゃんとより楽しく生活していくために、ぜひ参考にしてみてくださいね!
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【参考】
※1 Choke Chain Leaflet: Let’s Teach Them, Not Choke Them. Association of Pet Dog Trainers UK.
【画像】
※ InBetweentheBlinks, Recless media, rodimov, Natalia Zhurbina, ElRoi, Angyalosi Beata / Shutterstock
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