夏になると、愛犬と一緒に海辺でバーベキューや釣りをしたりする機会が増えますよね。私たち人間は新鮮な海の幸のごちそうが楽しみ!
しかし、犬にとっては要注意です。そこで今回は、犬が魚介類を食べることで発症するかもしれない病気と、注意することについて、獣医師の船田治子先生に解説いただきました!
■発症の可能性がある病気

(1)ビタミンB1(チアミン)欠乏症
<原因>
生の魚介類(魚、イカ、タコ、エビ、カニ)はビタミンB1を分解するチアミナーゼという酵素をもっています。しかし、熱に弱い酵素なので、加熱すれば活性は失われます。
<症状>
連日与えることで、ふらつきなどの運動機能障害の他、けいれん発作などの神経症状を伴うこともあります。
(2)食品性胃腸障害
<原因>
イカ、タコなどは消化が悪く、丸のみをする習性がある犬にとっては消化不良をおこしやすいと考えられます。また、タイなどの硬い骨は消化管を傷つけることがあります。
<症状>
下痢や嘔吐がみられます。血便を伴うこともあります。
(3)食中毒
<原因1:細菌性>
沿岸の海水域で繁殖した細菌”腸炎ビブリオ”が付着した魚や貝を食べることにより、発症します。”腸炎ビブリオ”は海水温度が17℃になると増殖するといわれ、真水、熱、酸に弱い細菌です。
<症状>
激しい消化器症状、発熱
<原因2:ウイルス性>
二枚貝(カキ、アサリ、ハマグリ、サザエ、シジミ)、特にカキに蓄積するといわれる”ノロウィルス”はよく知られていますね。
<症状>
発熱、消化器症状
<原因3:寄生虫性>
多くの魚介類(スケソウダラ、サクラマス、マダラニシン、サバ、カツオ、イワシ、アジ、イカなど)に線虫”アニサキス”の幼虫が寄生していることがあります。その魚介類を生食することで、アニサキス症を起こします。
<症状>
幼虫が胃壁や腸壁に穿入することで、腹部の激痛を起こします。
<原因4: 魚介自然毒>
有毒プランクトンに汚染された海域のアサリやカキ、ホタテガイ、ムラサキガイ、アカザラガイなどの二枚貝には、毒素が含まれていることがありますが、食品衛生法に基づいて、都道府県により出荷が管理されています。ツブ貝やバイ貝などの巻貝も毒素を含んでいることがあります。
フグの肝、卵巣、皮などに含まれている”テトロドトキシン”という毒素が食中毒をおこすことはよく知られていますね。非常に危険なため、フグの調理には免許が必要です。
<症状>
しびれ、麻痺、消化器症状など
<原因5:アレルギー様食中毒>
「サバを食べたら蕁麻疹になった」と聞いたことがありませんか?サバ、マグロ、イワシなどの赤身の魚に含まれるヒスチジンが細菌によって”ヒスタミン”に変化することで、アレルギー様の症状があらわれます。“ヒスタミン”は加熱しても分解しません。
<症状>
蕁麻疹、発熱
■生魚を犬に与えるのは避けよう

・エビ、カニ、イカ、タコ、貝類は与えないほうがよいでしょう。
・新鮮な魚類を選びましょう。鮮度を保つためには保存時間、保存温度も重要です。
・魚類はすべて真水でよく洗い、十分に加熱したものを与えましょう。
・個人的に捕獲した魚介類で、種類、安全性がわからないものは、与えないようにしましょう。
魚類は、犬の食事としてよい蛋白源となります。ドライフードの原材料にも使われています。しかし、特に生食には危険がたくさん含まれています。
犬と一緒に海辺に遊びに行ったり宿泊したりしたときは、開放的な気分になりますよね。犬にも特別なものを食べさせたい気持ちになるかもしれませんが、安全を優先してください。家族と犬が無事に帰宅することが、何よりの思い出づくりになると思います。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
※ 植木幸英・野村秀一編(2017)『食べ物と健康, 食品と衛生 食品衛生学 第4版』講談社.
※ 左向敏紀・大島誠之助(2014)「禁忌食(その4)―魚介類(チアミナーゼ)」,『ペット栄養学会誌』17(1), pp.44-45, 日本ペット栄養学会.
【画像】
※ otsphoto, Monica Click, akepong srichaichana / Shutterstock
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