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食事管理と運動を心がけよう!犬の「糖尿病」に関する基礎知識

吉本翔

獣医師
吉本翔

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食事管理と運動を心がけよう!犬の「糖尿病」に関する基礎知識

人の病気としても耳にする機会の多い糖尿病。人だけでなく、犬や猫などの伴侶動物でも糖尿病はあると言われています。人の場合は一生にわたる投薬の必要性や、様々な合併症について認知されていますが、犬の場合はどうなのでしょうか?

そこで今回は、犬の糖尿病の基本と、飼い主さんが気をつけるべきことについて、獣医師の吉本翔先生に解説いただきました!

■糖の役割と血糖値の調節について

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出典:https://www.shutterstock.com/

三大栄養素は、糖質、タンパク質、脂質です。私たち動物は、この三大栄養素から身体に必要なエネルギーを生み出すことができます。中でも、糖質は全身の細胞のエネルギーとして利用しており、脳の神経細胞や血液中の赤血球は、糖質由来のグルコースを主要なエネルギー源としています。

糖質が含まれる食べ物を摂取すると、糖質は消化管で分解されて最終的にグルコースとなります。グルコースが消化管で吸収されたあと、グルコースは血液中へと移行するため、血液中のグルコース濃度(これを血糖値と言います)は上昇します。

食後一時的に血糖値が上昇しますが、血糖値が高いままだと身体の様々な臓器に悪影響を及ぼしてしまいます。そこで重要な働きをするのがインスリンと呼ばれる物質で、インスリンは血糖値を下げる役割を持ちます。

逆に言えば、インスリンがしっかりと作用していない場合、血糖値を下げることができなくなります。

■糖尿病とは?どうやって診断する?(※1)

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糖尿病はインスリンが不足する、あるいはインスリンが正常に働かないことにより、持続的に血糖値が高値(高血糖)を示す病気です。糖尿病の犬では尿中に糖が含まれており、これが糖尿病と呼ばれる所以でもあります(健常犬では尿中に糖は含まれていません)。

糖尿病は持続的な高血糖により、代謝異常をもたらします。臨床徴候は代謝異常の程度により様々で、ほとんど臨床徴候がみられないものから、重度の臨床徴候を示すこともあります(※1)。

糖尿病は、(1)数日にわたり高血糖であること、(2)数日にわたり尿中に糖が含まれること、(3)糖尿病の臨床徴候が確認されること、の3点を満たした場合に診断されます(※1)。血液検査や尿検査などの検査で診断できるため、比較的容易に診断される病気であると言えます。

■糖尿病の臨床徴候(※1・2)

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持続的な高血糖は、様々な異常を身体にもたらします。典型的な臨床徴候は、多飲多尿(たくさん水を飲み、おしっこをする状態)、過食や体重減少などです。

代謝異常は、皮膚や被毛にも影響を及ぼし、毛が抜ける、皮膚が乾燥するなどといった臨床徴候が見られることもあります。合併症として、白内障(目が白くなる病気)が発症することもしばしばあります。

糖尿病による代謝異常が重度となった場合、糖尿病性ケトアシドーシスと呼ばれる状態になることがあります。糖尿病性ケトアシドーシスに陥ると、食欲がない、元気がない、衰弱する、嘔吐や下痢などといった重篤な臨床徴候が見られます。

■糖尿病の治療法(※1・2)

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糖尿病の治療は、インスリンの投与、食事管理、運動管理によって行われます。糖尿病は持続的な高血糖が問題となるので、血糖値を下げるためにインスリンを投与します。

食事管理については、糖尿病用の療法食を与えることが推奨されています。糖尿病用の療法食は、食物繊維が多く含まれており食後に急激に血糖が上昇するのを防ぎます。運動管理も重要であり、毎日適度に運動させることが推奨されています。

■糖尿病のリスク因子と飼い主ができること(※2)

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糖尿病は、雄犬よりも雌犬の方がなりやすいと報告されています。糖尿病のリスクが高い犬種には、ミニチュアシュナウザー、マルチーズ、トイプードルなどが挙げられ、逆に低い犬種にはジャーマンシェパード、コリー、シェットランドシープドッグなどが報告されています。

犬では明確に証明されてはいないものの、肥満が糖尿病のリスクを上げることが示唆されています(※3)。ある論文では、市販フード以外の食べ物(手作り食や人間の食事の残り物など)を与えている犬では糖尿病の発症リスクが高いと報告されています(※3)。

おそらく、市販フード以外の食べ物を与えている場合には、カロリー計算が適切に行われていないことが多いからだと推測されます。

飼い主さんができることとしては、糖尿病のリスク因子となり得る肥満を防ぐため、適切な食事管理と運動を心がけることだと思います。糖尿病になりやすい犬種を飼っている場合には、糖尿病の臨床徴候(多飲多尿、過食、体重減少)をしっかりと頭に入れておき、早期発見に努めるように心がけましょう。

今回は、糖質の話から始まり、糖尿病の基本的な内容からリスク因子や飼い主ができることなどについてご紹介しました。糖尿病の臨床徴候は、しっかりと観察していれば、比較定発見しやすいと思います。もし異変があれば、すぐに動物病院に行くようにしてくださいね。

また、糖尿病の発症リスクを下げるためにも、日々の健康管理(食事や運動)を心がけましょう。

※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。

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【参考】

※1 辻本元ほか(2012)『獣医内科学』文永堂出版.

※2 Richard W. Nelson DVM et al. (2013). SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE 5th edition. Mosby, 5.

※3 Alan Gomes Poppl et al. (2017). Canine diabetes mellitus risk factors: A matched case-control study.

【画像】

※ Nehris, Jaromir Chalabala, Syda Productions, Elena Sherengovskaya, Parilov, LDWYTN / Shutterstock

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