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【獣医師執筆】うちの猫、ちょっと食べすぎ?猫の「過食」に隠された秘密とは

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【獣医師執筆】うちの猫、ちょっと食べすぎ?猫の「過食」に隠された秘密とは

愛猫の“食生活”を気にしていますか? 目を離していると、ある日「すごい太っていた…!」なんてことがあるかもしれません。

そこで今回は獣医師の濱田真由美先生に、どうして過食が起こるのか? また食べすぎによって引き起こされる病気や症状などについて、分かりやすく解説していただきました!

■肥満が問題になっている?

うちの猫、ちょっと食べすぎ?猫の「過食」に隠された秘密とは
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「うちの猫が食べすぎでなかなか痩せない!」「ダイエットができない……」などのお悩みはありませんか? 筆者はそういったご相談をよく伺っています。

それもそのはず、米国では10年前から肥満が増えていて問題になっているのですが、実は日本の猫でも、調べたら56%が太りすぎもしくは肥満だったということが報告されたのです(※1・2)。つまり、約2頭に1頭の割合で太りすぎということです。

■心の病かも?猫に過食症ってあるの?

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猫の肥満の原因の殆どは、食べすぎ(過食)や運動不足です。過食というのは食べ物を食べすぎることを意味します。

もともとはストレスなどによる心の病気から食べ過ぎることを止められない人の症状が“過食症”と呼ばれていますね。

猫の場合、そういった心の病気から過食症になるということに関してはあまり知られていないのですが、2012年に初めてシャム猫で報告されていて、ストレスの要因を取り除くことで症状が落ち着いたとされています(※3)。

また筆者は、動物病院で処置を受けるときに怒り始めた猫が処置室からケージに戻されたあとに、「ウー、ウー」とうなって文句をいいながらやけ食いのように速いスピードでフードを食べるシーンを何度か見ています。

そのため、まだ確実な証明はされていなくても、イライラした気持ちを発散させるために異常に食べるということは猫に見られても不思議ではありません。

その他、家の中だけで過ごしている猫が退屈して食べすぎることがあるというのは、獣医師の間ではよく知られています。ストレスを減らすように気を配ることも大切ですね。

それから、食べすぎると肥満につながったり、消化が不十分になって吐いたりすることもあります。はやく食べすぎている場合は、1回の量を控えめにするなど工夫して調節してあげましょう。

■病気やお薬の影響もある?

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一般的に、以下の病気が過食に関わっていると言われています。病気の名前がちょっと難しいかもしれませんが、難しい言葉は下の方に簡単に説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。

・甲状腺機能亢進症

・副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

・糖尿病の初期

・膵外分泌不全

・膵臓の腫瘍

・脳腫瘍

・認知症

・心の病気など

甲状腺機能亢進症や副腎皮質機能亢進症というのはホルモンの病気で、膵外分泌不全というのは栄養の吸収不良を起こす膵臓の病気です。

高齢猫に多いのは甲状腺機能亢進症で、この病気になると代謝が異常に活発になるので食べても身体が満たされず、食欲が異常に出る傾向にあります。特によく食べるけれど太らないとか、逆に体重が減ってくるという場合は要注意です。

その他、糖尿病の初期の場合、食べても糖分をうまく吸収できなくなるために食欲が増えることもあります。

糖尿病の場合は、水をよく飲んでオシッコもたくさんする等といった他の症状も出てくるので注意して観察してあげましょう。認知症になると時間の感覚がなくなるので、食べたことを忘れてしまって再びすぐに食べ物を要求してくることがあります。

また、ステロイドや発作を抑えるお薬などでも食欲が異常に出ることがありますので、もしも薬を飲んでいてそのような症状があったら、かかりつけの先生に相談してみてくださいね。

■食べすぎや肥満を防ぐ簡単なコツ

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病気の場合は別になりますが、健康な猫で異常に食べすぎてしまっている場合、まずはカロリーの少ないフードに切り替えることをおすすめします。

一般的にドライフードは高カロリーでウェットフードと比較するとウェットフードの約3倍のカロリーがあります。そのため、ドライフードからウェットフードに切り替えるだけでも摂取カロリーが抑えられます。

そのほか、遊びの時間を増やしてあげるようにしましょう。遊びは良い運動になってエネルギーを消費させるだけでなく、ストレス発散や認知症予防にもつながります。

猫の過食は、飼い主さんの工夫次第で十分にコントロールができます。病気の心配がある場合は、かかりつけの獣医さんに相談してみてください。

ぜひ参考にしていただき、愛猫との毎日の生活をより楽しんでくださいね!

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 Ward E, German AJ, Churchill JA. (2018). The global pet obesity initiative position statement. Association for pet obesity prevention.

※2 Mori N, Iwasaki E et al. (2016). Overall prevalence of feline overweight/obesity in Japan as determined from a cross-sectional sample pool of healthy veterinary clinic-visiting cats in Japan. Turk J Vet Anim Sci, 40(3): 304-312.

※3 Mongillo P, Adamelli S, et al. (2012). Successful treatment of abnormal feeding behavior in a cat. J Vet Behav, 7(6): 390-393.

【画像】

※ Eric Isselee, Susan Schmitz, medveda, Tatiana Chekryzhova, gornostay / Shutterstock

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