黒、白、しま模様にぶち……ねこちゃんの毛の色や柄は本当にさまざまですが、どうやって色や柄が決まるのでしょうか? 実は、ほとんどが遺伝によって決められています。今回は、ねこちゃんの毛の色や柄の不思議について考えてみましょう。
■猫の祖先は黒×茶のしま模様!
現在、ペットとして飼われている「イエネコ」の祖先は、中近東・アフリカに生息する野生のリビアヤマネコだと言われています。野生のリビアヤマネコの毛色は、自然の中でもあまり目立たない黒と茶色のしま模様でした。
しかし、人に飼い慣らされていく過程で、リビアヤマネコの黒と茶色のしま模様の遺伝子が、突然変異を起こしたり、人による計画的な繁殖がなされたりした結果、さまざまな色や柄を持ったねこちゃんが生まれていったと言われています。
上の写真を見てお気づきかと思いますが、リビアヤマネコは、キジトラのねこちゃんにとてもよく似ています。このため、現在のキジトラのねこちゃんは、もっとも野生のリビアヤマネコに近い毛柄だと言われているそう。この観点からは、キジトラのねこちゃんは、すべてのねこちゃんの毛柄の基本と言えるのではないでしょうか。
■代表的な猫の毛の色と柄
遺伝子の組み合わせによって、ねこちゃんの毛の色や柄にはさまざまな種類がありますが、ここでは代表的な毛の色と柄のパターンについて紹介します。
・タビー(トラ柄)
背骨に沿って左右に細いしま模様が入っています。ねこちゃんの祖先であるリビアヤマネコと同じ模様で、日本にいるねこちゃんの中でも多く見かけます。
タビーには、キジトラ柄(茶色のベースに黒のしま模様)、茶トラ柄(茶のベースに濃い茶のしま模様)、サバトラ柄(シルバーのベースに黒のしま模様)の3種類があります。
・ソリッド(単色)
模様がなく、毛色も1色のみです。色の種類は、代表的なブラックやホワイトのほか、チョコレート、シナモン、レッド、ブルー(グレー)、ライラック、フォーン、クリームの9色があります。
・パーティーカラー
黒、白、茶の3色のうち2~3の毛色の組み合わせに加え、濃いまたは薄いパターンで組み合わされています。組み合わせのパターンはいくつかありますが、サビ柄(黒と茶のミックス)、三毛柄(黒、白、茶の組み合わせ)、黒×白柄(主に背中側が黒で腹側が白)などが代表的なパターンです。
・ポインテッド
足先や耳、鼻、尻尾の先など、末端部分の毛色だけが濃くなっています。ポインテッドのねこちゃんの多くは、誕生時は全身が真っ白で、成長と共に末端部分の毛が濃くなっていくのが特徴です。一説によると、体が冷えやすい末端部分の色を濃くすることで、冷えを防止する効果があるのでは、と言われています。
■毛の色は9種類の遺伝子の組み合わせで決まる
ねこちゃんの毛の色や柄を決める遺伝子は、以下の9種類があります。
(1)W・・・ホワイト(白)
(2)O・・・オレンジ(茶)
(3)A・・・アグーチ(1本の毛にしまが入る)
(4)B・・・ブラック(黒)
(5)C・・・カラーポイント(顔や体の先の方に色が出る)
(6)T・・・タビー(しま)
(7)I・・・インヒビター(シルバーが出る)
(8)D・・・ダイリュート(色を薄くする)
(9)S・・・スポッティング(体の一部を白くする)
9種類ある遺伝子には、それぞれ優性(大文字で表す)と劣性(小文字で表す)の2種類あり、これらが組み合わさり、どの遺伝子が強く出るかで、計16通りの毛の色と柄が決まります。
たとえば、優性のW遺伝子があると体全体が白一色になりますが、劣性のww遺伝子だと他の毛色になります。また、しま模様を発現させるA遺伝子は1本の毛の先端と根本が黒で中間が褐色になりますが、劣性のa遺伝子では、しまが抑えられ、単色になります。
茶(オレンジ)色に関するO遺伝子は少し複雑で、遺伝子型がOOの場合は、A遺伝子の発現を抑えて茶(オレンジ)色となり、ooの場合はA遺伝子が発現し、Ooの組合せの場合のみ、茶色と黒色のミックスとなるのです。
■三毛猫のオスはめずらしい?
三毛猫は、日本では幸運を招くと古くから信じられていて、特にオスの三毛猫は希少であることから珍重されていたそうです。では、なぜオスの三毛猫は希少なのでしょうか?
三毛猫は、茶、黒(またはキジトラ)、白の3色の柄が出ているねこちゃんです。
遺伝子型としては、ww(他の毛色が発現)、SSまたはSs(白斑が入る)、Oo(茶色を発現)の遺伝子を持つ必要があります。黒と白を決定している遺伝子は常染色体上というところに存在しますが、茶(オレンジ)を決定するO遺伝子だけは性染色体のX染色体上に存在しています。性染色体はメスの場合はXXですが、オスはXYとなるため、O遺伝子を一つしか持つことができず、「O」の茶色、もしくは「o」の黒色しか生まれないことになります。
したがって、正常なオスであれば三毛猫が生まれることはないのですが、ごくまれにX染色体が一つ増えて「XXY」となっている「クラインフェルター症候群」と言われる状態や、性染色体が「XX」と「XY」の両方を持っているといった染色体異常によってオスの三毛猫が生まれることがあります。どのくらいの割合で出現するかは、明確な資料はありませんが、3,000匹に1匹という報告や、クラインフェルター症候群の確率である3万匹に1匹などと言われています。
■猫の毛の色の法則
猫の毛の色は、「背中の上からソースをたらしたように色がついていく」という法則があるようです。
たとえば、黒×白柄のねこちゃんでは、黒いブチ(斑点)やマーブルのような模様が出やすいのは背中や脇腹、頭などで、お腹の中心は白くなるといいます。
ちなみに、筆者の愛猫(下の写真)も黒×白柄なのですが、口元にソースが一滴垂れてしまったパターンです(笑)。
少し難しい内容だったかもしれませんが、いかがでしたか?
毛の色や柄によって性格の特徴が異なるとも言われています。寒い地域、暑い地域、敵が多い地域、のんびりした地域……各地で育ったねこちゃんの遺伝子が受け継がれていくので、毛の色や柄によって、性格や行動の傾向に違いが生まれてくるようです。
そんなことを考えながら、ねこちゃんを観察してみるのも楽しいかもしれませんね!
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【参考】
※ 大石孝雄(2018)『トラねこのトリセツ』東京書籍
【画像】
※ Henrik Rosvall,EcoPrint,Susan Schmitz,Cat'chy Images,Eric Isselee,Jagodka,dien,SERMSAK PHUTRAKSA / Shutterstock
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