わんちゃんの前を横切ったときに突然足にしがみつかれたり、飼っているわんちゃんがクッションやぬいぐるみの上に立っている様子を見た経験はありませんか?
わんちゃんのマウンティングというのは、上記のように何かの上に乗りかかり前肢で抑えながら腰を振る仕草のことを言います。人の足が対象になることもあれば、他のわんちゃんや大好きなおもちゃなどに対して行われる場合もあります。
今回は、わんちゃんがマウンティングする原因や対処法としつけについて、獣医師である筆者がお伝えしていきます。
目次
■マウンティングするのは上に立ちたいから?
昔よく考えられていた理由として、「マウンティングしようとするのは、相手より優位に立とうとしているため」という考え方がありますが、最近は必ずしも主従関係のせいではないと言われています。
それよりもマウンティングというのは、多くは退屈や興奮、ストレス、不安、性的な欲求を満たすため、飼い主さんから注目を得るためなど、さまざまな理由から行われていることが分かっていて、程度が極端でなければわんちゃんの正常な行動として研究されているのです(※1)。
また、マウンティングはオスだけでなくメスで見られることもあり、必ずしも性的な欲求が関係しているとは限らないと考えられています。理由は本当にさまざまなのです。
■マウンティングを抑える3つの方法
さまざまな方法がありますが、今回は大きく分けて3つお伝えしたいと思います。
(1)可能であれば、去勢手術を行う
去勢手術を行うことで、マウンティング行動を減らせるという報告があります。しかし、性的な欲求と関係していない場合もあるため、去勢手術しても治まらないことはあります(※2・3)。
(2)刺激になるものを見せないようにする
マウンティングは、興奮したときにその気持ちを緩和するような役割も持っていると言われています。何かしらの理由があって行われている行動ですが、不安定な気持ちを改善しようと思ったときに、その対象物が目の前にあると簡単にマウンティングが引き起こされるようになる可能性があります。
繰り返すことで習慣になってしまいますので、マウンティングしようとしていたら、すぐに止めさせるようにし、刺激となるものを見せないようにしたほうが治まりやすくなります。
(3)しつけを行う
羞恥心を持たないわんちゃんにとってマウンティングというのは当たり前の行動で、それが極端にならない限りわんちゃん自身にとっては問題になりません。ただし、私たち人にとってマウンティングというのは見ていて不快に感じられる行動になりますし、その行動がエスカレートすると陰茎を傷つけるような健康への問題が見られるようになる場合もあります。
そのため、しつけによって行動を変えてもらうというのも1つの方法です。
■成犬でもしつけを行うのは遅くない?
「しつけは子犬のときに行うべき」という考えがあります。確かに、子犬の「社会化期」と呼ばれる3~12週齢ごろが最も好奇心が旺盛で、新しいものに対して興味を持ちやすいため、一般的にはしつけしやすいと言われているのは本当です(※4)。
しかし、実際にはわんちゃんが何かを学ぶというのは年齢関係なく日ごろから行っていることなので、子犬でなければ全くしつけができないかというと、そうではありません。
■マウンティングを抑えるしつけのポイント
しつけにはさまざまな方法がありますが、まず考えなければならないのは、飼い主さんにとってだけでなくわんちゃんにとってもできるだけ不快にならないような解決策を探すということ。
たとえば、マウンティングをしたときに叱ったり叩いたりすれば、その行動は止めるようになると思います。しかし、叱られるということはわんちゃんにとって不快な経験になりますので、それが飼い主さんに対する不信感に繋がったりトラウマになったりする可能性は否定できません。
筆者の経験になりますが、わんちゃんに不快感を与えるしつけを行っていると、わんちゃんにとってはストレスが余計に溜まり、別の問題行動を引き起こす場合があるのを感じています。
■なぜマウンティングをするのかを考えてあげる
行動する背景には必ず理由があり、マウンティングをする理由の1つとして長時間の留守番によるストレスもあると考えられています。また、お散歩や遊びの時間が短かったりすることも、1つの要因になり得ます。
おもちゃやクッションなどマウンティングの対象となるような何かを取り外す場合は、必ず心を満たすような別の何かを与えるようにしましょう。たとえば、必ずしも物でなければならないということではなく、お散歩や褒め言葉だったり、一緒に楽しく遊ぶことで欲求不満を解消させることもできます。
マウンティングを行っている理由はわんちゃんによってさまざまですから、まずは理由について考えてみて、そこから解決できるようなしつけの方法を考えてみることをおすすめします。
しつけには1つの正解というものはありませんので、どうしても困ってしまったときには問題が深刻化する前にドッグトレーナーさんなどの専門家に相談しましょう。
参考にしていただけたら嬉しいです。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
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【参考】
※1 Common dog behavior issues: Mounting and masturbation. American Society for the Prevention of Cruelty to Animals.
※ Prystai,Spiky and I,Volodymyr Plysiuk,supercat,wallybird,Life morning
/ Shutterstock
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