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【獣医師執筆】なんでペロペロするの?犬の「舐める」行動について獣医師が解説

船田治子

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【獣医師執筆】なんでペロペロするの?犬の「舐める」行動について獣医師が解説

2020729日情報更新

「ひたすら人の肌を舐める」「クッションなど、30分以上ペロペロ舐めている」など、SNSで犬の“舐める”行動について質問をいただきました。

そこで今回は獣医師の船田治子先生に、その理由について回答いただきました! 質問の内容は、いずれも犬の常同行動に当てはまるそう。人と暮らしている様々な動物に起こりうる異常行動のひとつなんですよ。

当たり前だけど実は知らない!? 犬がペロペロする「舐める」行動の心理について”もあわせて読んでみてくださいね。

■常同行動の症状

なんでペロペロするの?犬の「舐める」行動について獣医師が解説
出典:https://www.shutterstock.com/

目的もなく同じ行動を延々と繰り返します。例えば舐める(布製品、人肌、自分の体の一部分)、自分の尾を追いかける、回転・旋回をする、穴を掘る、空気を咬む、ハエ追い行動などが見られます。

常同行動が持続的に繰り返され、制御ができずに犬にも飼い主さんにも支障が出るようになることを常同障害と言います。自分の体の一部分を傷になるまで舐めることもあります。

■常同行動の原因

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常同行動の原因として、慢性的なストレスや葛藤が疑われます。また、神経伝達物質の異常や遺伝的な問題が加わると、症状が出やすいと考えられます。

他にも、皮膚疾患があって体に痛痒い場所があると、犬はその部分を舐めたりかじったりします。また手術後の痛みで手術創の周りを舐めたり、包帯やギブスをかじったりすることがあります。

こういったことがきっかけとなり、常同障害に発展することもあります。

■常同行動の対処法

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犬は飼い主さんに可愛がられて共に生活していても、人為的な飼育環境においては本能的な行動を制約されていたり、禁止されたりしています。

そのストレスの感じ方には個体差がありますが、常同行動が見られるのであれば、その原因を探し修正していく必要があります。

常同行動、常同障害は精神的疾患であり、しつけだけで改善することはなかなかできません。薬物療法(抗うつ薬)が必要なこともあります。

特に自分の体の一部分を舐める行為は自己障害に至るかもしれませんので、傷ができる前に動物病院でみてもらいましょう。足先を舐めている場合は、皮膚疾患がないかを確認してもらいましょう。

■日頃からできる対応

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(1)環境修正

生活環境

・サークルやケージの大きさは適切ですか?

・サークルから出してあげる時間は短か過ぎませんか?

・安心して眠れる場所は確保されていますか?

散歩と遊び

・散歩や飼い主さんと遊ぶ時間は十分ですか?

・留守番が多くて退屈な思いをしていませんか?

叱られる

室内で自由に遊ばせるときは、いたずらされたら困るものや飲み込んだら危険なものなどは届かないように管理して、犬をなるべく叱らなくてよい環境を作りましょう。

規則的な生活

常同行動を起こす犬は、規則正しい生活を好む傾向があります。食事や散歩を規則的に行い、遊びのルールを決めて生活を送るようにしましょう。

変化が苦手なので、部屋の模様替えもなるべく行わないようにしましょう。

(2)行動修正

犬が飼い主さんの肌を舐め始めたら、相手をするのは止めてください。部屋から出て行き30秒後くらいに戻りましょう。

何度か繰り返すと思いますが、舐めなくなったらご褒美を与えたり一緒に遊んであげたりしましょう。

布製品を舐めているときは、おやつを詰め込むタイプの知育玩具とすり替えましょう。知育玩具は数種類用意して、飽きないように与えるとよいですね。

■異嗜・食糞について(補足)

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質問の中には、常同行動と併せて異嗜(食品以外の様々なものを食べる行動)・食糞という別の異常行動が見られる犬もいました。異嗜は消化管を傷つけたり、腸閉塞を起こしたりすることがあります。

成犬からの食糞は膵臓疾患が原因のことがあります。犬のストレスを減らすことも重要ですが、適切なフードを選ぶことも必要ですので、動物病院で相談してくださいね。

今回のご質問に共通する常同行動は、犬によって様々な原因が考えられます。必要があれば、動物行動学専門獣医師のカウンセリングを受けることをおすすめします。

犬のストレスも飼い主さんのストレスも、減らすことができたらいいですね。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

工亜紀(2002)『コンパニオンアニマルの問題行動とその治療』pp.163-168, 講談社.

入交眞己(2014)『常同障害と痛み』pp183-184, 第35回動物臨床医学会.

【画像】

※ Dora Zett, Irina Kozorog, Prystai, Hanna Bukrieieva, Jiggo_Putter Studio, Sascha Christian / Shutterstock

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