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【獣医師執筆】手術は本当に必要?獣医師が教える去勢のメリットとデメリット

石井万寿美

獣医師
石井万寿美

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【獣医師執筆】手術は本当に必要?獣医師が教える去勢のメリットとデメリット

20201013日情報更新

わんちゃんの去勢手術について、飼い主さんは一度は考えたことがありますよね? 平成23年に環境省が行った“犬の不妊去勢措置の実施”に関するインターネット調査(※1)では、日本では約44%のわんちゃんが不妊・去勢手術を受けています。

現在は室内飼いで、大人しいわんちゃんが増えたので、去勢は必要ないと思われることも多いです。そのようななか、去勢についてどのように考えるべきなのでしょうか? 今回は去勢のメリットとデメリットを獣医師の筆者がご説明します。

 

■そもそも去勢手術とは?

出典: https://www.shutterstock.com

去勢手術とは男の子のわんちゃんの精巣を摘出する手術です。精子をつくる精巣を摘出することで、わんちゃんは生殖機能を失います。それに加え、精巣では男性ホルモンの分泌を行っているので、去勢手術をすることでそのホルモンがもつ役割もなくなります。その主な男性ホルモンのひとつにアンドロゲンがあります。その役割は、前立腺の発育、筋肉増強や骨の成長、またテリトリー意識が強くなるなど。これを失うことで、さまざまなメリット・デメリットあります。

手術自体は、数センチ(小型犬はもっと短い)切るだけで済み、時間は15分程度です。実際の去勢手術では麻酔を使いますので、わんちゃんが手術中に痛みを感じることはありません。事前に血液検査や心臓の検査などをして、わんちゃんが麻酔に耐えられるようであれば、事故も少ないと言われています。

 

■去勢手術のメリットは?

それでは、去勢のメリットについてお伝えします。去勢をする一番のメリットは、病気の予防。精巣を摘出して精巣そのものがなくなるので、以下のような病気を防ぐことができます。

・精巣の病気(精巣腫瘍 精巣壊死)

・前立腺の病気(前立腺肥大、前立腺がん)

・肛門の周りの病気(会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫)

・停滞精巣(正常な位置に精巣がない)のわんちゃんの精巣がん ※シニアのわんちゃんに多いですが、去勢により防ぐことができます

 

■去勢手術のデメリットは?

出典: https://www.shutterstock.com

一方、去勢には以下のようなデメリットもあります。これらのデメリットは、生活習慣に気を付けたり、去勢の時期に注意したりすることで、防げることも多いです。飼い主さんがきちんとした知識をもつことが大事ですね。

・肥満になりがち

去勢をする事により、男性ホルモンであるアンドロゲンが出なくなるので発情はしなくなり、食べることに走ったり、これまで生殖機能の維持に使われていたエネルギー消費がなくなるためともいわれています。その結果、去勢すると肥満になりがちというデメリットがあります。もちろん急に太るということはなく、だんだんと肥満になるので、飼い主さんが食事量や運動に注意してあげることで、肥満になることを防ぐことができると考えられます。

・大型犬は股関節形成不全に注意

早期に去勢手術をすると、アンドロゲンが出なくなるので、骨の形成が不完全になることがあります。1歳を過ぎた頃に行えば、比較的防げることが多いです。特に、ゴールデンレトリーバーなどの大型犬は、股関節形成不全をもっているわんちゃんが多いので注意が必要です。

・前十字靭帯損傷

1歳までに去勢手術をすると、骨や筋肉の発育が不全になるので前十字靭帯損傷(膝の靭帯が傷つくケガ)になりがちです。1歳を過ぎてからの去勢をすることで、起こりにくくなります。

・ある種のがんは増える可能性も

最近の研究でゴールデンレトリーバーなどは、去勢を行う年齢によっては、ホルモンの変化の関係でリンパ腫が増えるという報告もあります(※2)。

 

いかがでしたでしょうか? 去勢には病気を予防するメリットがある一方、デメリットもあるので、飼い主さんが正しい知識をもつことが大事。特に、去勢手術のタイミングは重要です。かかりつけの先生に相談しながら去勢を行うかどうかを決めていきましょう。

 

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考・画像】

※1 「犬猫の不妊去勢の義務化について」(環境省

※2 M. Christine Zink, et al. Evaluation of the risk and age of onset of cancer and behavioral disorders in gonadectomized Vizslas. J Am Vet Med Assoc, 2014; 244: 309-319.

※ Anna Hoychuk,  PRESSLAB, otsphoto / Shutterstock

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