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【獣医師執筆】猫にとっても「湿気」は天敵!? ニオイや衛生面で気をつけるべきこと

西原克明

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【獣医師執筆】猫にとっても「湿気」は天敵!? ニオイや衛生面で気をつけるべきこと

人にとっては、じめじめとした湿気は不快なもの……。実はねこちゃんにとっても、湿気が健康上の負担になることもあるそう!

そこで今回は、ねこちゃんに与える湿気の影響とその対策について、獣医師の西原克明先生に解説いただきました!

■猫にとって適切な湿度は分かっていない?

猫にとっても「湿気」は天敵!? ニオイや衛生面で気をつけるべきこと
出典:https://www.shutterstock.com/

ねこちゃんにとって、高温多湿は様々な病気を悪化させるリスクがありますが、実は、適切な温度や湿度って具体的な目安はありません。

もちろん、多くの飼育書や猫のウェブサイトでは、温度と湿度の目安が記載されていますが、ねこちゃんの健康状態によっても変わりますし、温度や湿度の変化も重要になります。

つまり、非常に寒い場所から突然暖かい場所に移動すると、中には体調を崩すねこちゃんもいますし、その逆のケースや、湿度の変化でも同じようにねこちゃんの体調に影響を与えることがあります。

筆者個人の経験では、適切な温度や湿度は、それまで過ごしていた空間環境や猫の健康状態によって変化することがありますので、絶対的な数値にはこだわらないようにすることをおすすめしています。

■湿気がある時のニオイは皮膚病のサイン!?

ねこちゃんの中には、湿気が強くなると体臭がきつくなる子がいます。このような状況で体臭が強くなるのは、ほとんどが細菌の増殖によるものだと思われます。

ねこちゃんに限らず、動物の皮膚には“常在細菌”という細菌が存在しています。これは病気を引き起こすのではなく、逆に皮膚を守る役割のある、ねこちゃんにとって非常に大切な細菌です。

しかし、なんらかの原因でねこちゃんの皮膚のコンディションが悪い場合は、その常在細菌が異常繁殖してしまい、その結果、体臭が強くなることがあります。

細菌によるニオイについては、最近では“汗の臭い”や“洗濯物の部屋干し臭”などがテレビのCMがたくさん放映されていますので、なんとなくイメージできるかと思います。

猫にとっても「湿気」は天敵!? ニオイや衛生面で気をつけるべきこと
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湿気が多いときに体臭が強くなるねこちゃんは、体のどこかを痒がっていないか、あるいは脱毛や発疹などの皮膚病がないか、チェックしてあげてください。

また、シャンプーすることでニオイが低減しますが、皮膚病の場合は根本的な解決にならないこともありますし、中にはシャンプーすることで皮膚病が悪化することがありますので、注意してください。

ちなみに、湿気が強くなると体臭だけでなく口臭が強くなった事例もあります。結果として、ねこちゃんのニオイが強くなると言えますね。

■熱湿度が高いときも要注意!

猫にとっても「湿気」は天敵!? ニオイや衛生面で気をつけるべきこと
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ねこちゃんは人間と違って、汗はほとんどかけません。汗というのは、体から老廃物を排泄するだけでなく、体温を下げる役割もあります。そのため、汗をほとんどかかないねこちゃんは、体温調節が人間よりも苦手な動物と考えられています。

そんなねこちゃんですが、汗の代わりに体温調節を行なっているのが“呼吸”です。息を吐くときに、体の熱を一緒に出して息を吸うことで、体温より低い温度の空気を体に取り入れ、体温調節をしています。

しかし、湿気が多い環境では空気中の水分が多いため、呼吸による熱交換が難しくなります。そのため、湿気が多いと体温が下がりづらくなり、熱中症を発症しやすくなると思われます。

また、体温が上がると心臓などの循環器や、気管や肺などの呼吸器に大きな負担がかかるため、循環器や呼吸器に持病を持つねこちゃんでは、熱中症で重症化しやすいと言えます。

熱中症は、状況によって様々な症状を示すため、湿度や温度が高いと感じたときに、ねこちゃんの体調に少しでも異変が見られるようであれば、できるだけ早い段階で動物病院を受診することをおすすめします。

■猫に快適な湿度は人間が快適な湿度でOK

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では、ねこちゃんにとって負担のかからない湿度はどれくらいなのでしょうか? 前述のとおり、具体的な数値となると、ねこちゃんの状況によっては逆に負担をかける可能性があります。したがって、筆者個人の経験では“飼い主さんが快適に過ごせる湿度”が一番よいのではないかと考えています。

例えば、暑い日に我慢できる程度ではなく、あくまで“快適に”過ごせる湿度です。ちょっとじめじめするなと感じたときには、エアコンや風通しを調整するなどしてあげてください。ただし、窓を開けるときは猫の脱走には十分注意してくださいね。

また、エアコンなどで湿度を下げると温度も下がることが多いため、寒く感じることがあります。もちろん、その都度調整していただくのが一番ですが、これも前述のとおり、ねこちゃんは体温を下げるのがあまりうまくありません。

そのため、特に梅雨から秋にかけての季節は、じめじめして暑い環境よりは、多少ひんやりしている環境の方が、ねこちゃんにとってはよいかもしれません。

猫にとっても「湿気」は天敵!? ニオイや衛生面で気をつけるべきこと
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ねこちゃんは湿気が多いときに体調を崩すことがあります。皮膚がデリケートなねこちゃんの場合、細菌感染が見られることがあり、その結果体臭が強くなることがあります。

また、ねこちゃんは呼吸によって体温調節をするため、湿気が強いときには体温調節がうまくできず、熱中症が見られやすくなります。

ねこちゃんが快適に過ごせるように、湿気が多いときには飼い主さんも快適に過ごせる程度に、湿度や温度を調整してあげてくださいね。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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