冬になると、猫では泌尿器系の病気、いわゆる“おしっこの病気”が増えると言われています。そこで今回は、獣医師の西原克明先生に、冬に多くなる猫の泌尿器の病気についてお聞きしました!
■なぜ冬に注意しなければいけないの?
冬に多く見られるおしっこの病気は、膀胱炎や尿路結石症などがあり、それらをまとめて“下部尿路疾患”と呼びます。動物の泌尿器は、腎臓、尿管、膀胱、尿道があり、下部尿路疾患はそのうちの膀胱と尿道に異常が見られる病気です。
良く見られる傾向として、冬になると寒さのために猫は運動量が減り、さらにはお水を飲む量が減ることがあります。すると、おしっこの量も回数も減り、さらにおしっこが濃くなってしまいます。
おしっこの回数が減ると、膀胱炎のリスクが高くなりますし、おしっこが濃くなると、尿路結石などの病気のリスクが高くなってしまいます。さらに運動量が減ると、太りやすくなります。肥満はやはり下部尿路疾患のリスクになってしまいます。
このような原因で、冬は下部尿路疾患のリスクが高くなる傾向があると感じています。実際に筆者の動物病院でも、冬になると、おしっこの症状で来院する猫が非常に多くなります。
■具体的な症状は?
下部尿路疾患の症状は、血尿、頻尿、有痛性排尿、不適切な場所での排尿、尿路閉塞です(※)。実際は、これらの症状が組み合わさって見られることが多いです。ただし尿路結石症では、初期は無症状のことがあります。
・血尿
その名前の通り、おしっこに血が混ざる症状です。血尿には、おしっこ全体がピンクや赤色になる血尿と、おしっこの一部に血液のかたまりが見られる血尿があります。
・頻尿
なんどもトイレに行ってしまう症状です。つい数秒〜数分前にトイレに行ったばかりなのに、またすぐにトイレに入って、排尿姿勢をとります。しかし、膀胱にはおしっこが溜まっていないので、実際にはほんの少ししか尿は出ていません。
・有痛性排尿
おしっこをするときに痛がって鳴いたりする症状です。
・不適切な場所での排尿
いつものトレイ以外の場所でおしっこをしてしまう症状です。
・尿路閉塞
見た目の症状は頻尿と同じです。しかし、尿路閉塞は早期に治療しないと命に関わる状況に陥ってしまうこともあるので、すぐに動物病院を受診しましょう。
■できる対策について
冬の下部尿路疾患を予防する方法として、運動量を増やす、飲水量を増やす、療法食を取り入れる、というものがあります。
・運動量を増やす
いつもより遊ぶ時間を増やすなどして、運動量を増やすことで猫が水を飲むようにしたり、下部尿路疾患のリスクとなる肥満を予防したりします。
・飲水量を増やす
お水の飲む場所を増やす、食器からの飲水だけでなく、蛇口などでも飲水できるように工夫することで、飲水できる機会を増やしてあげるようにします。
・療法食を取り入れる
療法食には、尿路結石を予防するもの、特発性下部尿路疾患を予防するものがあります。それらの療法食はほとんどが総合栄養食の基準を満たしているので、病気にかかってからではなく、予防的に普段から食べさせることもできます。
冬は猫のおしっこの病気が増える時期ですが、日常生活の工夫で予防することは可能です。また、おしっこの症状が見られたときには、中には緊急的な治療が必要な場合もありますので、なるべく早く動物病院を受診するようにしましょう。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
※ Debra F. Horwitz & Jacqueline C. Neilson(2012)『小動物のための5分間コンサルタント』(獣医動物行動研究会訳)インターズー.
【画像】
※ Syda Productions, Xseon, New Africa, Cynthia Valdez / Shutterstock
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