近年、愛犬や愛猫を取り囲む医療は日々進歩しており、最先端な治療を受けられる病院も誕生しています。そこで今回は、京都中央動物病院で行っている最先端の骨折治療法について、院長の村田先生にお聞きしました。
■最先端の骨折治療・ロッキングプレート法とは?
古川:「こちらの病院では骨折治療にも最先端の技術が活用されていると伺ったのですが、どのような治療でしょうか?」
村田先生:「当院では従来の方法による骨折治療ももちろん行っていますが、“ロッキングプレート法”による新しい骨折治療も導入しています。」
古川:「“ロッキングプレート法”……一般の人はあまり聞きなれないですね。その治療法とは具体的に、どのようなものなのでしょうか?」
村田先生:「従来からのプレートとスクリューによる骨折治療ではプレートとスクリューを圧迫により骨に固定するものでした。ロッキングプレート法は、ロッキングプレートと言われる特殊な溝があるプレートと、ロッキングスクリューと言われるスクリューのヘッド部分までねじ山がきってあるスクリューを用います。このため、プレートとスクリューが一体化し、従来からのプレートとスクリューの圧迫力だけによる固定と比較し、固定力を高めることができる治療となっております。」
古川:「ロッキングプレート法はどんな骨折に有効なのでしょうか?」
村田先生:「骨折は基本的に骨折の存在する骨を固定することにより治癒が得られます。
この骨折を固定するために、今までは骨片に対して3本以上のスクリューで、6つの骨皮質を通過させることが基本とされておりました。このロッキングプレート法は2本のスクリューで4つの骨皮質を通過させると、従来からのスクリュー3本を用いたものより固定としては強固となります。つまり、1本スクリューを少なくすることが可能となり、より小さな骨折を固定するために優れた選択肢となります。小さな骨片とは、より小型犬の骨折や関節に近い部位での骨折に非常に効果的であると言えます。」
古川:「そうなんですね。骨折治療の選択肢のひとつとして、ロッキングプレート法があるのですね!」
村田先生:「必ずしもロッキングプレート法が良いわけでなく、骨片のサイズ、太さ、骨折部位、骨折の種類や開放骨折の有無などにより適した治療法が異なってきます。
骨折の治療は、ロッキングプレート法やDCP法などのプレート法、創外固定法、ピンとワイヤー法、スプリントなどによる外固定法と大きく4つに分類されます。それぞれの方法には、アドバンテージとディスアドバンテージがあり、先ほど述べた様々な条件を考えながら、どの治療法が適しているかを慎重に考えることが失敗の少ない骨折の治療法となります。」
古川:「なるほど、やはり治療法は獣医師さんによくよく相談して決めるのが一番ですね。」
■犬種や犬と猫によって異なる、骨折の特徴とは?
古川:「たくさんの治療法があることをお聞きしましたが、飼い主さんならきっとそのわんちゃん・ねこちゃんにもっともあった治療法を選びたいと思います。特に骨折に注意したいのは、どんな犬種なのでしょうか?」
村田先生:「トイプードルやイタリアングレイハウンド、チワワ、パピヨン、ポメラニアンなどが多いと感じます。これらの犬種に共通しているのは、テーブルや階段、ソファからの飛び降り、わんちゃんを抱っこしていての落下、自転車のカゴからの飛び降りなどによる前肢の骨折である橈尺骨骨折が一番多いケースとなります。」
古川:「わんちゃんは日常生活での飛び降り等が原因で骨折してしまうことが多いのですね。ちなみに、ねこちゃんはどのような骨折が多いのでしょうか。」
村田先生:「ねこちゃんはわんちゃんとは大きく状況が異なります。ねこちゃんの骨折症例は少ないですが、骨折が発生する原因が、交通事故やビルなどからの高所からの落下などであり、骨折以外に肺挫傷、横隔膜ヘルニアや頭部外傷など全身に様々なダメージがある場合が多くなります。そのため骨折の治療前に状態を安定化する必要が生じます。また、骨折の種類も単純な骨折ではなく、開放骨折や複数の骨折片が組み合わさる複雑骨折が多くなり、骨折治療の難易度が上がるため注意が必要です。」
古川:「ねこちゃんは骨折は少ない半面、骨折した場合は重篤な状態になりそうですね。」
村田先生:「ねこちゃんの場合は単純な骨折ではなく、関節骨折や複数の骨折が組み合わされる複雑骨折が多くなり、骨折治療の難易度が上がるので注意が必要です。」
古川:「私も3匹の愛猫と生活しているので、気を付けていきたいです。今回は、とても貴重なお話、ありがとうございました!」
いかがでしたでしょうか? 大切なわんちゃん・ねこちゃんが骨折してしまうのは避けたいものです。しかし、骨折してしまった場合は、獣医師さんと相談して、最適な治療をうけさせてあげたいですね。
■親子で楽しめる京都市獣医師会のイベント
今回お話をいただいた村田先生は、京都市獣医師会の副会長としてご活躍中。京都市獣医師会では、京都夜間動物救急センターを運営しており、この京都夜間動物救急センターの運営委員会の委員長でもあります。
京都市獣医師会では“人と動物の共存できる京都を目指して”をテーマに、動物についての様々なイベントが開催されています。
古川:「具体的にはどのようなイベントが実施されているのですか?」
村田先生:「例えば、動物愛護週間中のイベントとして、9月22日には京都の岡崎公園で“京都アニラブフェスタ”が開催され、このイベントでは動物健康相談とドックマッサージのブースを出展しました。当日は多くの相談とマッサージを実施しました。また、9月24日には京都市動物園にて親子で参加できる“動物サーキットクイズ”を開催しました。クイズだけでなく、動物に関する健康相談も同時に行いました。晴天に恵まれたこともあり、用意していたアムール虎のオク君の3,000枚のクリアケースがなくなり大盛況となりました。
また、毎年3月には市民に向けて“京都動物フォーラム”を開催しております。このイベントでは人気コーナーの“小中学生による獣医体験コーナー”があります。本来は小中学生がターゲットなのですが、小学生以下の小さなお子様やときには大人までも楽しくエコー検査や聴診、顕微鏡検査などを体験していただきます。その他に、市民向けに学術的な情報を発信する公開講座や盲導犬の紹介コーナー、景品の当たるクイズラリーなどの人気企画があります。また、昨年からは“ペット自慢コンテスト”もスタートし、おもしろく、そして白熱したコンテストが繰り広げられました。」
ペットコンテストは見応えばっちりとのことで、要チェックです! 他にもさまざまな企画があり、ぜひわんちゃん・ねこちゃんと一緒に参加してみたいですね。今後も京都市獣医師会の活動に注目です。
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【取材協力】
※ 京都中央動物病院院長 村田裕史先生
平成9年3月 麻布大学卒業。大阪市内そして吹田市で動物病院に4年間勤務後、大阪の箕面市にある北摂夜間救急動物病院にて主任獣医師を3年間務め、平成16年5月に京都中央動物病院を開業。京都中央動物病院では、外来診療とともに、軟部外科や整形外科などの各種の外科手術、歯科や眼科などの各種の処置、内視鏡検査や画像診断などを行っている。
【画像】
※ 京都中央動物病院
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