みなさんの「愛犬のこんなかわいいしぐさが好き!」という中に、舌の先をちょこんと出している姿はありませんか? たまたましまい忘れてしまった舌を出していたら、飼い主さんが「かわいい!」と誉めてくれた。それから舌を出す習慣がついたという事例もあります。
また、わんちゃんがリラックスをしているときには顔の筋肉も緩み、口を開けて舌を見せていることがあります。自然と笑顔になり、その子がハッピーなんだということが分かります。
このように、舌が感情表現の一部としても使われているのをご存じでしたか? そこで今回は、わんちゃんの“舌”について、詳しくお話をしていきます。
■わんちゃんの舌の役割について
私たち人間にとって舌はどのような役割があるだろう?と考えると、真っ先に浮かぶのは「食べ物を食べたり、水を飲んだりするときに必要な消化器官、味を感じるところ」ではないでしょうか?
わんちゃんにとっても大切な消化器官の1つであることは変わりませんが、わんちゃんの舌には他にも複数の役割が存在します。わんちゃんの舌の役割についてご紹介したいと思います。
(1)食べ物を食べたり飲んだりするときに使う消化器官
舌は筋肉でできています。私たちと比べると長い舌を持っており、ご飯を巻きこみ、包んで、口の中にいれるときにも大事な役割をしています。お水を飲むときには長い舌を上手に使い、水をすくいこみようにして飲みます。
(2)声を発生するときに使う器官
鳥たちはさえずったり、人のまねをしておしゃべりをすることができますが、わんちゃんには限られた声色しか発声することができません。これは舌の構造が異なることも関係しています。
とはいえ、わんちゃんたちも自分の感情を相手に伝えるためにさまざまな声色を使っていると思います。甘えたいとき、怒っているとき、嬉しいとき、さみしいときなど、感情を表すときにも舌が活躍します。
(3)味覚を感じる
わんちゃんの舌の表面にはたくさんの味蕾細胞(みらいさいぼう)という、味を感じる器官があります。人と比べるとこの細胞は少なく2,000個弱といわれています。わんちゃんは食べ物のおいしさを計るとき、味よりも香りや食感を重視しています。
わんちゃんは特に甘みを感じることができる味蕾細胞が多く、酸味や塩辛味についてはあまり敏感ではありません。わんちゃんが甘党であると気づいている方も多いのではないでしょうか?
(4)体温調整の役割
わんちゃんは人のように汗をたくさんかいて体温調整をすることができません。わんちゃんの舌には特に血管分布が豊富なため、「ハーハー」とパンティグをして耐熱の放散を行います。体温を下げるために舌は重要な器官です。
(5)感情表現の役割
わんちゃんが舌舐めずりをするしぐさを見たことはありませんか? 著者の愛犬も「ごはん食べる?」と聞くとぺろっと舌舐めずりをします。この場合はお腹がすいていてご飯を食べたいという心理からくる行動ですが、同じ舌舐めずりでも緊張をしているときにわんちゃんは舌舐めずりを行います。これは葛藤行動を言って自分自身の緊張をほずぐときに見られるしぐさです。
また逆に、相手のわんちゃんをリラックスさせるために舌舐めずりをすることもあります。このように舌は、自分の感情を表現するときにも活用されています。
わんちゃんの舌には私たちが思っている以上にたくさんの役割があります。健康のバロメーターとしても、ぜひ日々わんちゃんの舌の色や質感を観察してみてください。
通常は薄いピンク色をしていますが、いつもより赤みがおびているときは体温が上昇している、または炎症があるかもしれません。逆にいつも以上に舌が白い場合は、貧血や心疾患がある可能性も考えられます。
日々のわんちゃんの小さい変化を見逃さずに、毎日健康で元気に暮らしてもらいましょう!
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【参考】
※ K.M.Dyce・W.O.Sack・C.J.G.Wensing『獣医解剖学』(内昭二・杉村誠・西田隆雄訳)近代出版
【画像】
※ Sidra Monreal Photography, Barbi Macon Photography, Jaromir Chalabala / Shutterstock
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