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犬の病気は遺伝するの?知っておきたい「遺伝」と「病気」の関係性

吉本翔

獣医師
吉本翔

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犬の病気は遺伝するの?知っておきたい「遺伝」と「病気」の関係性

日常でも耳にする機会が多い遺伝という言葉。みなさんは、遺伝についてどのようなことを知っていますか? 親子や兄弟の顔が似ているのは、遺伝が関係しているからですよね。スポーツ選手の子は運動神経が良いことが多いのも遺伝が関係しているからでしょう。

一方、遺伝は病気とも関連しており、特に犬において遺伝と病気の関連性はとても重要です。そこで今回は、獣医師の吉本翔先生に、犬の遺伝と病気について解説いただきました!

■遺伝ってなに?

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出典:https://www.shutterstock.com/

遺伝とは、親から子へと形質(形態と性質のこと)が伝わる現象のことです。親から子へと伝わる遺伝情報はDNAに記録されています。子は、母親と父親からそれぞれDNAを受け継ぐため、母親にも父親にも似た形質を持ちます。

そのため、両親の身長が高い場合には、その子どもも身長が高いことが多く、両親の運動神経が良い場合には、その子どもも運動神経がよいことが多いです。

■犬種の多様性について

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犬という動物種の特徴のひとつに、犬種(品種)の多様性が挙げられます。人間も様々な人種があり、人種間で多少の違いはあるものの、犬種間の違いほどではないでしょう。チワワ、柴犬、パグ、パピヨン、コーギー、ゴールデンレトリーバー、シベリアンハスキー……同じ犬とは言っても、見た目や性質はバラバラですよね。犬の祖先と言われているオオカミと、見た目がまったく異なる犬種も多いです。

■なぜ犬種は生まれたの?遺伝との関係とは

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それでは、このような犬種の多様性が生まれたのはなぜでしょうか? その理由は、遺伝が大きく関係しています。はるか昔、人間が犬と共同に生活をするようになりました。人間は自分たちが望む形質をもった犬を得るために、人為的に犬の交配を始めました。例えば、力強い犬、足が速い犬、寒さに強い犬、耳が長い犬、鼻が長い犬など。求める形質は能力であったり見た目であったり様々です。

また、人為的な理由だけでなく、生活する環境に適応した形質を持った犬が生き残りやすいです。寒い地域であれば、毛が密に生えている犬(シベリアンハスキーなど)の方が寒さに強いですし、暑い地域であれば、暑さに強い形質を持つことが多いです。犬と体温の関係性についてはは“犬って寒くないの?知っておきたい「体温メカニズム」と寒さ対策について”にて解説しているので、ぜひ読んでみてくださいね。

このように、現存の犬種は、人間の需要や生活環境によって生み出されており、これには遺伝が大きく関係しているのです。

■病気と遺伝について

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病気の原因は、大きく分けて“遺伝要因”と“環境要因”の2つがあります。遺伝要因は、両親から受け継いだ遺伝子のことで、環境要因には食事、汚染物質への暴露、細菌やウイルス感染などが含まれます。

ほとんどの病気は、多かれ少なかれ遺伝要因と環境要因の両方が関係します。しかし、病気の中には遺伝要因が強く関係しているものも多々あります。そのため、人の病院で家族の病歴を聞かれることがあるのです。

■病気と好発犬種?

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犬は、人間以上に遺伝と病気の関係性が強いと考えられます。犬の病気は、基本的に“好発犬種”と呼ばれるものがあります。例えば、慢性僧帽弁閉鎖不全症は小型犬に多く、胃拡張捻転症候群は胸が深い犬(ボルゾイなど)に多いとされています(※1)。逆に、チワワに多い病気トイプードルに多い病気柴犬に多い病気、なども挙げることができます。

このように、好発犬種の病気があるのは、犬種と遺伝および遺伝と病気が深く関係しているからだと思います。

■なぜ犬種によって好発疾患があるの?

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それではなぜ犬種によって好発する犬種があるのでしょうか? その理由として、“近親交配”が多いことが挙げられます。犬は、人と違って近親交配がしばしば行われています。

近親交配は、病気の観点からするとよくないとされます。どの個体も何らかの遺伝子異常を持っているのですが、両親のどちらか由来の遺伝子のみが異常で、もう片方が正常であれば基本的に病気になりにくいとされます。

しかし、近親交配をすると、両親のどちらもが同じ遺伝子異常を持っている可能性が高まり、その子どもは正常な遺伝子がないため、病気を発症してしまうのです。犬種が生み出される過程では近親交配が繰り返されることが多いため、犬種ごとに好発疾患があるのだと考えられます。

■飼い主の心構え

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飼い主さんができることは、犬種の好発疾患をしっかり把握しておくことだと思います。また、その疾患になった場合にどのような臨床徴候が出るのかあらかじめ理解しておくと、病気の早期発見に繋がると思います。

さらに言えば、環境要因を下げるように努めることができればベストでしょう。例えば、小型犬(ポメラニアン、チワワなど)に多い気管虚脱は、肥満や首輪の利用が病態を悪化させると言われています(※1)。適切な体重管理を心がけ、ハーネスを利用するとよいでしょう。

すべての好発疾患に対して環境要因を下げることは難しいかもしれませんが、あらかじめ対策しておけば、病気の予防に繋がるかもしれません。

今回は、遺伝の基本から、遺伝と犬種の関係、病気と好発犬種など盛りだくさんの内容をご紹介しました。遺伝は犬種と深く関わっていること、犬種ごとに好発疾患が存在することを理解できたのではないでしょうか。

愛犬の病気の早期発見のためにも、一緒に暮らしている愛犬の犬種に関する好発疾患を、頭の片隅に入れておいてくださいね。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 辻本元ほか(2012)『獣医内科学』文永堂出版.

【画像】

※ Vladimir Gjorgiev, ValSN, Grigorita Ko, Vivienstock, otsphoto, Sundays Photography, Koy_Hipster / Shutterstock

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